編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Scirica BM, Braunwald E, Raz I, Cavender MA, Morrow DA, Jarolim P, Udell JA, Mosenzon O, Im K, Umez-Eronini AA, et al.; SAVOR-TIMI 53 Steering Committee and Investigators* : Heart failure, saxagliptin, and diabetes mellitus: observations from the SAVOR-TIMI 53 randomized trial. Circulation. 2014; 130: 1579-88. [PubMed]

SAVOR-TIMI 53の事後解析である。心血管疾患の既往歴あるいは複数の心血管のリスクを有する2型糖尿病患者にDPP-4阻害薬のsaxagliptinかプラセボを投与したSAVOR-TIMI 53では,複合一次エンドポイント(心血管死+心筋梗塞+脳梗塞)には有意な差を認めなかったが,二次エンドポイント(事前設定)の心不全による入院がsaxgliptin群で27%増加していた。今回の解析で,心不全による入院リスクの増加は投与開始12ヵ月後くらいまでにみられること,とくにNT-proBNP高値・心不全既往・慢性腎疾患の患者で顕著であることが示された。心不全発症の高リスク群が特定されたことの臨床的意義は大きいといえる。ただ,体液の貯留や体重増加などはみられず,NT-ProBNP(BNPはDPP-4の基質であり,DPP-4阻害薬の投与で増加する)の増加やトロポニン T,高感度CRPの増加などもみられておらず,本薬による心不全発症の機序は必ずしも明らかでない。米国の糖尿病患者2,580万人の1/4が本薬を服用したと仮定すると,次の2年間でさらに45,150人の心不全患者が出現することとなり,ことは重大である。今後の結果が明らかになるのを待ちたい。【片山茂裕

●目的 心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者において,心不全による入院の危険因子について検討した。また,心不全による入院とDDP-4阻害薬saxagliptin治療,ベースラインのナトリウム利尿ペプチド値(NT-proBNP),および心不全既往との関連について検討した。SAVOR-TIMI 53の事後観察研究。
SAVOR-TIMI 53の一次エンドポイントは心血管死+心筋梗塞+脳梗塞の複合,二次エンドポイント(事前設定)は心不全による入院。
●デザイン 観察研究(元試験は,無作為化比較試験SAVOR-TIMI 53)。
元試験は,無作為,二重盲検,多施設(26ヵ国,788施設),プラセボ対照,intention-to-treat解析。
●試験期間 元試験のランダム化期間は2010年5月~2011年12月。追跡期間(中央値)は2.1年。
●対象患者 16,492例:2型糖尿病患者。
心不全による入院歴あり517例,心不全による入院歴なし15,975例,年齢中央値はそれぞれ68.0歳,65.0歳,男性は72.9%,66.7%,BMI(中央値)は31.5 kg/m2,30.4 kg/m2
元試験の登録基準:無作為化前6ヵ月以内のHbA1c 6.5~<12.0%,心血管疾患の既往または血管疾患リスクを複数有する者。
●方法 元試験ではsaxagliptin群(5mg/日[eGFR≦50 mL/分の患者の場合は,2.5 mg/日]),プラセボ群にランダム割付け。
本観察研究では,心不全による入院に関連する危険因子を検討するため,元試験の追跡期間中に心不全により入院した患者(517例)と,心不全による入院なしの患者(15,975)にわけて解析を行った。
●結果 心不全による入院を治療群で比較すると,saxagliptin群289例(3.5%),プラセボ群228例(2.8%)と有意な群間差が認められた(ハザード比[HR] 1.27,95%信頼区間1.07-1.51,p=0.007)。
全例を対象とした多変量調整解析において,心不全による入院ともっとも強く関連した因子は,心不全の既往(調整ハザード比[HR]4.18,95%信頼区間3.48-5.02,p<0.01),eGFR≦60mL/分(HR 2.0,1.65-2.42,p<0.01),アルブミン・クレアチニン比>300 mg/gではHR 3.66,2.90-4.62,p<0.01, 30~300 mg/gではHR 1.89,1.54-2.34,p<0.01)であった。
ベースラインのNT-proBNP値を測定した12,301例の検討では,心不全による入院リスクが著しく高かったのは,NT-proBNP値の四分位のもっとも高い値(333~46,627 pg/mL)の患者であった(HR 5.51,4.24-7.16,p<0.001)。また,NT-proBNP値,saxagliptin治療,および心不全による入院との間に異質性は認められなかったが(p for interaction 0.46),saxagliptin治療による心不全の絶対リスクはNT-proBNP値の四分位のもっとも高い値のグループでもっとも著しかった(絶対リスク2.1%,HR 1.31,1.04-1.66,p=0.02)。
元試験の一次エンドポイントと二次エンドポイントについて,saxgliptin群とプラセボ群に有意な群間差を認めず,心不全による入院のリスクが高い患者においても有意な差を認めなかった。
●結論 DPP-4阻害薬saxagliptinは心不全による入院リスクを増加させ,特にNT-proBNP高値,心不全既往,慢性腎疾患の患者で顕著であった。