編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Early worsening of diabetic retinopathy in the Diabetes Control and Complications Trial. Arch Ophthalmol 1998; 116: 874-886. [PubMed]

網膜症の早期悪化は強化インスリン療法群に多く発症し,リスク因子は初期のHbA1c高値と初期6ヵ月以内でのHbA1c改善であるが,その長期予後は良好であるとの結論が出た。しかしここで注意しなければならないのは,DCCTで登録された症例はすべて網膜症がないか単純網膜症までの症例であり,増殖前および増殖網膜症の症例は含まれていない点である。増殖前および増殖網膜症の症例に初めて強化インスリン療法を開始する場合には,しばしば網膜症の急激な悪化を認め,短期間に失明に至る症例がある。そのような症例では血糖値の正常化は急がずに慎重にすべきものと考えられる。具体的なコントロール目標は,HbA1cを0.5%/月程度のペースで下げることが妥当といわれている。しかしHbA1cが10%以上の症例では,そのようなペースでは追いつかないため,現実的には早期にレーザー治療を行い,強化インスリン療法にもっていける状態にすることが勧められる。【梯 彰弘】

●目的 DCCTにおける網膜症の早期悪化の頻度,重要性,リスク因子を調査した。
●デザイン 無作為,多施設。
●試験期間 追跡期間は3~9年。
●対象患者 1441例:糖尿病歴1~5年の網膜症を認めない726例と,糖尿病歴1~15年の非増殖糖尿病網膜症(NPDR)715例。IDDM患者。
●方法 患者を強化インスリン療法群と従来療法群に割り付けた。強化療法とは,正常血糖をめざして自己血糖計測に基づいて1日最低3回のインスリン注射もしくは注入ポンプ治療を行うこと。従来療法は1日1回もしくは2回のインスリン注射治療を行うこと。
網膜症の評価は,ETDRSのプロトコール[下部NOTE参照]に沿ったステレオ眼底写真を6ヵ月ごとに撮影して行った。網膜症の早期悪化の基準は,前述の眼底写真で3段階の悪化,軟性白斑もしくは網膜内毛細血管異常,ETDRSでのclinically important retinopathy(重症NPDR,増殖網膜症,黄斑浮腫)への進行のうち1つでも12ヵ月以内に認めた場合とした。
●結果 強化療法群での早期悪化は13.1%と,従来療法群の7.6%より高頻度であった(p<0.001)。それらの18ヵ月の時点での回復率は強化療法群で51%,従来療法群で55%であった(p=0.39)。18ヵ月からの3段階以上の網膜症の悪化は,早期悪化を示した症例のほうが早期悪化を示さなかった症例より高率であった。最終的な長期予後は,早期悪化を示した強化療法症例のほうが早期悪化を示さなかった従来療法症例より良好であった。早期悪化のリスク因子は初期のHbA1c高値と初期6ヵ月以内でのHbA1c改善であった。徐々に血糖値を下げることで早期悪化を予防できるかについては確証が得られなかった。
●結論 DCCTにおいて強化インスリン療法群の長期予後は,早期悪化のリスクを差し引いても良いものであった。早期悪化を示した症例で重症な視力障害に至ったものはなかったが,今回の結果は,強力なインスリン治療時に網膜症が悪化するとする過去の報告に一致している。特に長期間の血糖コントロール不良や中等度の網膜症を有する症例のインスリン導入時には注意を要する。そのような症例では12ヵ月までは3ヵ月ごとに眼科的検査を行うべきで,特にHbA1cが高い症例で急激に網膜症が進行するようであれば,強力なインスリン治療はレーザー治療が終了するまでは控えたほうがよい。