編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Collins R, Armitage J, Parish S, Sleigh P, Peto R, Heart Protection Study Collaborative Group: MRC/BHF Heart Protection Study of cholesterol-lowering with simvastatin in 5963 people with diabetes: a randomised placebo-controlled trial. Lancet 2003; 361: 2005-2016. [PubMed]

糖尿病患者における心血管イベントの予防には,UKPDSにより血圧コントロールの重要性が,そして今回,本研究によりスタチン系薬剤の有用性が示され興味深い。
本研究では,糖尿病の有無を問わず主要冠イベントのNNT(number needed to treat)はおよそ30人(5年間)である。また,発症率はおよそ1000人・年あたり20件弱である。一方,わが国のJ-LITでは主要冠イベントの発症率は1000人・年あたりおよそ0.9件で,本研究の約20分の1である.simvastatinの用量も,本研究は40 mg/日,J-LITでは5~10 mg/日である。本研究の成績の日本人への適用には,慎重でなければならないといえよう。【景山 茂

●目的 糖尿病患者において,HMG-CoA還元酵素阻害薬simvastatinによる脂質低下療法の血管イベントに対する有効性を検討した。
●デザイン 無作為,プラセボ対照,二重盲検,intention-to-treat解析。
●試験期間 登録期間は1994年7月~1997年5月。平均追跡期間は4.8年(糖尿病例)および5.0年(非糖尿病例)。
●対象患者 20536例:英国の成人糖尿病患者5963例および非糖尿病患者(糖尿病の診断を有さない閉塞性動脈疾患患者)14573例。
登録基準:40~80歳。非空腹時総コレステロール(TC)値≧135mg/dL。糖尿病,冠動脈疾患,冠動脈以外の閉塞性動脈疾患,治療されている高血圧。
除外基準:スタチンの明らかな適応または禁忌。過去6ヵ月の心筋梗塞(MI),脳卒中,狭心症による入院。慢性肝疾患または肝機能異常。重篤な腎疾患または腎機能異常。炎症性筋疾患または筋障害。シクロスポリン,フィブラート,高用量ナイアシンの投与。妊娠の可能性。重症心不全。血管疾患または糖尿病以外の致死性疾患。長期コンプライアンスが制限される疾患。
●方法 run-in期間後,患者をsimvastatin(40mg/日)群(10269例)とプラセボ群(10267例)にランダム化。
・run-in期間はプラセボ4週投与後,simvastatin 40mg/日を4~6週投与。
・各群の初回主要冠イベント(非致死性MI,冠動脈死)および初回主要血管イベント(主要冠イベント,脳卒中,血行再建術)の発生を追跡し,糖尿病患者と非糖尿病患者で比較した。
●結果 追跡期間の両群のLDL-C値の差は,平均39mg/dLであった。
糖尿病の有無にかかわらず,simvastatin投与により初回主要冠イベント,初回脳卒中,初回血行再建術の発生率が約1/4減少した。これらを合わせた初回主要血管イベントの発生率は,糖尿病患者では22%(95%CI[以下同]13-30%)減少し(simvastatin群:601例[20.2%] vs. プラセボ群:748例[25.1%],p<0.0001),これは非糖尿病患者と同等であった。
また,登録時に閉塞性動脈疾患を認めない糖尿病患者2912例では,simvastatin投与により初回主要血管イベント発生率が33%(17-46%,p=0.0003)減少し,登録時のLDL-C値が<116mg/dLの糖尿病患者2426例でも27%(13-40%,p=0.0007)減少した。その他の糖尿病患者においても,罹病期間,糖尿病のタイプ,血糖コントロール,登録時年齢(≧65歳),高血圧の有無,TC値(<193mg/dL)にかかわらず,simvastatin投与により初回主要血管イベントの発生率は約1/4減少した。さらに,初回主要血管イベントを発生した糖尿病患者における追跡期間のイベント発生数も,simvastatin投与により減少した。
●結論 冠動脈疾患を有さず,コレステロール高値でない糖尿病患者においても,simvastatinによる脂質低下療法は初回主要血管イベント発生率の減少に有効であることが示された。したがって,コレステロール値にかかわらず,主要血管イベントリスクが高いすべての糖尿病患者に対して,スタチン投与を考慮すべきであると考えられる。