編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Abizaid A, Costa MA, Centemero M, Abizaid AS, Legrand VM, Limet RV, Schuler G, Mohr FW, Lindeboom W, Sousa AG, Sousa JE, van Hout B, Hugenholtz PG, Unger F, Serruys PW: Arterial Revascularization Therapy Study Group.: Clinical and economic impact of diabetes mellitus on percutaneous and surgical treatment of multivessel coronary disease patients: insights from the Arterial Revascularization Therapy Study (ARTS) trial. Circulation 2001; 104: 533-538. [PubMed]

多枝CADをもつ糖尿病患者のPTCA治療の長期予後がCABGに比べ非常に悪いとの結果(BARI)がある。その後,経皮的方法にはステントの導入,外科手術法では動脈バイパスの使用が一般的になり,両治療法とも成績の改善が著しい。本研究は,現在の技術であるステントとCABGを行い,1年後の成績を糖尿病患者サブグループで解析したものである。その結果,ステント植え込み術は施行後1年目でCABGよりコストは安いが,血行再建術再施行の必要性がより高かった。最も再施行を要したのは糖尿病のステント症例であり,非糖尿病のステント症例と比較しても有意に頻度が高かった。ステントの導入後も,糖尿病は血管形成術の血管イベント抑制効果を増悪させる因子と思われた。【河盛隆造

●目的 多枝冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者の治療として,CABGとステント植込み術を比較し,それぞれの治療コストを検討した。
●デザイン 無作為,多施設。
●試験期間 追跡期間は1年。登録期間は1997年4月~1998年6月。
●対象患者 1205例:ARTSの登録患者(血管形成術,CABG施行歴のない血行再建術適応患者:無症候性虚血,安定または不安定狭心症,異なる主要心外膜冠動脈にステント植込み術の対象となる新たな病変が2つ以上の患者)。
除外基準:左主幹部の狭窄,左室機能障害(左室駆出率30%未満),脳血管事故の既往,過去1週間以内の心筋梗塞(MI),重度の肝疾患または腎疾患,大手術の同時施行の必要性。
●方法 患者をステント(植込み術)群600例とCABG群605例に無作為化。本解析では,各治療群を糖尿病例(208例:ステント群112例,CABG群96例)および非糖尿病例(997例:ステント群488例,CABG群509例)に分けて比較を行った。
糖尿病例には,経口血糖降下薬またはinsulin投与が推奨された。
患者1例あたりのコストは,使用した物資(入院,術後の集中治療,CAD治療,それ以外の治療,診断および治療のための処置[外来治療,血管造影,大動脈内バルーンポンピング,リハビリテーション等]),薬物療法,血行再建術に用いられた器具(バルーン,ワイヤー,カテーテル,ステント),各処置に要した時間を集計し,それらに相当するユニットコストとして米ドルで算出した。
●結果 ベースライン時の患者背景は,糖尿病例および非糖尿病例とも,両治療群間で類似していた。
1年後のイベントフリー生存率は,糖尿病例ではステント群63.4%(71例),CABG群84.4%(81例),非糖尿病例ではそれぞれ76.2%(372例),88.4%(450例)で,糖尿病例のステント群で最も低かった。これは血行再建術の再施行が,糖尿病例のステント群(22.3%[25例])で,糖尿病例のCABG群(3.1%[3例],p<0.001)および非糖尿病例のステント群(15.6%[76例],p=0.04)とCABG群(3.5%[18例])に比してより多いことによるものであった。これに対し,糖尿病例と非糖尿病例のCABG群では,1年後のイベントフリー生存率は同等であった(p=NS)。
多変量ロジスティック回帰分析では,ステント群において,糖尿病は1年後までの主要な心イベント(死亡,MI,血行再建術再施行)および脳血管イベント(脳卒中,一過性虚血発作,可逆性の虚血性神経障害)発生の独立した強いリスク因子であったが(p=0.002,オッズ比2.1),CABG群では独立したリスク因子ではなかった。
患者1例あたりの1年間の総コストは,糖尿病例ではステント群12855ドル,CABG群16585ドル,非糖尿病例ではそれぞれ10164ドル,13082ドルと,いずれの症例においてもステント群で有意に低かった(p<0.001)。
●結論 多枝CAD患者において,ステント植込み術を施行された糖尿病例は,CABGを施行された糖尿病例およびステント植込み術を施行された非糖尿病例に比較し,1年後のアウトカムが不良であった。しかし,糖尿病の有無にかかわらず,ステント植込み術はCABGに比較して低コストであった。