編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Wake N, Hisashige A, Katayama T, Kishikawa H, Ohkubo Y, Sakai M, Araki E, Shichiri M: Cost-effectiveness of intensive insulin therapy for type 2 diabetes: a 10-year follow-up of the Kumamoto study. Diabetes Res Clin Pract 2000; 48: 201-210. [PubMed]

Kumamoto studyの10年間の追跡期間中の医療費に関する検討である。2型糖尿病患者におけるインスリン強化療法が,最終的には細小血管障害の予防に有用なため,費用対効果でも優ることが示された。医療費削減が叫ばれている最近のわが国で,糖尿病治療に関する貴重な医療経済学的な検討といえる。【片山茂裕

●目的 日本人の2型糖尿病に対する強化インスリン療法の費用対効果を従来インスリン療法と比較した。エンドポイントは,網膜症の進展,前増殖または増殖網膜症,光凝固,腎症の進展,臨床的神経障害,大血管症,糖尿病関連死。
●デザイン 無作為,intention-to-treat解析。
●試験期間 追跡期間は10年。登録期間は1987~1988年。
●対象患者 110例:インスリン治療を要する2型糖尿病患者(中間型インスリン朝1回または朝夕2回)。28~68歳。網膜症はないか単純網膜症。尿中アルブミン排泄(UAE)量<300mg/日。血清クレアチニン<1.5mg/dL。治療を要する重篤な糖尿病性神経障害がない。
●方法 患者をインスリン頻回注射療法(MIT)群,または従来インスリン療法(CIT)群に無作為割付け。さらに一次予防群(55例:網膜症がなく,尿中アルブミン排泄(UAE)量<30mg/24h),二次介入群(55例:単純網膜症があり,UAE量<300mg/24h)の2群に分けた。細小血管合併症また大血管症の発症および進展,糖尿病関連死のリスク低下と,各群についてエンドポイントに至るまでの年数を算出。国民健康保険に基づき,10年間の糖尿病治療コスト(外来,検査,インスリン療法,血糖自己測定),合併症のコスト(入院,薬剤,眼疾患治療)を直接医療コストとして算出し,MIT群とCIT群で比較した。
●結果 MITによる相対リスク低下(対CIT)は,網膜症の進展で67%,光凝固で77%,腎症の進展で66%,アルブミン尿で100%,臨床的神経障害で64%であった。MITによる合併症発症までの期間の延長(対CIT)は,網膜症の進展で2.0年(p<0.0001),光凝固で0.3年(p<0.05),腎症の進展で1.5年(p<0.01),臨床的神経障害で2.2年(p<0.0001)であった。糖尿病治療コストは,MIT群のほうが高かったが(p<0.001),合併症のコストはCIT群のほうが高かった(p<0.001)。年間の総コストは,初年でMIT群がCIT群に対して有意に高かったが(p<0.001),両者は5年後に逆転した。10年間の患者あたりの総コストは3%安く見積っても,MIT群30310ドル,CIT群31525ドルであり,MIT群では合併症管理のコストの減少が総コストの減少に寄与した。
●結論 インスリン頻回注射療法は費用と効果の両面で従来インスリン療法よりも有益であり,患者にとっても保健政策の点においても2型糖尿病患者の治療法として推奨される治療法である。