編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Knopp RH, d'Emden M, Smilde JG, Pocock SJ: Efficacy and safety of atorvastatin in the prevention of cardiovascular end points in subjects with type 2 diabetes: the Atorvastatin Study for Prevention of Coronary Heart Disease Endpoints in non-insulin-dependent diabetes mellitus (ASPEN). Diabetes Care 2006; 29: 1478-1485. [PubMed]

「LDL-C値はthe lower is the better」を証明するエビデンスが数多くある一方,今回のように有意差がでない研究があることは,現在のスタチン神話に影を落とす心配はないと思われる。実際に,コレステロール値がこのレベルでは,その値そのものの問題に加え,一次予防か二次予防か,またそれ以外の背景因子によっても,結果にかなり差が出るのではないかと考えられる。【河盛隆造

●目的 LDL-C値がガイドラインで定められた目標値より低い2型糖尿病患者において,HMG-CoA還元酵素阻害薬atorvastatinの心血管疾患予防効果を検討した。
一次エンドポイントは心血管死(致死性心筋梗塞[MI],致死性脳卒中,心突然死,心不全,不整脈性心血管死),非致死性または無症候性MI,非致死性脳卒中,再開通,冠動脈バイパス術,心停止後の蘇生,狭心症の悪化または入院を要する狭心症の複合エンドポイント。
●デザイン 無作為,二重盲検,プラセボ対照,多施設(オーストラリア,オーストリア,カナダ,フィンランド,フランス,ドイツ,イタリア,オランダ,ニュージーランド,ノルウェー,南アフリカ,スペイン,スイス,米国),intention-to-treat解析(有効性)。
●試験期間 登録期間は1996~1999年。試験期間は4年。追跡期間は中央値4年(最長4.25年)。
●対象患者 2410例:LDL-C値がガイドラインで定められた目標値より低い2型糖尿病患者。
登録基準:40~75歳。罹病期間≧3年。LDL-C値≦140mg/dL(3ヵ月以前にMI既往またはインターベンション施行歴のある患者)または≦160mg/dL(それらの既往または施行歴のない患者)。トリグリセリド値≦600mg/dL。
除外基準:1型糖尿病。過去3ヵ月以内のMI,インターベンション処置,不安定狭心症。HbA1c値>10%。肝疾患または肝機能異常(アスパラギン酸またはアラニンアミノトランスフェラーゼが正常上限の1.5倍以上)。重度の腎機能障害またはネフローゼ症候群。digoxin治療を実施されているうっ血性心不全。クレアチンホスホキナーゼが正常上限の3倍以上。血圧>160/100mmHg。BMI>35kg/m²。アルコール依存症または薬物依存症。試験薬に対する過敏症。過去30日以内の他試験への参加。プラセボ投与によるrun-in期間における遵守率<80%。妊娠中またはその予定。免疫抑制剤,臨床検査値に影響を及ぼす薬剤,スタチン系薬剤併用により横紋筋融解症のリスクを増大させる薬剤の服用。
●方法 プラセボ投与によるrun-in期間(6週)後,atorvastatin 10mg/日群(1211例),プラセボ群(1199例)にランダム化。全例にNCEP Step 1またはそれと同等の食事療法ならびにガイドラインに準じた糖尿病治療を実施。のちにNCEPによる治療ガイドラインが修正されたことにより,本試験ではすべての二次予防例およびエンドポイントの発生をみた一次予防例に対する試験薬の投与が中止された。
●結果 atorvastatin群では,4年後における平均LDL-C値がプラセボ群に比して29%低かった(p<0.0001)。
一次エンドポイントの発生はatorvastatin群13.7%,プラセボ群15%で,両群間に有意差はみられなかった(ハザード比[HR]0.90,95%CI 0.73-1.12,p=0.34)。MI既往またはインターベンション施行歴のない1905例(一次予防例:10.4 vs 10.8%,HR 0.97,95%CI 0.74-1.28),およびそれらの既往または施行歴を有する505例(二次予防例:26.2 vs 30.8%,HR 0.82,95%CI 0.59-1.15)に分けて検討しても,一次エンドポイント発生に両群間の有意差はみられなかった。
致死性または非致死性MIの発症リスクは,atorvastatin群でプラセボ群に比して,全例では27%低下(HR 0.73,95%CI 0.51-1.06,p=0.10),一次予防例では19%低下(p=0.41),二次予防例では36%低下し(p=0.11),二次予防例で低下の程度がやや大きかった。
●結論 一次エンドポイントの減少に関して両群間に有意差は認められなかった。これは本試験のデザイン,対象患者のタイプ,一次エンドポイントの特性,治療ガイドラインの修正によるプロトコールの変更などの理由が考えられる。本試験ではatorvastatinによるベネフィットを確認することはできなかったが,本試験の結果は,「大多数の糖尿病患者では冠動脈心疾患リスクが増大しており,LDL-C値を目標値まで低下させるべきである」という勧告の重要性を損なうものではない。