編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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The ACCORD Study Group: Effects of Intensive Blood-Pressure Control in Type 2 Diabetes Mellitus. N Engl J Med. 2010; [PubMed]

すでに発表されたACCORD試験の血糖の厳格な管理は,標準治療に比べてむしろ心血管疾患を増加させ,重篤な低血糖との関連で大きな議論をよんだことは記憶に新しい。本論文は同試験の,降圧療法の結果である。
厳格血圧管理群は目標収縮期血圧120mmHg未満,標準血圧管理群は目標収縮期血圧140mmHg未満とされた。以前に発表されたデザインペーパーによると,厳格血圧管理群では収縮期血圧が120mmHg以上なら1ヶ月ごとに120mmHg未満になるまで降圧薬を追加することになっている。一方,標準血圧管理群では,収縮期血圧が130mmHg未満なら,あるいは135mmHg未満が2回続けば,降圧薬を1つ減らし,160mmHg以上が1回でもあれば,あるいは140mmHg以上が2回続けば,降圧薬を追加することになっている。降圧薬としては,ACE阻害薬,サイアザイド系利尿薬,β遮断薬,Ca拮抗薬,レゼルピン,α遮断薬の6種類が使用可能で,ACE阻害薬に忍容性がない場合のみARBが投与可能とされている。実際の降圧薬の使用は,1年経過した時点で厳格血圧管理群では平均3.4剤,標準血圧管理群では平均2.1剤であった。1年経過した時点での平均血圧は厳格血圧管理群で119.3/64.4mmHgまで低下し,標準血圧管理群では133.5/70.5mmHgであった。両群とも,その後はほぼ同量の降圧薬で同様の血圧レベルを維持していた。
収縮期血圧が130mmHg未満を達成した試験はこれまでにいくつかあるが,120mmHg未満を達成した始めての試験といえる。しかしながら,これほどの厳格な血圧管理を達成し,標準管理群と明らかな血圧の差異を生じながら,血管イベントへの有効性を示さなかったのは何故であろうか。4.7年の観察期間では不十分な可能性もあるが,いくつかの理由が考えられるだろう。第一に血糖の厳格な管理もされていることが挙げられる。実際,プラセボ群でのイベント発症率は期待値の50%と低かったという。そして,オープンラベル試験であることや,40歳未満の中年者や79歳以上の高齢者が含まれていないことなども問題であろう。
糖尿病患者の降圧目標値は130/80mmHgとされているが,本試験に基づけば,血圧を130代半ばから120mmHg未満に低下させても,それ以上のベネフィットはないかも知れない。ただ,血糖の厳格な管理とは異なり,血圧を120mmHg未満に低下させても,そう不都合なことが起こったわけではなさそうである。いずれにしても,本試験の結果は今後ガイドラインの改訂にあたり議論をよぶかもしれない。【片山茂裕

●目的 心血管(CV)イベントリスクの高い2型糖尿病患者において,SBPを正常値に低下させる強化療法のCVイベント減少効果を標準療法と比較検討した。
一次アウトカムは非致死性心筋梗塞(MI)+非致死性脳卒中+CV死。二次アウトカムは一次アウトカム+血行再建術またはうっ血性心不全による入院,致死性冠イベント+非致死性MI+不安定狭心症,非致死性MI,致死性または非致死性脳卒中,非致死性脳卒中,全死亡,CV死,心不全による入院または死亡。
●デザイン 無作為,多施設(米国およびカナダの77施設),2×2 factorial,intention-to-treat解析。
●試験期間 追跡期間は平均4.7年。登録期間は2001年1月~6月(491例)および2003年1月~2005年10月(4242例)。
●対象患者 4733例:2型糖尿病患者で,3剤未満の降圧薬使用下でSBP 130~180mmHg,24時間蛋白排泄率<1.0g相当の例。平均62.2歳,女性47.7%,平均SBP 139.2mmHg。
採用基準:HbA1c値≧7.5%,≧40歳(CV疾患を有する例)または≧55歳(動脈硬化,アルブミン尿,左室肥大の解剖学的特徴を有し,かつCVリスク因子[脂質異常症,高血圧,喫煙,肥満]を2つ以上有する例)。
除外基準:BMI>45kg/m²,血清クレアチニン値>1.5mg/dL,他の重篤な疾患。
●方法 強化療法群(2362例),標準療法群(2371例)にランダムに割付け。
目標SBP:強化療法群は<120mmHg,標準療法群は<140mmHg。
●結果 1年後の平均SBPは,強化療法群119.3mmHg,標準療法群133.5mmHgであった。
一次アウトカムの年間発生率は,強化療法群1.87%,標準療法群2.09%であった(ハザード比[HR]0.88,95%CI 0.73-1.06,p=0.20)。
全死亡は同等であったが(1.28 vs 1.19%,HR 1.07,95%CI 0.85-1.35,p=0.55),脳卒中は強化療法群で有意に少なかった(0.32 vs 0.53%,HR 0.59,95%CI 0.39-0.89,p=0.01)。
降圧治療による重篤な有害事象は,強化療法群で有意に多かった(3.3 vs 1.27%,p<0.001)。
●結論 CVイベントリスクの高い2型糖尿病患者において,SBP<120mmHgを目指す強化降圧療法により,主要なCVイベント減少効果は認められなかった。