編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2017年10月現在,1124報収載!
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Holman RR, Paul SK, Bethel MA, Matthews DR, Neil HA: 10-year follow-up of intensive glucose control in type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 359: 1577-1589. [PubMed]

1型糖尿病患者で行われたDCCTのトライアル終了後の経過観察スタディのEDICや,2型糖尿病患者で行われた集学的治療のSteno studyの経過観察スタディでも,治療初期の厳格な血糖管理が後年の細小血管障害や心筋梗塞などの大血管障害を引き続き減少させていることが報告されている。このことは,"metabolic memory"とも呼ばれ,注目を集めている。
今回のUKPDS 80は,当初のトライアルに参加した患者を10年後に再調査したものである。SU-インスリンでの強化療法群では従来療法群に比べて,トライアル終了後血糖管理の差がなくなっていたのにもかかわらず,細小血管障害や心筋梗塞の発症や糖尿病関連死や全死亡が有意に減少していた。肥満者で行われたメトホルミン治療群でも,細小血管障害を除いて,ほぼ同様の効果が認められた。トライアル中の減少度と10年を経て今回認められた減少度とはほぼ同程度か,なかには勝るものもみられる。今回は,著者らは"legacy effect(遺産効果)"と呼んでいる。どのような機序でこのようなベネフィットがもたらされるのか不明であるが,高血糖で生じたAGE(後期最終生成物)が血糖を低く保つことで分解され消失することなどが心血管系によい影響を与える可能性も挙げられる。いずれにしても,糖尿病治療において早期に厳格な血糖コントロールに取り組むことがいかに大切かということを改めて示した重要な報告である。【片山茂裕

●目的 UKPDS参加患者において,厳格な血糖コントロールによる細小血管障害リスク低下が試験終了10年後にも継続するかを検討し,厳格な血糖コントロールの大血管障害に対する長期的な効果を検討した。UKPDSのpost-trial monitoring試験。
アウトカムは糖尿病関連エンドポイント(突然死,高血糖または低血糖による死亡,致死性または非致死性心筋梗塞[MI],狭心症,心不全,致死性または非致死性脳卒中,腎不全,下肢切断,硝子体出血,網膜光凝固術,片眼の失明,水晶体摘出),糖尿病関連死(突然死またはMI死,脳卒中,末梢血管疾患,腎疾患,高血糖,低血糖),全死亡,MI(突然死,致死性または非致死性MI),脳卒中(致死性または非致死性),末梢血管疾患(1指以上の切断,末梢血管疾患死),細小血管疾患(硝子帯出血,網膜光凝固術,腎不全)。
●デザイン 無作為,多施設(23施設),intention-to-treat解析。
●試験期間 登録期間は1977~1991年。UKPDSは1997年9月30日終了。post-trial monitoring試験は2007年9月30日終了。
●対象患者 4209例:UKPDSの参加者(25~65歳の新規2型糖尿病患者[空腹時血漿ブドウ糖[FPG]値>108mg/dL]5102例)のうち,割り付けられた例。
除外基準:ケトン尿症,血清クレアチニン>2.0mg/dL,過去1年間の心筋梗塞,狭心症または心不全,悪性高血圧,主要血管イベント,レーザー治療を要する網膜症,悪性高血圧,治療されていない内分泌疾患,インスリン治療が不可能な職種,余命が制限される併発疾患。
●方法 UKPDSでは,3ヵ月の食事療法によるrun-in期間後,FPG値>108~<270mg/dLの患者を,従来血糖コントロール群(食事療法を実施),厳格血糖コントロール群(スルホニル尿素[SU]薬またはインスリンを投与[理想体重の>120%の過体重例ではmetforminを投与])にランダム化。
本解析では,UKPDS終了後に試験薬の投与を中止し,厳格血糖コントロール群のSU薬またはインスリン投与例(SU-インスリン群)2729例と従来血糖コントロール群1138例,厳格血糖コントロール群のmetformin投与例(metformin群)342例と従来血糖コントロール群の過体重例(411例)で10年間のアウトカムを比較。本解析の追跡期間(中央値)は,SU-インスリン群8.5年,metformin群8.8年。
●結果 SU-インスリン群では従来血糖コントロール群に比し,糖尿病関連エンドポイント(リスク比[RR]0.91,95%CI 0.83-0.99,P=0.04),糖尿病関連死(RR 0.83,95%CI 0.73-0.96,P=0.01),全死亡(RR 0.87,95%CI 0.79-0.96,P=0.007),MI(RR 0.85,95%CI 0.74-0.97,P=0.01),細小血管疾患(RR 0.76,95%CI 0.64-0.89,P=0.001)のリスクが有意に低下した。脳卒中および末梢血管疾患のリスクに有意差は認められなかった。
metformin群では従来血糖コントロール群に比し,糖尿病関連エンドポイント(RR 0.79,95%CI 0.66-0.95,P=0.01),糖尿病関連死(RR 0.70,95%CI 0.53-0.92,P=0.01),全死亡(RR 0.73,95%CI 0.59-0.89,P=0.002),MI(RR 0.67,95%CI 0.51-0.89,P=0.005)のリスクが有意に低下した。脳卒中,末梢血管疾患,細小血管疾患のリスクに有意差は認められなかった。
●結論 UKPDS試験終了から10年後も,厳格血糖コントロールによる細小血管リスク低下は持続し,さらにMIおよび全死亡のリスク低下も認められた。過体重例におけるmetformin投与も持続したリスク低下を示した。