編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Whang W, Bigger JT Jr: Diabetes and outcomes of coronary artery bypass graft surgery in patients with severe left ventricular dysfunction: results from The CABG Patch Trial database. The CABG Patch Trial Investigators and Coordinators. J Am Coll Cardiol 2000; 36: 1166-1172. [PubMed]

本研究はCABG施行時に除細動器を植え込む群と植え込まない群の無作為化比較試験の被験者について,糖尿病の有無により解析した結果である。ちなみに,除細動器の有無により死亡率には差がなかった。従来,CABG施行後の死亡率に関しては,糖尿病患者では非糖尿病患者より高いとする報告と,差を認めないとする報告とがあり,一致していない。
左室駆出率0.36未満という心機能の低下した症例では,糖尿病は死亡に関して予測因子にならないことが本研究では示された。しかしながら,血糖コントロール不良例や感染再発例は除外されている点には注意を要する。
景山 茂

●目的 重度の左室機能障害を有する患者において,糖尿病の有無と冠動脈バイパス術(CABG)施行後の長期アウトカムとの相関を検討した。
●デザイン 無作為,多施設。
●試験期間 追跡期間は平均32±16ヵ月。CABG施行期間は1990~1996年。
●対象患者 900例:CABG Patch Trialの登録患者(1990~1996年にCABGを施行された高リスクの冠動脈心疾患患者)。80歳未満。左室駆出率0.36未満。心電図所見の異常。
除外基準:血糖コントロール不良または感染症の再発を伴う糖尿病,持続性の心室頻脈または細動の既往,大動脈弁または僧帽弁手術の同時施行または施行歴,脳血管手術の同時施行,血清クレアチニン値>3mg/dL,緊急CABG,期待余命が2年未満の心血管以外の疾患,追跡不可能例。
●方法 初回入院時(CABG施行時)に,糖尿病およびinsulin投与の有無,術後合併症の発症を調査。退院後は3ヵ月ごとに追跡し,長期アウトカム(死亡および再入院)を調査。
●結果 全対象患者の38%(344例)が糖尿病を有し,うち48%がinsulinを投与されていた。糖尿病症例では,非糖尿病症例(556例)に比較し,高血圧(66.9 vs. 48.0%,p=0.001),末梢血管疾患(18.0 vs. 10.4%,p=0.002),脳卒中の既往(8.7 vs. 4.5%,p=0.015),臨床的心不全(class I/II:32.0 vs. 20.8%,p=0.001;class III/IV:33.4 vs. 18.6%,p=0.001),ラ音(29.1 vs. 18.7%,p=0.001)を有する患者が有意に多かった。
術後合併症に関する多変量ロジスティック回帰分析では,糖尿病症例で胸骨表面創傷の感染症(オッズ比3.31,p=0.0176)および透析を要する腎不全(オッズ比2.24,p=0.0056)の発症リスクが有意に高かった。
また,これらの合併症の発症リスクは,経口血糖降下薬投与または食事療法実施例に比してinsulin投与例で高い傾向が認められた(オッズ比:創傷の感染症4.70 vs. 2.10,腎不全2.91 vs. 1.69)。
48ヵ月後の全死亡(198例:糖尿病症例26% vs. 非糖尿病症例24%,p=0.66),心臓関連死(157例:19.4 vs. 20.7%),不整脈関連死(43例:6.1 vs. 6.9%)に関して,両群間に有意差は認められなかった。Cox多変量回帰分析では,糖尿病(p=0.7346)およびinsulin投与(p=0.6138)はいずれも,全死亡リスクとの間に有意な相関はみられなかった。また,糖尿病と心臓関連死リスクについても有意な相関は認められず(p=0.2059),不整脈関連死リスクは糖尿病症例で低下傾向が認められたものの有意ではなかった(p=0.0688)。
48ヵ月後の再入院率は,糖尿病症例で非糖尿病症例に比して有意に高かった(85 vs. 69%,p=0.0001)。Cox多変量回帰分析では,糖尿病症例において全要因による再入院リスクは44%上昇(ハザード比1.44,p=0.0001),心臓関連の要因による再入院リスクは24%上昇した(ハザード比1.24,p=0.0431)。insulin投与例では,経口血糖降下薬投与または食事療法実施例に比して,再入院リスクが高い傾向が認められた(ハザード比 1.598 vs. 1.327)。CABG後の最初の再入院についてみると,予想に反して,不整脈による再入院率は糖尿病症例(236例)で非糖尿病症例(324例)に比して有意に低く(5.5 vs. 11.7%,オッズ比0.44,p=0.017),入院中の心室性不整脈の発症率も有意に低かった(8.6 vs. 17.0%,オッズ比0.46,p=0.007)。
●結論 重度の左室機能障害患者において,糖尿病は併発疾患が多いにもかかわらずCABG施行後の死亡の予測因子ではなかったが,糖尿病と術後合併症の発症および再入院の増加との間には相関が認められた。