編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Theroux P, Alexander J Jr, Pharand C, Barr E, Snapinn S, Ghannam AF, Sax FL: Glycoprotein IIb/IIIa receptor blockade improves outcomes in diabetic patients presenting with unstable angina/non-ST-elevation myocardial infarction: results from the Platelet Receptor Inhibition in Ischemic Syndrome Management in Patients Limited by Unstable Signs and Symptoms (PRISM-PLUS) study. Circulation 2000; 102: 2466-2472. [PubMed]

不安定狭心症,急性心筋梗塞,虚血性突然死などの急性冠動脈症候群は冠動脈の粥状硬化巣の破綻に始まる血栓形成が原因と考えられている。つまり,血小板が露出した内皮下組織に粘着すると血小板表面のGPIIb/IIIa受容体が活性化し,フィブリノーゲンが結合し他の血小板との凝集が起こる。続く血液凝固系の進行で血栓が形成されると考えられる。tirofibanはGPIIb/IIIa受容体に拮抗し血小板凝集を阻害する。
PRISM-PLUSは不安定狭心症,非ST上昇MIでのtirofiban治療追加が虚血性イベント発生を減少させることを報告した。今回は糖尿病サブグループを解析したものであり,同様なイベント抑制効果があることが示された。【河盛隆造

●目的 不安定狭心症または非ST上昇心筋梗塞(MI)のある患者に対するheparin+aspirinによる標準的抗血栓療法に,糖蛋白(GP)IIb/IIIa受容体拮抗薬tirofibanによる血小板療法の追加を検討したPRISM-PLUS試験において,患者を糖尿病および非糖尿病の2つのサブグループに分けて比較を行った。
PRISM-PLUSの一次エンドポイントは,7日以内の全死亡,新たなMI発症,難治性虚血, あるいは7,30,180日後の不安定狭心症または非ST上昇MIによる再入院の複合イベント。
●デザイン intention-to-treat解析,Cox回帰分析。
(PRISM-PRUSは無作為,プラセボ対照,二重盲検)
●試験期間 追跡期間は180日。
●対象患者 PRISM-PLUSに登録された不安定狭心症または非ST上昇MI患者1915例のうち,tirofiban+heparin併用群またはheparin単独群に割り付けられた糖尿病症例362例(tirofiban+heparin併用群169例[全tirofiban+heparin併用群773例の21.9%],heparin単独群193例[全heparin単独群797例の24.2%])。
(PRISM-PLUSの)登録基準:過去12時間以内に,安静時または最小限の労作時の長時間にわたる狭心痛または狭心症の反復性エピソードが認められ,かつ以下のうち少なくとも1つを伴う患者;心電図所見におけるST-T波の新たな虚血性変化,血漿クレアチンキナーゼ(CK)および/またはCK-MBの上昇。
(PRISM-PLUSの)除外基準:20分を超えるST上昇,過去48時間以内の血栓溶解療法施行歴,最近のPTCAまたはCABG施行歴,過去1年以内の脳卒中の既往,active bleedingまたは出血の高リスク,特定可能な因子による狭心症,検査値異常。
●方法 PRISM-PLUS登録患者の症例報告書に記載されている糖尿病の既往の有無に基づき,糖尿病症例および非糖尿病症例の2つのサブグループに分類して比較を行った。
PRISM-PLUSでは,不安定狭心症または非ST上昇MI患者1915例をtirofiban単独群(tirofiban 0.6μg/kg/分×30分→0.15μg/kg/分),tirofiban+heparin併用群(tirofiban 0.4μg/kg/分×30分→0.10μg/kg/分,heparin 5000Uボーラス投与→1000U/時で活性化部分トロンボプラスチン時間がコントロールの2倍になるよう投与),heparin単独群(heparin 5000Uボーラス投与→1000U/時で活性化部分トロンボプラスチン時間がコントロールの2倍になるよう投与)に無作為化(tirofiban単独群では7日後に死亡率の増加が認められたため,同治療群は中止された)。全例にaspirin 160~325mg/日連日投与。
●結果 一次エンドポイント(死亡,MI,難治性虚血,不安定狭心症/非ST上昇MIによる再入院の複合イベント)およびMI+死亡の発生率は,2,7,30,180日後のいずれの時点においても,非糖尿病症例に比して糖尿病症例で高く,これは主として難治性虚血の増加によるものであった。糖尿病症例を治療群別に検討すると,tirofiban+heparin併用群ではheparin単独群に比較して一次エンドポイントの発生率が減少し(2,7,30,180日後にそれぞれ7.7 vs. 8.3%,14.8 vs. 21.8%,20.1 vs. 29.0%,32.0 vs. 39.9%,それぞれp=NS),MI+死亡の発生率についても有意な減少が認められた(2,7,30,180日後にそれぞれ0.0 vs. 3.1%,p=0.03,1.2 vs. 9.3%,p=0.005,4.7 vs. 15.5%,p=0.002,11.2 vs. 19.2%,p=0.03)。
また,tirofiban治療と糖尿病罹患状況の間には有意な量的相関が認められ,tirofibanのMI+死亡抑制効果は糖尿病症例でより強力であった(7日後:p=0.006,30日後:p=0.007)。
糖尿病症例の30日後におけるエンドポイントの発生率を治療別に検討したところ,経皮的冠インターベンション(PCI)施行例,CABG施行例,薬物治療施行例のいずれにおいても減少が認められ,その程度はPCI施行例およびCABG施行例でより大きかった。出血性合併症の発生率は,heparin単独群に比してtirofiban+heparin併用群でやや増加したが,有意差には至らなかった。また,糖尿病症例では非糖尿病症例に比して出血性合併症の発生率はやや低く,tirofiban追加併用による影響はわずかであった。
●結論 不安定狭心症および非ST上昇MIを合併した糖尿病患者において,heparinおよびaspirinへのtirofibanの追加併用は,重大な虚血性イベント,とくにMIまたは死亡の抑制効果を有することが示された。