編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Duckworth W, Abraira C, Moritz T, Reda D, Emanuele N, Reaven PD, Zieve FJ, Marks J, Davis SN, Hayward R, et al.: Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes. N Engl J Med 2009; 360: 129-139. [PubMed]

本試験でも,ACCORD試験やADVANCE試験と同様に,2型糖尿病患者において厳格な血糖コントロールが必ずしも心血管イベントを減少させなかった。VADTではHbA1c値は 8.4~6.9%と,3つの試験の中ではもっとも高めのコントロールであったが,他の試験と同様に,厳格治療群で標準治療群に比べて,低血糖の頻度が高く,体重増加が大きかった。VADT試験は退役軍人を対象としているため,男性だけであり高齢であるという制限があるが,5~6年程度の厳格な血糖コントロールの心血管疾患に及ぼす低減効果には限りがある。
1型糖尿病患者で行われたDCCT試験では,厳格な血糖コントロールで必ずしも心血管イベントが減少しなかった。しかしながら,その追跡試験であるEDIC試験では,心血管イベントが遅れて減少することが示された。最近,2型糖尿病患者で行われたUKPDSの試験終了後,さらに10年間追跡した結果が報告された。それにおいても,試験時の厳格な血糖コントロールの心血管イベント低減効果が,後年になりよりはっきりみられるようになった。VADT試験やACCORD試験,ADVANCE試験でいえることは,心血管イベントを減少させるためには,糖尿病発症早期からの厳格な血糖コントロールが必要であるということであり,発症後10年以上経過したような症例では急激な血糖低下はむしろ有害かもしれないことが示唆され,慎重な治療が求められているといえるだろう。【片山茂裕

●目的 罹病期間の長い2型糖尿病患者において,厳格な血糖コントロール治療と標準治療の心血管イベントに対する効果を比較検討した。
一次アウトカムは複合心血管イベント(心筋梗塞,脳卒中,心血管死,うっ血性心不全の新規発症または悪化,心・脳血管・末梢血管疾患に対する外科的治療,手術不可能な冠動脈疾患,虚血性壊疽による切断)の初回発生。二次アウトカムは狭心症の新規発症または悪化,新規一過性虚血発作,新規間欠性跛行,新規下肢虚血,全死亡,細小血管障害(網膜症,腎症,神経障害)。
●デザイン 無作為,多施設,オープン,intention-to-treat解析。
●試験期間 登録期間は2000年12月1日~2003年5月30日。2008年5月30日追跡終了。追跡期間は5.6年(中央値)。
●対象患者 1791例:コントロール不良の2型糖尿病患者。平均60.4歳,平均罹病期間11.5年,平均HbA1c値<9.4%,心血管イベントの既往を有する例40%。
登録基準:最大投与量の経口薬またはインスリン治療下おけるコントロール不良。
除外基準:HbA1c値<7.5%,過去6ヵ月以内における心血管イベント,重度のうっ血性心不全,重度の狭心症,期待余命<7年,BMI>40kg/m²,血清クレアチニン値>1.6mg/dL,ALT値が正常上限の3倍を超えて上昇。
●方法 厳格治療群(892例),標準治療群(899例)にランダム化。
治療内容は,両群ともBMI≧27kg/m²の患者ではmetformin(ビグアナイド)とrosiglitazone(インスリン抵抗性改善薬)の併用,BMI<27kg/m²の患者ではglimepiride(スルホニル尿素薬)とrosiglitazoneの併用。薬剤の用量は,厳格治療群ではいずれも最大用量,標準治療群では最大用量の半分量を投与。インスリンの併用は,厳格治療群ではHbA1c値<6%,標準治療群ではHbA1c値<9%の場合に実施。
厳格治療群の目標HbA1c値は,標準治療群に比し1.5%の絶対低下。
心血管リスク因子に対する治療は両群とも同様に実施(全例にaspirinおよびスタチン系薬剤を投与)。
●結果 HbA1c値は両群ともに3ヵ月後には低下して6ヵ月後以降は安定していた(強化治療群6.9%,標準治療群8.4%)。
一次アウトカムの発生は強化治療群235例,標準治療群264例で,有意差は認めなかった(ハザード比[HR]0.88,95%CI 0.74-1.05,p=0.14)。心血管死(HR 1.32,95%CI 0.81-2.14,p=0.26)および全死亡(HR 1.07,95%CI 0.81-1.42,p=0.62)についても同様であった。細小血管障害の発生も両群で同等であった。
重度の低血糖イベントの発生は強化治療群で有意に多かった(24.1 vs 17.6%)。
●結論 罹病期間の長い2型糖尿病患者において,厳格な検討コントロール治療の主要心血管イベント,全死亡,細小血管障害に対する有効性は認められなかった。