編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2018年3月現在,1155報収載!
全トライアルリスト
[HOMEに戻る]
Scirica BM, Bhatt DL, Braunwald E, Steg PG, Davidson J, Hirshberg B, Ohman P, Frederich R, Wiviott SD, Hoffman EB, et al.; the SAVOR-TIMI 53 Steering Committee and Investigators : Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus. N Engl J Med. 2013; 369: 1317-1326. [PubMed]

1970年のUGDP研究以来,経口血糖降下薬の心血管イベントに対する影響に注意が払われている。近年ではrosiglitazoneによる心筋梗塞の増加が懸念され,米国FDAは2型糖尿病の治療薬においては治験段階より心血管イベントを観察するよう求めている。現在のまでのところ,DPP-4阻害薬が心血管イベントを増加させるという報告はなく,一部に低下させるとの報告がある。
本研究で示された心不全に対する影響については,今後,注意して観察すべき事柄である。
本研究では膵臓に関するイベントには群間差はなかったが,インクレチン関連薬の膵臓に対する影響には,今後も引き続き注意すべき事柄であろう。
わが国で行われたスルホニル尿素類にDPP-4阻害薬を上乗せする治験では,スルホニル尿素類等の用法・用量を原則固定しているため,プラセボに比較してHbA1cは1%程度低下していた。本研究のようにDPP-4阻害薬以外の糖尿病治療薬を適宜変更すると,HbA1cのプラセボ群との差はわずかである。【景山 茂

●目的 心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者において,DPP-4阻害薬saxagliptinの有効性と安全性を検討した。
一次エンドポイントは心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中。二次エンドポイントは一次エンドポイント+心不全による入院,冠血行再建術,不安定狭心症。
●デザイン 無作為,多施設(26ヵ国,788施設),二重盲検,プラセボ対照,第Ⅳ相,ITT解析。
●試験期間 登録期間は2010年5月~2011年12月。追跡期間の中央値は2.1年(最長2.9年)。
●対象患者 16,492例:2型糖尿病患者で,HbA1c値6.5~12.0%,心血管疾患の既往,または複数の心血管リスクを有する者。平均65歳。
心血管疾患の採用基準:40歳以上,冠動脈・脳血管・末梢血管のアテローム性動脈硬化に関連した臨床的イベント。
心血管リスクの採用基準:55歳以上(男性)または60歳以上(女性)で,リスク(脂質異常症,高血圧,喫煙)を1つ以上有する者。
除外基準:6ヵ月以内のインクレチン関連薬の使用,末期腎不全,長期の透析,腎移植,血清クレアチニン値6.0mg/dL以上。
●方法 対象患者をsaxagliptin群(8,280例)とプラセボ群(8,212例)に1:1でランダムに割り付け。
saxagliptin群では,saxagliptin 5mg/日(推算糸球体濾過量[eGFR]≦50mL/分/1.73m3は2.5mg/日))を投与。
糖尿病治療および心血管疾患のp治療は担当医の判断に委ねた。他のDPP-4阻害薬とGLP-1アナログの使用は禁止した。
●結果 生存確認は99.1%の症例について得られ,28例については追跡できなかった。
2年後の空腹時血糖値およびHbA1c値は,プラセボ群に比べsaxagliptin群で有意に低下していた(いずれもP<0.001)。HbA1cはsaxagliptin群とプラセボ群において,2年後は7.5% vs 7.8%,試験終了時は7.7% vs 7.9%であった。とくにHbA1c値が7%以下の患者の割合は,プラセボ群(27.9%)よりもsaxagliptin群(36.2%)で多かった(P<0.001)。
一次エンドポイントの発生は,saxagliptin群613例(7.3%,3.7件/100・人年),プラセボ群609例(7.2%,3.7件/100・人年)で,プラセボに対するsaxagliptinの非劣性が示された(ハザード比[HR]1.00,95%信頼区間[CI]0.89-1.12,P=0.99,P<0.001 for noninferiority)。試験薬の服用中止から30日以内までのイベントを含むon-treat解析でも同様の結果であった。
二次エンドポイントの発生は,saxagliptin群1059例(12.8%,6.6件/100人・年),プラセボ群1034例(12.4%,6.5件/100人・年)で,群間差はなかった(HR 1.02,95%CI 0.94-1.11,P=0.66)。しかし,心不全の入院は,saxagliptin群(289例[3.5%])のほうがプラセボ群(228例[2.8%])よりも有意に多かった(HR 1.27,95%CI 1.07-1.51,P<0.001)。
安全性については,低血糖イベントはsaxagliptin群(1264例[15.3%])のほうがプラセボ群(プラセボ群1104例[13.4%]よりも多かったが(P<0.001),急性膵炎はsaxagliptin群0.3%,プラセボ群0.2%,慢性膵炎はsaxagliptin群0.1%,プラセボ群0.1%で両群において類似していた。膵癌はsaxagliptin群5例,プラセボ群2例(P=0.0095)であった。
●結論 DPP-4阻害薬saxagliptinは,心不全の入院を増加させたものの,虚血性イベントの増減には影響しなかった。saxagliptinは血糖コントロールを改善するが,糖尿病患者の心血管リスクを低減するためには他のアプローチも必要である。