編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Bretzel RG, Nuber U, Landgraf W, Owens DR, Bradley C, Linn T: Once-daily basal insulin glargine versus thrice-daily prandial insulin lispro in people with type 2 diabetes on oral hypoglycaemic agents (APOLLO): an open randomised controlled trial. Lancet 2008; 371: 1073-1084. [PubMed]

3回注射と1回注射の比較試験は,先に4-T試験で発表され,結果は3回注射のほうがHbA1c値の改善率で優れているとされている。しかしいずれにしても,超速効型の3回注射は,もう1回の基礎インスリンの追加でコントロールが劇的に改善する症例がかなりの割合で含まれており,1回でも3回でも同じという結論に安易にもっていってしまわないよう,注意が必要である。【河盛隆造

●目的 経口血糖降下薬投与下で血糖コントロール不良の2型糖尿病患者において,インスリンglargine 1日1回投与を併用することがインスリンlispro 1日3回食前投与を併用した場合に比較して劣っていないかを検討した。
主要アウトカムは44週後におけるHbA1c値の変化。
●デザイン 無作為,オープン,パラレル,多施設(69施設),多国間(欧州,オーストラリア)。
●試験期間 試験実施期間は2003年6月25日~2005年5月31日。投与期間は44週。
●対象患者 418例:経口血糖降下薬投与下でコントロール不良の2型糖尿病患者。
登録基準:18~75歳。罹病期間1年以上。HbA1c値7.5~10.5%。経口血糖降下薬(αグルコシダーゼ阻害薬を除く)を6ヵ月以上投与され,過去3ヵ月以上にわたり用量が安定。空腹時血糖値≧6.7mmol/L。BMI≦35kg/m²。
除外基準:過去4週以内のインスリン治療。GAD抗体陽性。過去3ヵ月以内に手術を施行された糖尿病網膜症。臨床的に関連のある心血管,消化器,肝,神経,内分泌,血液疾患。薬物またはアルコール依存症の既往。肝機能障害。腎機能障害。妊娠。
●方法 インスリンglargine(1日1回連日同時刻投与)群,インスリンlispro(1日3回食直前投与)群にランダム化。
投与開始量は,インスリンglargine群は10U/日,インスリンlispro群は4U/日。目標血糖値は,インスリンglargine群は空腹時<5.5mmol/L,インスリンlispro群は食前<5.5mmol/Lおよび食後<7.5mmol/Lとし,血糖自己測定値に基づいて1週ごとに用量調整を実施。
glimepiride以外のスルホニル尿素薬投与例では,スクリーニング期間に同等用量のglimepirideに変更(glimepiride投与例では同用量を継続)。その後は試験期間を通じてglimepirideおよびその他の経口血糖降下薬の用量は変更しない。
治療に対する満足感をdiabetes treatment satisfaction questionnaire(DTSQ)により評価。
●結果 試験薬を投与されたのは415例(インスリンglargine群205例,インスリンlispro群210例),per-protocol populationは377例(それぞれ186例,191例)であった。
per-protocol解析において,44週後におけるHbA1c値の平均変化量は,インスリンglargine群-1.72%(8.7[SD 1.0]%→7.0[0.7]%),インスリンlispro群-1.83%(8.7[1.0]%→6.8[0.9]%),補正後の平均変化量はそれぞれ-1.71%,-1.87%と両群でほぼ同等であった。群間差は0.157%(95%CI -0.008~0.322)で,これは非劣性の範囲内(0.4%)であったことから,インスリンglargineの非劣性が示された。
HbA1c値≦7%を達成した患者は,インスリンglargine群106例(57%),インスリンlispro群131例(69%)。
インスリンglargine群ではインスリンlispro群に比し,空腹時血糖値(-4.3[SD 2.3]mmol/L vs -1.8[2.3]mmol/L,p<0.0001)および夜間血糖値(-3.3[2.8]mmol/L vs -2.6[2.9]mmol/L,p=0.0041)の低下量が有意に大きかった。一方,インスリンlispro群ではインスリンglargine群に比し,食後血糖値のコントロールが有意に良好であった(朝食後:p=0.0137,昼食後および夕食後:p<0.0001)。
低血糖イベントはインスリンglargine群で有意に少なかった(1例あたりの年間発生件数:5.21[95%CI 4.02~6.40]件vs 24.00[20.10~27.90]件,p<0.0001)。体重の増加量は両群で同等であった(3.01[SD 4.33]kg vs 3.54[4.48]kg,p=0.23)。治療に対する満足感の改善は,インスリンglargine群で有意に大きかった(補正後の平均群間差3.13ポイント[95%CI 2.04~4.22],p<0.0001)。
●結論 経口血糖降下薬投与下でコントロール不良の2型糖尿病患者において,基礎インスリン(インスリンglargine)あるいは食前インスリン(インスリンlispro)の併用は,HbA1c値の改善に同程度の有効性を示した。しかし,インスリンglargineのほうが低血糖リスクが低く,注射回数および血糖自己測定回数も少なくて済み,また患者の満足感も高かった。したがって,早期インスリン治療においては,インスリンglargineは簡便かつ有効で,患者の満足感がより高い治療選択肢であると結論できる。