編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Morrow DA, Antman EM, Murphy SA, Qin J, Ruda M, Guneri S, Jacob AJ, Budaj A, Braunwald E, TIMI Study Group: Effect of enoxaparin versus unfractionated heparin in diabetic patients with ST-elevation myocardial infarction in the Enoxaparin and Thrombolysis Reperfusion for Acute Myocardial Infarction Treatment-Thrombolysis In Myocardial Infarction study 25 (ExTRACT-TIMI 25) trial. Am Heart J 2007; 154: 1078-84, 1084.e1. [PubMed]

ACS患者の25%がすでに糖尿病と診断を受けており,加えてその15%はACS時に糖尿病と新たに診断を受けるといわれている。
新しい抗凝固薬であるGP IIb/IIIa阻害薬は,非糖尿病患者に比べて糖尿病患者においてST上昇のない心筋梗塞による死亡を26%減少させることが報告されている。今回の検討では,enoxaparinを用いた再灌流療法は従来の非分画heparinに比し優れており,糖尿病患者におけるリスク低下率は,非糖尿病患者に比べてはるかに大きかった。aspirinまたはclopidogrelなどの抗血小板薬に加えてenoxaparinを用いると,1000人あたりさらに23人の救命につながると推定される。【片山茂裕

●目的 糖尿病を有する高リスクのST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,enoxaparinの有効性および安全性を検討した。
一次エンドポイントは30日後における死亡または非致死性心筋梗塞(MI)再発。
●デザイン 無作為,二重盲検,(プラセボ対照),intention-to-treat解析(有効性)。
●試験期間
●対象患者 20479例:ExTRACT-TIMI 25の参加者(≧18歳,発症後6時間以内のSTEMI患者)。糖尿病例3060例,非糖尿病例17189例。
登録基準:追跡期間30日。
除外基準:ショック,血栓溶解療法に対する禁忌,既知の腎不全。
●方法 enoxaparin群(最大8日間投与),非分画heparin群(48時間以上投与)にランダム化(糖尿病患者はそれぞれ1545例,1515例)。全例にaspirin投与および線溶治療を実施。
●結果 糖尿病例は,非糖尿病例に比して有意に高齢で,女性が有意に多く,心不全が有意に多かった(いずれもp<0.0001)。TIMIリスクスコア,性別,喫煙,心不全の既往,腎機能を補正後において,糖尿病例では非糖尿病例に比し,30日後における死亡または非致死性MIリスクが有意に高かった(補正オッズ比1.29,95%CI 1.14-1.46,p<0.0001)。
糖尿病例における検討では,enoxaparin群では非分画heparin群に比し,30日後の死亡(9.5 vs 11.8%,相対リスク[RR]0.81,95%CI 0.66-0.99,p=0.039),死亡または非致死性MI(13.6 vs 17.1%,RR 0.80,95%CI 0.67-0.94,p=0.007),死亡+非致死性MI+緊急血行再建術(16.0 vs 19.7%,RR 0.81,95%CI 0.70-0.94,p=0.007)が有意に減少した。enoxaparin治療の死亡に対する効果は,8日後から認められた(7.0 vs 9.0%,RR 0.78,95%CI 0.61-0.99,p=0.043)。一方,enoxaparin群では重度出血が増加傾向を示した(2.6 vs 1.6%,RR 1.63,95%CI 0.99-2.69,p=0.053)。有効性と安全性を考え合わせると,enoxaparin治療は非分画heparin治療に比して,実質的な臨床的ベネフィットにおいて有意に優れていた(30日後の死亡+非致死性MI+非致死性重度出血:14.8 vs 18.0%,RR 0.83,95%CI 0.70-0.97,p=0.019)。
●結論 糖尿病を有するSTEMI患者において,enoxaparinを用いた再灌流療法は,非分画heparinに比して臨床アウトカムを有意に改善した。enoxaparinによる出血リスクの増大は,致死性および非致死性心血管イベントの減少により相殺された。