編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Ratner RE, Hirsch IB, Neifing JL, Garg SK, Mecca TE, Wilson CA: Less hypoglycemia with insulin glargine in intensive insulin therapy for type 1 diabetes. U.S. Study Group of Insulin Glargine in Type 1 Diabetes. Diabetes Care 2000; 23: 639-643. [PubMed]

生理的なインスリン分泌特性は,24時間にわたる「基礎分泌」と食事による血糖上昇時に分泌される「追加分泌」の2つの分泌パターンから構成されている。現在,基礎分泌を補充するために使用されている中間型インスリン(NPHインスリン)は,血中濃度のピークを認めるうえで1日1回の注射では作用時間が短い,また持続型インスリン(Ultralente)は亜鉛懸濁溶液のため混和が難しく注射後の吸収が一定しない,などの理由より基礎分泌の代替に十分な薬剤ではない。インスリンglargineは,それらの欠点を克服し,生理的基礎分泌により近いものをめざして開発されたものである。これはヒトインスリンのA鎖21位のアスパラギン酸をグリシンに置換,B鎖30位にアルギニンを2残基付加した誘導体であり,NPHインスリンに比べ明確なピークを示さず持続時間が長いことがすでに示されている。
本試験は,頻回注射を行っている1型糖尿病患者の基礎分泌インスリンの補充をNPHインスリンまたはインスリンglargineで行い,血糖コントロール状態,低血糖の発症頻度を比較したものである。その結果,glargineはGHb値の改善程度こそNPHと有意差を認めなかったが,症候性低血糖,夜間低血糖の発症を有意に抑制した。いままで1型糖尿病の血糖コントロールには低血糖発症の危険が伴ったが,インスリンglargineの使用によって理想的な血糖コントロールがより安全に得られることが期待される。なお本薬剤はわが国でも臨床試験が進行中である。【河盛隆造

●目的 1型糖尿病患者において,通常の食前インスリン治療に加え,インスリンglargineまたはNPHインスリンによる治療を行った場合の,血糖コントロールおよび低血糖症の発症に及ぼす効果を比較した。
●デザイン 無作為,多施設,パラレル,intention-to-treat解析。
●試験期間 追跡期間は28週。
●対象患者 534例:1型糖尿病罹患後1年以上の男女。GHb(グリコヘモグロビン)値≦12.0%(平均GHb値7.7%)。平均空腹時血漿ブドウ糖(FPG)値11.8mmol/L(212mg/dL)。食後Cペプチド値≦0.5nmol/L。年齢18~80歳。
除外基準:登録前1ヵ月以内のインスリン以外の糖尿病治療薬の使用,妊娠,肝機能障害,腎機能障害,夜間勤務の者。
●方法 1~4週のスクリーニング後,インスリンglargine群(264例:1日1回;就寝時),またはNPHインスリン群(270例:1日1回;就寝時,または1日2回;就寝時と朝食前)に無作為割付け。投与量は,空腹時血糖(FBG)値4.4~6.7mmol/L(80~120mg/dL)を目標とし,かつ症候性夜間低血糖症が発症しない範囲で調整。両群で,食前30分までに通常インスリンを使用。
●結果 割付け時から試験終了時のGHb値の変化は,インスリンglargine群-0.16%,NPHインスリン群-0.21%(p>0.05)と両群ともわずかに減少していた。FPG値は,インスリンglargine群-1.67mmol/L(-30mg/dL),NPHインスリン群-0.33mmol/L(-5mg/dL)(p=0.0145)と,インスリンglargine群で著明に低下し,毛細血管のFBG値もインスリンglargine群で低下傾向にあった。1ヵ月後に血糖値<2.0mmol/L(36mg/dL)の患者で,症候性低血糖症の発症はインスリンglargine群とNPHインスリン群で39.9% vs. 49.2%(p=0.0219),夜間低血糖症の発症は18.2% vs. 27.1%(p=0.0116)と,インスリンglargine群で顕著に低かった。
●結論 1型糖尿病患者における通常のインスリン治療にインスリンglargine治療を加えた場合,NPHインスリン(1日1回または2回)治療を加えた場合に比べ,低血糖症の発症が少なくFPG値を低下させることができる。