編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Berkowitz SA, Krumme AA, Avorn J, Brennan T, Matlin OS, Spettell CM, Pezalla EJ, Brill G, Shrank WH, Choudhry NK: Initial choice of oral glucose-lowering medication for diabetes mellitus: a patient-centered comparative effectiveness study. JAMA Intern Med. 2014; 174: 1955-62. [PubMed]

2型糖尿病患者1万5千例のデータベースにおいて,第一選択薬としてmetformin,SU薬,DPP-4阻害薬,チアゾリジン薬のいずれかを用いた場合,他の薬剤を追加する可能性に薬剤間で差があるのか,さらには,心血管イベントや低血糖のリスクに差があるかを検討したコホート研究である。
その結果,metforminで治療を開始した群では,それ以外の薬物で治療を開始した群より,有意に他の薬剤を追加する可能性が低いことが示された。本研究は新たな視点から,metforminの有用性を示したことになる。
しかしながら,心血管イベントや低血糖のリスクに関しては,SU薬で低血糖のリスクが上昇した以外は,明らかな差を認めなかった。これは,平均追跡期間が1年前後と短いことによる可能性がある。長期的な成績についての追加報告が待たれる。【西村理明

●目的 経口血糖降下薬の第一選択薬の種類が,その後に必要とされる治療強化時に与える影響を比較した。また,短期間に発生した有害な臨床イベントに与える影響についての比較も行った。
一次エンドポイントは治療強化(他の種類の血糖降下薬またはインスリンの使用開始)までの時間。
二次エンドポイントは心血管イベント(冠動脈性心疾患+うっ血性心不全+不安定狭心症+脳梗塞+急性心筋梗塞+血行再建術の施行の複合),うっ血性心不全,低血糖症による救急科への来院/入院。
●デザイン 後向きコホート研究。
●試験期間 追跡期間(中央値)は,metformin群388日,スルホニル尿素薬(SU薬)群382日,ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬群376日,チアゾリジン薬群429日(p<0.001)。
●対象患者 15,516例:血糖降下薬(metformin,SU薬,チアゾリジン薬,DPP-4阻害薬)治療を新規(過去180日以内に投与していない)に開始した患者。
除外基準:血糖降下薬のうち,meglitinide,α-グルコシダーゼ阻害薬,GLP-1アゴニストによる治療を開始した者。異なる2剤を同時に服用した者(併用療法など),第一選択薬投与開始から短期間のうちに第二選択薬を開始した者。
●方法 米医療保険会社エトナのデータベース(被保険者からの医療費・処方請求データ)より,2009年7月1日~2013年6月30日の間に経口血糖降下薬を新規に処方された患者データを使用。
第一選択薬の種類によって,対象を以下4群にわけて解析した。
metformin群8,964例(57.8%),SU薬群3,570例(23.0%),DPP-4阻害薬群2,034人(13.1%),チアゾリジン薬群948例(6.1%)。
Cox比例ハザードモデルは,年齢,性別,処方薬の患者負担金,ICD-9コードの特定疾患(慢性腎臓病,冠動脈性心疾患,脳梗塞,うっ血性心不全,慢性閉塞性肺疾患または喘息,うつ症状,高血圧,心房細動),服用薬剤の数,入院回数,医師による診察回数により調整。
●結果 強化治療(第二選択の経口薬)を必要とした患者の割合は,metformin群24.5%,DPP-4阻害薬群36.2%,SU薬群37.1%,チアゾリジン薬群39.6%であった(p<0.001)。
多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いた解析では,治療強化(第二選択の経口薬またはインスリン追加投与)が必要となるハザード比(HR)は,metformin群にくらべ,SU薬群1.68(95%信頼区間1.57-1.79),チアゾリジン薬群1.61(1.43-1.80),DPP-4阻害薬群1.62(1.47-1.79)と,いずれも有意なリスク増加を認めた。また,第二選択の経口薬のみを必要とした場合およびインスリンのみを必要とした場合についても,同様の結果となった。
低血糖による救急科への来院リスクは,metformin群にくらべ,SU薬群でHR 1.23(1.04-1.46)と有意な増加がみられたが,DPP-4阻害薬群(HR 1.04,0.79-1.36),チアゾリジン薬群(HR 1.24,0.91-1.70)では有意な差はみられなかった。複合心血管イベント発生のHRはそれぞれ1.16(1.04-1.29),0.99(0.85-1.16),1.05(0.87-1.27),うっ血性心不全のHRはそれぞれ1.19(1.10-1.28),1.13(1.00-1.28),1.08(0.93-1.26)であり,metformin以外の薬物投与によるリスク減少は認められなかった。
●結論 血糖降下薬の第一選択薬をmetforminにすると,その後の強化治療の必要性が減少したが,低血糖症またはその他の有害な臨床イベントの発生に差はみられなかった。