編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Chaturvedi N, Porta M, Klein R, Orchard T, Fuller J, Parving HH, Bilous R, Sjolie AK, DIRECT Programme Study Group: Effect of candesartan on prevention (DIRECT-Prevent 1) and progression (DIRECT-Protect 1) of retinopathy in type 1 diabetes: randomised, placebo-controlled trials. Lancet 2008; 372: 1394-1402. [PubMed]

ACE阻害薬lisinoprilが1型糖尿病患者の網膜症の発症および進展を抑制することが小規模な試験で報告されている。しかしながらこの試験では,腎症の進展抑制をみたものであった。
今回の検討は,ARBであるcandesartanが1型糖尿病患者の網膜症の発症および進展に及ぼす影響を明らかにしようとした初めてのトライアルである。この結果,candesartanは網膜症がすでにある患者の網膜症進展は抑制できなかった。しかし網膜症のない患者においては,網膜症発症を減少させ,HRは0.82(p=0.0508)であった。ETDRSの3段階以上の進展とすると,HRは0.65(p=0.0034)と有意になり,4.7年間でのNNTは18となる。
ARBの網膜症発症予防効果は非常に魅力あるものであるが,すべての患者にARBを投与すべきと結論するには,重症の患者も含めたもっと長期の試験が必要であろう。【片山茂裕

●目的 1型糖尿病患者において,AII受容体拮抗薬candesartanの網膜症の発症率減少効果および進展抑制効果を検討した。
一次エンドポイントは,DIRECT-Prevent 1試験では網膜症の発症(ETDRSスケールの2段階以上の変化),DIRECT-Protect 1試験では網膜症の進展(ETDRSスケールの3段階以上の変化)。
●デザイン 無作為,二重盲検,プラセボ対照,多施設(309施設),intention-to-treat解析。
●試験期間 登録開始は2001年8月。2008年3月追跡終了。追跡期間の中央値は4.7年(DIRECT-Prevent 1試験)および4.8年(DIRECT-Protect 1試験)。
●対象患者 正常アルブミン尿および正常血圧の1型糖尿病患者で,網膜症を有さない1421例(DIRECT-Prevent 1試験)および網膜症を有する1905例(DIRECT-Protect 1試験)。
採用基準:1型糖尿病診断時年齢<36歳で診断後1年以内に持続的インスリン治療を開始,起床時の尿中アルブミン排泄率<20μg/分,血圧≦130/85mmHg。
除外基準:網膜写真の判定を不可能にする眼疾患(開放隅角緑内障,網膜視野を不明瞭にする白内障混濁など),狭窄性弁膜疾患,心臓発作または脳卒中の既往,妊娠または授乳中の女性,腎不全(血清クレアチニン値≧110μmol/L[女性]または≧130μmol/L[男性])。
●方法 各試験対象患者ごとに,candesartan群,プラセボ群にランダム化(DIRECT-Prevent 1試験:それぞれ711例,710例,DIRECT-Protect 1試験:それぞれ951例,954例)。
candesartan群では16mg/日から投与開始し,1ヵ月後に32mg/日に倍増。16mg/日または8mg/日への減量は随時可能。
●結果 DIRECT-Prevent 1試験において,網膜症の発症はcandesartan群178例(25%),プラセボ群217例(31%)であった(ハザード比[HR]0.82,95%CI 0.67-1.00,p=0.0508)。事後解析として,網膜症の発症をETDRSスケールの3段階以上の変化としたところ,candesartan群の有意な低下を認めたが(HR 0.65,95%CI 0.48-0.87,p=0.0034),これはベースラインの患者背景を補正すると減弱された(HR 0.71,95%CI 0.53-0.95,p=0.023)。
DIRECT-Protect 1試験において,網膜症の進展は両群で同等であった(127例[13%] vs 124例[13%],HR 1.02,95%CI 0.80-1.31,p=0.8487)。
最終ETDRSレベルは,両試験ともにcandesartan群で有意に改善された(オッズ比:DIRECT-Prevent 1試験1.16,95%CI 1.05-1.30,p=0.0048,DIRECT-Protect 1試験1.12,95%CI 1.01-1.25,p=0.0264)。
●結論 1型糖尿病患者において,candesartanは網膜症の発症を抑制したが,網膜症の進展への有効性は認めなかった。