編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Virtanen M, Ferrie JE, Tabak AG, Akbaraly TN, Vahtera J, Singh-Manoux A, Kivimäki M: Psychological distress and incidence of type 2 diabetes in high-risk and low-risk populations: the Whitehall II Cohort Study. Diabetes Care. 2014; 37: 2091-7. [PubMed]

前糖尿病から糖尿病への発症予防には,生活習慣改善や薬物療法が有用であることがいくつかの試験から報告されている。ストレスが強いと糖尿病発症のリスクが高まるとの日本人労働者での小規模な報告はあるが,うつ症状やストレス,不安,不眠などの身体症状と糖尿病の関連は,大規模なコホートではあまり検討されていない。
今回の結果は,うつ症状が高い集団は糖尿病進展の高リスク群であることを明らかにした。その機序は不明であるが,視床下部-下垂体-副腎系を介したコルチゾールの過剰や免疫系の影響による炎症反応の亢進などが考えられるが,今後の検討が必要である。いずれにしても,うつ症状が強い集団では,生活習慣の改善に加えて,精神状態へのケアが重要となるであろう。【片山茂裕

●目的 うつ症状と2型糖尿病発症との関連を検討し,その関連は前糖尿病の有無およびFramingham Offspring 2型糖尿病リスクスコア(FRS)保有状況により異なるかどうかを検討した。
●デザイン プロスペクティブ,コホート(英国)。
●試験期間 登録期間は1985~1988年。試験期間は1991~2009年,3つのサイクルに分けて実施(ベースライン1991~1993年,1997~1999年,2002~2004年)。各サイクルの追跡期間は平均5.46年。
●対象患者 5,932例(13,207人・観察期間):各サイクルのベースラインに糖尿病を認めないロンドンの公務員。35~55歳。男性71.6%。白人93.3%。
●方法 ベースラインのうつ症状と2型糖尿病発症との関連を検討するため,3つのサイクルにおけるデータを調和させ,ベースラインの前糖尿病の有無,FRSの値,およびうつ症状の有無により以下8つにグループ分けして解析した。
(a)正常血糖値+FRS 0~9+うつ症状なし,(b)正常血糖値+FRS 0~9+うつ症状,(c)正常血糖値+FRS 10~19+うつ症状なし,(d)正常血糖値+FRS 10~19+うつ症状,(e)前糖尿病+FRS 10~19+うつ症状なし,(f)前糖尿病+FRS 10~19+うつ症状,(g)前糖尿病+FRS>19+うつ症状なし,(h)前糖尿病+FRS>19+うつ症状。
うつ症状の発症は30項目の一般健康調査質問票(30-item General Health Questionnaire: GHQ-30)により評価。一般化推定方程式を用いて,推定オッズ比(OR)および95%信頼区間を求めた。年齢,性別,社会経済的地位,民族,抗うつ薬の使用,喫煙,身体活動により調整。
●結果 正常血糖値の人([b] vs. [a],[d] vs [c] ),および前糖尿病かつFRS低値の人([f] vs. [e])において,うつ症状で非うつ症状に対する2型糖尿病発症のORはそれぞれ1.20(95%信頼区間0.84-1.71),1.27(0.75-2.15),1.09(0.72-0.64)といずれも有意な差を認めず,うつ症状と2型糖尿病発症との関連は認められなかった。上記患者における2型糖尿病の発症率は1.6~15.6%であった。
前糖尿病でFRS高値の人([h] vs. [g])における,うつ症状の非うつ症状に対する2型糖尿病発症のORは2.07(1.19-3.62)と有意な差を認めた。また,うつ症状を伴う人の2型糖尿病発症率は40.9%(h),非うつ症状では28.5%(g)であった。
●結論 前糖尿病でFRS高値の人では,うつ症状により糖尿病発症への進展が加速される可能性が示された。