編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Kilo C, Miller JP, Williamson JR: The Achilles heel of the University Group Diabetes Program. JAMA 1980; 243: 450-457. [PubMed]

プラセボ群の女性の死亡率が異常に低かったことは注目すべき事実である。しかし,インスリンの有用性を示すために,偏ったprotocol compatible解析をしている。UGDP研究結果の懸念の一部は解決されるだろうが,これによりUGDP研究のすべてが否定されるとは考えにくい。いずれにせよ,血糖降下作用はあくまでsurrogate endpointを見ているに過ぎず,生命予後の改善というtrue endpointを大規模臨床試験により検証する必要性のあることをUGDP研究は教えてくれた。【景山 茂

●目的 インスリンもしくはスルホニル尿素(tolbutamide)による血糖コントロールが,血管合併症を減少させるか否かを検証した。
●デザイン 無作為,二重盲検。
●試験期間 追跡期間は5年以上。1961年2月~1969年10月。
●対象患者 1027例:2型糖尿病。糖尿病の診断1年未満。年齢制限なし。ブドウ糖負荷試験(30g/m²)を行い,前,1,2,3時間値の合計が500mg/dL以上の者。
除外基準:生命の危険のある重篤な疾患,ケトアシドーシスの既往。
●方法 治療法は5群からなる。
・Insulin Variable(IV)群:lente insulinにより正常血糖をめざす。semilente insulin,regular insulinの追加も可。
・Insulin Standard(IS)群:体表面積により投与量を決め,lente insulin 10~16単位。
・tolbutamide群:1g朝食前,0.5g夕食前。
・phenformin群:他の治療群よりも18ヵ月遅れて開始。100mgを分2。
・プラセボ群。
●結果 各群の全死亡率と心血管死亡率はそれぞれ,プラセボ群10.2%,4.9%,tolbutamide群14.7%,12.7%,IS群9.5%,6.2%,IV群8.8%,5.9%であった。このtolbutamide群で有意に死亡率が高いという結果に対する反論が本論文で,次の4点を挙げている。
(1)プラセボ群の心血管死亡は69年までのtolbutamide phaseでは極端に低く,その後74年までのinsulin phase(この間はtolbutamide群は中止され,プラセボ群とinsulin群のみとされた)では増加し,両phaseをあわせると,プラセボと2つのinsulin群の死亡率はほぼ同等であった。
(2)さらにプラセボ群の女性の心血管死亡率は男性の5分の1以下であった。糖尿病女性の心疾患死亡率は男性と同等ないし高いという多くの報告と矛盾する。他の3群ではこのような性比の乖離はなかった。
(3)tolbutamide群の心血管死亡率の増加は血糖コントロールの悪い一部の者に限定されており,空腹時血糖200mg/dL未満では心血管死亡率の増加は認められなかった。
(4)IV群ではインスリン注射のコンプライアンスの悪い者が多く,また,開始時に心血管疾患のリスクの大きな者が多かった。これらを除くとIV群の治療は心血管死に対して有効であった。
●結論 プラセボ群の女性の死亡率が異常に低かったために,他の群の死亡率が高くなった。この結果は一般の糖尿病患者に外挿すべきではない。