編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Fried LF, Emanuele N, Zhang JH, Brophy M, Conner TA, Duckworth W, Leehey DJ, McCullough PA, O'Connor T, Palevsky PM, et al.; VA NEPHRON-D Investigators : Combined Angiotensin inhibition for the treatment of diabetic nephropathy. N Engl J Med. 2013; 369: 1892-903. [PubMed]

ACE阻害薬とARBを併用したONTARGET試験や,ARBと直接的レニン阻害薬aliskirenを併用したALTITUDE試験では,両薬剤を併用しても,有害事象の増加を上回るベネフィットは得られなかった。losartanの単独療法とlosartan+ACE阻害薬lisinoprilの併用療法を比較した今回のVA NEPHRON-D studyでも,併用療法の有用性は証明できなかった。すなわち,一次エンドポイントでは有意な群間差は認められず,二次エンドポイントは6~12ヵ月後に併用群で有用な傾向が認められたが,最終的にはその差は消失した。そして何よりも,併用療法により急性腎障害のHR が1.7倍に,高カリウム血症のHRが2.8倍となった。ただし,尿アルブミン・クレアチニン比は併用群で786から517 mg/g Creに,単独群では829から701 mg/g Creに減少し,その低下度は併用群で大きかった。このことは,尿アルブミン・クレアチニン比は腎のハードエンドポイントのサロゲートマーカー (代替エンドポイント)にはならないことを示唆しているのかもしれない。また,二次エンドポイントがいったん改善傾向を示したことは,検出パワー不足を示唆しているのかもしれず,さらに長期の大規模試験が必要な可能性がある。【片山茂裕

●目的 蛋白尿を伴う糖尿病腎症を有する2型糖尿病患者において,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬lisinopril+アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)losartan併用療法と,losartan単独との安全性と有効性を比較した。
一次エンドポイントは,推算糸球体濾過量(eGFR)低下(eGFR≧60ml/分/1.73m2の患者:≧30ml/分/1.73m2の低下,eGFR<60ml/分/1.73m2の患者:≧50%の低下)+末期腎不全(ESRD)+全死亡の複合。二次エンドポイントは,eGFR低下+ESRDの複合。安全性のエンドポイントは,全死亡,重篤な有害事象,高カリウム血症,急性腎障害。
●デザイン 無作為,二重盲検,多施設(退役軍人病院32施設),intention-to-treat解析。
●試験期間 割付け期間は2008年7月~2012年9月。
データ安全性モニタリング委員会の勧告により,2012年10月に試験中止。
追跡期間中央値は2.2年。
●対象患者 1,448例:2型糖尿病の退役軍人,eGFR 30.0~89.9mL/1.73m2,尿中アルブミン・クレアチニン比≧300。
除外基準:既知の非糖尿病腎症,血清カリウム値>5.5mmol/L,硫酸ポリスチレン・ナトリウム治療下,高カリウム血症のリスクがある処方薬が中止できない患者。
●方法 ARB losartan 100mg/日(開始用量50mg/日)の30日間投与によるrun-in期間後,施設,eGFR(<60ml/分/1.73m2または≧60ml/分/1.73m2),蛋白尿(アルブミン・クレアチニン比≦100または>100,あるいは蛋白/クレアチニン比≦1.5または>1.5),およびACE阻害薬+ARB併用使用の有無により患者を層別化し,併用群(lisinopril+losartan,724例)と単独群(プラセボ+losartan,724例)に1:1にランダム化。
lisinoprilは,初回用量10mg/日から開始し,2週間ごとに20~40mg/日に漸増。増量して10~14日目に,カリウム値が5.5mmol/L未満であること,クレアチニン値が割付け時の値から30%超の上昇を認めていないかを確認。RAAS阻害薬を使用している場合は中止。
●結果 一次エンドポイントの発生は,併用群132例(9.5件/100人・年),単独群152例(10.8件/100人・年)と有意な群間差は認められなかった(ハザード比[HR]0.88,95%信頼区間0.70-1.12,p=0.30)。二次エンドポイントの発生は,併用群77例(5.5件/100人・年),単独群101例(7.2件/100人・年)(HR 0.78,0.58-1.05,p=0.10)で,6~12ヵ月後に併用群で有用な傾向がみられたが,その効果は持続しなかった(nonproportionality test P=0.02)。
ESRD(27例vs. 43例,HR 0.66,0.41-1.07,p=0.07),全死亡(63例vs. 60例,HR 1.04,0.73-1.49,p=0.75),心筋梗塞+心不全+脳卒中の複合(134例vs. 136例,HR 0.97,0.76-1.23,p=0.79)のいずれも有意な群間差を認めなかった。
重篤な有害事象の発生は単独群よりも併用群で多い傾向がみられ(416例[98件/100人・年]vs. 380例[82件/100人・年],p=0.06),もっとも多い事象は急性腎障害であった(130例[190件],80例[105件],HR 1.7,1.3-2.2,p<0.001)。また,高カリウム血症は併用群で単独群の2倍以上の発生となった(72例[6.3件/100人・年] vs. 32例[2.6件/100人・年],HR 2.8,1.8-4.3,p<0.001)。
●結論 蛋白尿を伴う糖尿病腎症を有する2型糖尿病患者において,ACE阻害薬+ARBの併用は,ARB単独に比べ,有害事象発症リスクを増加させた。