編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Murcia AM, Hennekens CH, Lamas GA, Jimenez-Navarro M, Rouleau JL, Flaker GC, Murcia AM, Murcia AM, Murcia AM, Murcia AM: Impact of diabetes on mortality in patients with myocardial infarction and left ventricular dysfunction. Arch Intern Med 2004; 164: 2273-2279. [PubMed]

糖尿病が背景にあるとsecondaryの心血管イベントリスクが増大するという大規模臨床研究であり,primaryのイベントに糖尿病が独立したリスクとなることを示したMRFIT試験から実に10年以上が経過してのデータである。その後,1998年にFinnish Studyにおいて,心筋梗塞既往の有無が糖尿病の心筋梗塞初発・再発リスクに及ぼす影響がすでに発表されている。
今回の解析では,インスリン治療例でよりリスクが高いという結論に至っているが,これは,インスリン治療が心筋梗塞を起こしやすいということを意味しているのでないことを認識しておく必要があろう。【河盛隆造

●目的 急性心筋梗塞(MI)発症後,左室機能不全を認める患者において,糖尿病が長期的な心血管イベントおよび死亡に及ぼす影響を検討した。
エンドポイントは全死亡,心血管死,うっ血性心不全,MI再発,心血管死および心血管疾患の複合イベント。
●デザイン 無作為,二重盲検,プラセボ対照,多施設。
●試験期間 登録期間は1987年1月27日~1990年1月29日。追跡期間は2~5年(平均3.5年)。
●対象患者 2231例:急性MIを発症し,左室機能不全(左室駆出率≦40%[平均31%])を認める患者。21~80歳。
除外基準:ACE阻害薬投与を要する症候性心不全。臨床的に明らかな虚血またはMI発症後の運動負荷試験陽性(血行再建術の施行予定がある場合を除く)。
●方法 急性MI発症後3~16日にACE阻害薬captopril群またはプラセボ群にランダム化。エンドポイントの発生率を糖尿病例および非糖尿病例で比較。
●結果 糖尿病例は496例(22.2%)で,このうち168例(33.9%)がインスリンを投与されていた。
糖尿病例は非糖尿病例に比して,より高齢で(p<0.001),女性(p<0.001)および肥満(p<0.001)が多く,MIの既往(p<0.001)および高血圧の既往(p<0.001)を有する患者が多く,Killip分類≧II度の患者が多く(p<0.001),SBP(p<0.001)および心拍数(p=0.02)が高く,左室駆出率が低かった(p=0.03)。
追跡期間中の全死亡(糖尿病例31.3 vs 非糖尿病例20.1%,p<0.001),心血管死(26.8 vs 16.7%,p<0.001),うっ血性心不全(31.5 vs 17.3%,p<0.001),MI再発(19.0 vs 12.1%,p<0.001),心血管死および心血管疾患の複合イベント(50.0 vs 32.3%,p<0.001)はいずれも,糖尿病例で有意に高率であった。また,糖尿病例の50%が1件以上の重度の心血管イベントを発生したのに対し,非糖尿病例では32.3%であった(p<0.001)。
多変量解析を行ったところ(ベースライン時に有意差を認めたすべての患者背景を補正),糖尿病例では非糖尿病例に比して,全死亡リスクが39%増大(p=0.001),心血管死リスクが40%増大(p=0.002),うっ血性心不全リスクが65%増大(p<0.001),MI再発リスクが54%増大(p=0.001),心血管死および心血管疾患の複合イベントのリスクが49%増大(p<0.001)していた。
糖尿病例においてベースライン時のインスリン治療の有無によるサブグループ解析を行うと,インスリン治療例では非治療例に比して,全死亡(41.1 vs 26.2%,p=0.001),心血管死(36.9 vs 21.7%,p<0.001),心血管死および心血管疾患の複合イベント(58.3 vs 45.7%,p=0.008)が有意に高率であった。多変量解析でも,インスリン治療は全死亡(ハザード比1.66,p=0.002),心血管死および心血管疾患の複合イベント(1.38,p=0.02)と有意な相関を示した。
●結論 MI発症後,左室機能不全を認める患者では,リスク因子を補正後においても糖尿病は全死亡のリスクを増大させることが示され,とくにインスリン治療例で顕著であった。したがって,MIを発症し,左室機能不全を認める糖尿病患者(とくにインスリン治療例)は,死亡リスクおよび心血管イベントのリスクが高く,強力なリスク因子の修正および新たな治療の検討が必要である。