編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Fagot JP, Blotière PO, Ricordeau P, Weill A, Alla F, Allemand H: Does insulin glargine increase the risk of cancer compared with other basal insulins?: A French nationwide cohort study based on national administrative databases. Diabetes Care. 2013; 36: 294-301. [PubMed]

インスリン製剤glargineはヒトインスリン製剤と比較してインスリン様成長因子(IGF)受容体との親和性が高いことが指摘されており,結果として発癌のリスクを高めるのではないかとの懸念が発売時から存在していた。近年Diabetologia誌に掲載された,glargineが乳癌のリスクを増やす可能性があるというSuissaらの報告(後に統計的手法に問題があることを指摘された)が,糖尿病と癌,インスリンと癌との関係を明らかにするという多数のプロジェクト立ち上げのきっかけとなった。
本報告は,7万例の2型糖尿病患者を対象に,glargine,detemirを3年弱使用している症例において,発癌リスクを評価したものである。その結果,glargineは発癌のリスクを増大させないことが示された。
しかしながら,発癌のリスクは3年という短期間で十分に評価できるとは考えづらく,この問題の正確な解答を得るためには,より長期にわたる発癌に関する大規模な疫学研究が行われてから,最終的な評価を下すべきであろう。【西村理明

●目的 2型糖尿病患者において,インスリン製剤glargine投与は他の基礎インスリンと比べ,発癌リスク,とくに乳癌発症リスクと関連するかを検討。
一次エンドポイントは癌,乳癌(女性)。
●デザイン コホート。
●試験期間 追跡期間(中央値)は,インスリン製剤glargine投与例2.67年,インスリン製剤detemir投与例2.75年,basalヒトインスリン製剤(BHI)投与例2.83年。
●対象患者 70,027例: 2型糖尿病患者。
登録基準:40~79歳,2007~2009年に基礎インスリンを開始し,インスリンを使用した前年に3種類以上の他の血糖降下薬の処方をうけていること。
除外基準:癌の診断(2005年から試験登録前12ヵ月以内,または1987年以降のADL[affection de longue duree,保健医療大臣が定めた長期疾患]の記録からの同定)。
●方法 French Hospital Discharge databaseおよびFrench National Health Insurance information system(SNIIRAM)の2006年以降のデータを使用。
Anatomical Therapeutic Chemical(ATC)codeにて,2007~2009年に持続型/中間型インスリンの新規使用者(2006年に基礎インスリン/ボーラスインスリンの処方を受けていない)を同定し,インスリンglargine単独(47,432例),インスリンdetemir単独(12,506例),basalヒトインスリン(BHI)単独(4,564例),持続型/中間型インスリンを2種類以上連続投与(5,525例)に分類。Cox比例ハザード回帰モデルを用いて,基礎インスリンと癌発症リスクの関係を評価。
●結果 癌の発生はglargine投与で1,391例,glargine非投与で405例,BHI投与で191例。
発癌率は,glargine投与例1,622/100,000人年,glargine非投与例1643/100,000人年で,glargine投与による発癌のハザード比に有意な差はみられなかった(性別調整ハザード比0.97,0.87-1.07;性別,血糖降下薬の種類,および糖尿病罹病期間による調整ハザード比1.04,0.93-1.16)。同じく,detemir投与,BHI投与による発癌の有意なリスクはみられなかった。
乳癌発生率は,インスリンglargine投与例271/100,000人年,インスリンglargine非投与例264/100,000人年で,インスリンglargine投与による有意な乳癌発生リスクはみられなかった(性別調整ハザード比1.01,0.71-1.45;性別,血糖降下薬の種類,および糖尿病罹病期間による調整ハザード比1.08,0.72-1.62)。同じく,detemir投与,BHI投与による有意な乳癌発生リスクはみられなかった。
●結論 基礎インスリンをはじめて使用した2型糖尿病患者において,glargineは他の基礎インスリン製剤に比べ,発癌リスクを増加させなかった。