編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Heart Protection Study Collaborative Group: MRC/BHF Heart Protection Study of cholesterol lowering with simvastatin in 20,536 high-risk individuals: a randomised placebo-controlled trial. Lancet 2002; 360: 7-22. [PubMed]

糖尿病を含むCHD高リスク患者に対するsimvastatinの効果を,約2万人の多数例についてプラセボと比較した貴重な成績である。本研究では,被験者の約1/4は女性であり,年齢層および血清コレステロール値も幅広く分布しており,外的妥当性は高いと思われる。また,心筋梗塞のみならず脳梗塞のリスクを減少させたことは興味深い。また,糖尿病はCHDのない7150例中3982例,CHDを有する13386例中1981例含まれており,糖尿病群のサブ解析結果が待たれる。
しかしながら,本研究は虚血性心疾患の多い英国でなされた試験であること,simvastatinの用量が40mg/日でわが国の通常用量(5~10mg/日)をはるかに超えていること,血清コレステロール値の登録基準は≧135mg/dLで,わが国では本薬の適応にならない低い基準に設定されていることを考慮すると,本研究成績の日本人への適用は慎重であるべきであろう。【景山 茂

●目的 冠動脈心疾患(CHD)の高リスク患者において,HMG-CoA還元酵素阻害薬simvastatinによる脂質低下療法の有効性を検討した。
一次アウトカムは死亡率(全解析),致死性または非致死性血管イベント(サブグループ解析),加えて癌および他の重度の疾患(サブ評価)。
●デザイン 無作為,プラセボ対照,多施設(英国),intention-to-treat解析。
●試験期間 追跡期間は平均5年。ランダム化期間は1994年7月~1997年5月。2001年5~10月追跡終了。
●対象患者 20536例:冠動脈疾患,冠動脈以外の閉塞性動脈疾患,糖尿病,治療されている高血圧のいずれかを有する成人。40~80歳。非空腹時の総コレステロール(TC)値≧135mg/dL。
除外基準:慢性肝疾患または肝機能異常。重篤な腎疾患または腎機能異常。炎症性筋疾患または筋障害。シクロスポリン,フィブラート,高用量ナイアシンの投与中。妊娠の可能性。重症心不全。血管疾患および糖尿病以外の致死性疾患。長期コンプライアンスが制限される疾患。
●方法 run-in期間後,患者をsimvastatin(40mg/日)群(10269例)とプラセボ群(10267例)にランダム化。
・run-in期間はプラセボを4週投与後,simvastatin 40mg/日を4~6週投与。
●結果 スタチン投与率は,simvastatin群(コンプライアンスまたは非試験薬のスタチン)85%,プラセボ群(非試験薬のスタチン)17%であった。したがってintention-to-treat解析では,試験期間中のsimvastatin投与の約2/3(85%-17%)の有効性を評価しており,両群のLDL-C値の差(平均39mg/dL)も,simvastatin 40mg/日投与による有効性の約2/3に相当すると考えられる。
試験期間中の死亡率はsimvastatin群でプラセボ群に比して有意に減少した(12.9%[1328例] vs. 14.7%[1507例];p=0.0003)。これは,冠動脈死の顕著で有意な減少(5.7%[587例] vs. 6.9%[707例];p=0.0005),その他の血管死のほぼ有意な減少(1.9%[194例] vs. 2.2%[230例];p=0.07),有意ではないが非血管死の減少(5.3%[547例] vs. 5.6%[570例];p=0.4)によるものであった。
初回イベントの発生率は,非致死性心筋梗塞(MI)または冠動脈死(8.7%[898例] vs. 11.8%[1212例];p<0.0001),脳卒中(4.3%[444例] vs. 5.7%[585例];p<0.0001),血行再建術(9.1%[939例] vs. 11.7%[1205例];p<0.0001)と,いずれもsimvastatin群で約1/4減少した。これらを合わせた主要血管イベントの減少は24%(95%CI 19-28)であった(19.8%[2033例] vs. 25.2%[2585例];p<0.0001)。1年後までは,主要血管イベントの減少に両群間の有意差はなかったが,その後はいずれの年も有意差を認めた。
simvastatin投与による主要血管イベントの減少は,各サブグループにおいても約1/4と同等であり,特に冠動脈疾患既往のない脳血管疾患例,末梢血管疾患例,糖尿病例で顕著な減少を認め,また性別,登録時年齢(<70歳,≧70歳),LDL-C値<116mg/dL,TC値<193mg/dLで検討しても,simvastatin群において顕著な減少を認めた。
その他の心保護治療は試験期間中も継続していたことより,simvastatinとそれらの心保護治療の有効性は相加的であると考えられた。
simvastatinによる筋障害リスク増大は約0.01%/年であった。癌の発生率および非血管イベントによる入院に対する有意な悪影響は認めなかった。
●結論 CHD高リスク患者において,現行治療へのsimvastatin併用は,登録時のコレステロール値にかかわらず安全な相加的有効性があることが示された。simvastatin 40mg/日投与により,MI,脳卒中,血行再建術が約1/4減少したが,本解析はsimvastatin有効性の約2/3の評価であることを考慮すると,実際には約1/3の減少となると考えられる。
CHD高リスク患者におけるsimvastatin 5年投与は,1000例中70~100例の主要血管イベント発生を抑制し,投与が長期になるほど有効性が増大することが示された。また,simvastatin 5年投与による有効性は,コレステロール値ではなく,主に各患者の主要血管イベント発生リスクによることが示された。