編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Suissa S, Azoulay L, Dell'Aniello S, Evans M, Vora J, Pollak M: Long-term effects of insulin glargine on the risk of breast cancer. Diabetologia. 2011; 54: 2254-62. [PubMed]

インスリンglargineは,全世界で頻用されているインスリンであるが,インスリン様成長因子(IGF)受容体との親和性が高いため,発がんの危険性が高いのではと,発売時から危惧する声があった。
本研究は,英国の実地医家のデータベースにおいてglargineの乳がん発症リスクを検討した報告である。本報告では,インスリンをglargine使用前から長期間使用し,さらにglargineを5年以上使用した症例では,乳がんのリスクが著しく上昇することが指摘されている。
このglargineと発がんの関係については,さまざまな結果が報告されており,いまだ明確な結論が導き出されていない。したがって,今後,糖尿病診療において解決しなければならない命題であることは間違いない。この点に関して,数年ではなく少なくとも10年以上の長期間追跡することを前提とした無作為割り付け試験を,さまざまな人種を対象に計画・施行して,安全性を評価すべきである。【西村理明

●目的 女性2型糖尿病患者におけるインスリンglargineの長期使用と乳がんリスクの関連について検討した。
●デザイン 疫学,コホート,intent-to-treat解析。
●試験期間 -
●対象患者 15227例:インスリンglargine使用4579例,その他のインスリン使用10648例。
除外基準:妊娠糖尿病の診断または乳がんの既往。
●方法 UK's General Practice Research Database(GPRD)を使用し,2002年9月~2006年12月にインスリン治療を受けた40歳以上の女性2型糖尿病患者コホートを同定。乳がんの診断が出るまで,もしくは2009年末まで追跡した。
年齢および過去のインスリン使用時期と期間について,インスリンglargine使用例を他のインスリン使用例と対応させた後,インスリンglargine使用に関連する乳がんのハザード比をCox比例ハザードモデルで評価。すでに知られている乳がんのリスク因子で補正した。
●結果 最大追跡期間8年で,246例の乳がんが発症(発生率4.1例/1000例/年)。最初の5年間では,インスリンglargine使用は乳がんリスクの上昇と関連しなかった(ハザード比[HR]0.9,95%CI 0.7-1.3)。5年後以降はのリスクは上昇する傾向を示し(HR 1.8,95%CI 0.8-4.0),glargine使用の開始前にインスリンを使用していた女性では,有意にリスクが上昇した(HR 2.7,95%CI 1.1-6.5)。
●結論 女性2型糖尿病患者における乳がんリスクは,インスリンglargineを使用する最初の5年では上昇しないが,とくにインスリンglargineの使用開始前に長期間インスリンを使用していた女性では,長期的な使用がリスクを上昇させる可能性がある。