編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Ng TP, Feng L, Yap KB, Lee TS, Tan CH, Winblad B: Long-term metformin usage and cognitive function among older adults with diabetes. J Alzheimers Dis. 2014; 41: 61-8. [PubMed]

metforminに認知症の発症予防効果があるか否かを,シンガポールの55歳以上の糖尿病患者365例で検討した報告である。その結果,metformin使用は認知症の発症リスクを約半分に低下させること,metforminの使用期間が長いほどそのリスク低減効果はより顕著になることが示された。その効果は,アルツハイマー病との関連が指摘されている遺伝子多形の有無とは関係していなかったことも報告されている。
本報告は比較的小さな集団で検討されているため,今後,大規模な集団で検討され同様の結果が報告されれば,metforminの糖尿病治療における第一選択薬としての立場はさらに確固たるものになるであろう。【西村理明

●目的 糖尿病の高齢患者において,metformin投与が認知症発症リスクにおよぼす影響,さらにアルツハイマー病に関連するAPOE-ɛ4遺伝子多型によりその影響に差がみられるかを検討した。
●デザイン 縦断研究,横断研究。
●試験期間 追跡期間は平均3.9年。
●対象患者 365例:シンガポールの高齢(55歳以上)の糖尿病患者。平均67歳,女性59%。
登録基準:糖尿病治療薬使用歴または空腹時血糖値≧7 mmol/L(126mg/dL)。
除外基準:身体的/精神的障害により試験参加できない者,rosiglitazone使用,インスリン使用,空腹時血糖値・糖尿病罹病期間・Geriatric Depression Scale scoreのデータがない者。
●方法 対象をmetformin使用例(204例),非使用例(161例)に分類し,metformin使用と認知症発症との関連について解析した。併せて,metforminの使用期間(0年,6年以下,6年超)別の検討も行った。
オッズ比(OR)は,年齢,性別,教育,ベースラインでのうつ症状,高血圧,心血管病/脳卒中,腎機能低下(推定糸球体濾過量<60 mL/分/1.73m2),他の併存疾患,他の糖尿病治療薬の使用,APOE-ɛ4遺伝子多型,空腹時血糖値,BMI,追跡期間(縦断解析のみ),糖尿病罹病期間による調整を行った。
●結果 横断解析では,metformin使用は認知症の発症と負の関連の傾向を示し(OR 0.50,95%信頼区間[CI] 0.24-1.05,p=0.07),使用期間が6年超の患者では,非使用例にくらべ,認知症発症リスクがさらに低くなった(OR 0.30,95%CI 0.11-0.80,p=0.016)。
縦断解析でも,metformin使用の,非使用に比した認知症発症のORは0.49(95%CI 0.25-0.95,p=0.033)と有意に低く,使用期間が6年超における認知症発症リスクはさらに低かった(OR 0.27,95%CI 0.12-0.60,p<0.001)。
metforminの使用期間(0年,0~6年,6年超)と認知症発症リスクは,縦断解析(p=0.018),横断解析(p=0.002)ともに,線形の有意な負の関連を示した。
metformin使用とAPOE-ɛ4遺伝子多型,うつ症状,または空腹時血糖値との相互作用は,認知症発症に影響していなかった。
●結論 55歳以上の糖尿病患者において,metforminの長期使用は認知症発症リスクを提言させる可能性が示された。metformin使用とAPOE-ɛ4遺伝子多型,うつ症状,または空腹時血糖値の相互作用によると思われる認知症発症リスクへの影響は認められなかった。