編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Chew EY, Benson WE, Remaley NA, Lindley AA, Burton TC, Csaky K, Williams GA, Ferris FL 3rd: Results after lens extraction in patients with diabetic retinopathy: early treatment diabetic retinopathy study report number 25. Arch Ophthalmol 1999; 117: 1600-1606. [PubMed]

白内障は糖尿病網膜症患者にはほぼ必発で,視力低下の大きな原因のひとつである。しかも網膜症に対するレーザー治療の妨げともなる。白内障を治療するにこしたことはないが,白内障手術は当然のことながら手術合併症を伴うことがあり,術後炎症は避けて通れず,黄斑浮腫を惹起することもある。過去には網膜症患者には禁忌との報告すらあった。しかし白内障手術の進歩とともに手術合併症や術後炎症などが大幅に改善され,PEA(水晶体超音波乳化吸引術)+IOL(眼内レンズ)のテクニックがほぼ完成された現在ではPDRの症例でも血管新生緑内障を合併していなければ禁忌となることはない。このETDRS 25では残念ながら白内障手術の手技が一定ではなく,おそらく水晶体嚢内摘出,嚢外摘出,PEAなどすべての術式が混合されており,現在の状況とはマッチしない。したがって白内障手術成績は現在ではこのETDRS 25よりはるかに良好であると想像される。しかし血糖コントロールが不良であったり,腎臓機能の低下があったり,未治療の増殖前不幸にして手術合併症が発生した症例では術後炎症が強く出現し,時にフィブリン膜形成より虹彩後癒着から瞳孔ブロック,緑内障にまで至ることがある。やはり糖尿病患者では全身状態の改善,可能な限りレーザー治療による網膜症の沈静化をはかったうえで慎重に白内障手術に臨むべきである。【梯 彰弘】

●目的 ETDRSの症例のなかで,白内障手術と視力予後との相関について検討した。
●デザイン 無作為,多施設。
●試験期間 追跡期間は4~9年。
●対象患者 205例270眼:ETDRSの症例[下部NOTE参照]のうち,白内障手術施行例。
●方法 矯正視力,黄斑浮腫,網膜症の重症度を白内障の術前,術後で調査し,白内障手術に関連する視力低下のリスク因子を評価。白内障手術の及ぼすリスク因子を評価するためにCox比例ハザードモデルが構築された。
●結果 水晶体摘出に至る全身的リスク因子は加齢,女性,ベースラインで蛋白尿が認められることであった。眼科的リスク因子としては,ベースラインでの視力低下と硝子体手術の既往であった。
術後1年で2段階以上の視力改善が認められたものは,早期網膜光凝固群で64.3%,網膜光凝固延期群で59.3%であった。その早期網膜光凝固群では20/40以上の視力が46%,20/100以上の視力が73%,そして5/200以下の視力が8%であった。一方,網膜光凝固延期群では20/40以上の視力が36%,20/100以上の視力が55%,そして5/200以下の視力が17%と,早期網膜光凝固群に比較すると視力予後不良であった。
術前検査で軽度から中等度のNPDRを認めた症例の術後1年での視力は20/40以上が53%,20/100以上が90%,そして5/200以下の視力が1%であった。一方,術前検査で早期のPDRを認めた症例では20/40以上の視力が25%,20/100以上の視力が42%,そして5/200以下の視力が22%と,中等度から重度のNPDRを認めた症例に比較すると視力予後不良であった。術後1年と術後2年の視力に大きな変化は認められなかった。術前の網膜症の進行と視力不良は,術後1年の視力20/100以下の視力に関連していた。白内障手術は網膜症進行のリスク因子(p=0.03)であった。黄斑浮腫の長期的な悪化と白内障手術との相関は認められなかった。
●結論 ETDRSにおける白内障手術の視力予後は,以前の同様な報告よりも良好であった。これはETDRSでは以前の報告で対象になっている患者より網膜光凝固がより強力に施行されたことによるものと思われる。術前検査で重度のNPDR以上の網膜症を認めた症例の術後1年の視力は中等度のNPDRを認めた症例より視力予後は不良であったが,これらの症例の術後1年の視力改善率としては55%であった。白内障術後の視力不良の原因はPDRと黄斑浮腫であった。