編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Khunti K, Davies M, Majeed A, Thorsted BL, Wolden ML, Paul SK: Hypoglycemia and risk of cardiovascular disease and all-cause mortality in insulin-treated people with type 1 and type 2 diabetes: a cohort study. Diabetes Care. 2015; 38: 316-22. [PubMed]

2型糖尿病患者においてはACCORD試験などですでに示されていたが,今回の検討から1型糖尿病患者においても,低血糖が心血管イベントおよび総死亡率を高めることが示された。低血糖が心血管イベントを増加させる機序として,QT延長,カテコラミン分泌過剰による血流動態の変動,炎症惹起,血管内皮機能異常,などが推定されている。今回の研究では,低血糖発症はおもに症状による患者申告によって把握されているが,実際には,1型糖尿病患者では無症状の低血糖がより多く発症していた可能性も否定できない。とくに1型糖尿病患者では,罹病期間が長くなるにつれて,平均HbA1cが7%以上であれば心血管イベントおよび総死亡率が高まることも認められている。
この研究が行われた時期とは異なり,この数年間は優れたインスリンアナログが広く用いられるようになり,1型糖尿病患者においてもより緻密な血糖コントロールが可能となってきた。長期にわたって低血糖を起こさない,かつ食後高血糖を惹起しないインスリン療法を実効することのみが,インスリンを使用する糖尿病患者においても心血管イベントの発症を防止する,ととらえて日常診療に励みたい。【河盛隆造

●目的 インスリン治療を行っている1型および2型糖尿病患者において,低血糖,心血管(CV)イベント,全死亡の関連を検討した。
●デザイン レトロスペクティブ,コホート。
●試験期間 2010年12月31日追跡終了。追跡期間(中央値)は,1型糖尿病患者5.0年,2型糖尿病患者4.8年。
●対象患者 13,682例:1型糖尿病患者3,260例(60±15歳),2型糖尿病患者10,422例(63±13歳)。
●方法 臨床診療研究データリンクデータベースを用いて,2001年1月1日~2007年12月31日のインスリン治療を行っている≧30歳の糖尿病患者を抽出。
年齢,性別,喫煙状況,地域,CVイベントの既往,経口血糖降下薬の使用,Charlson comorbidity index,BMI,HBA1cを調整後,Cox回帰モデルにより低血糖に関連するCVイベント(心筋梗塞+脳卒中+CV死)と全死亡のリスクを評価した。
●結果 CV疾患(CVD)既往がない患者で低血糖を認めた場合のCVイベントの調整ハザード比(HR)は,1型糖尿病患者1.92(95%CI 1.52-2.47),2型糖尿病患者1.50(1.19-1.88)であった。2型糖尿病患者では,CVD既往がある場合も,低血糖によりCVイベントリスクが上昇した(1.70,1.09-2.64)。
低血糖による全死亡リスクの調整HRは,CVD既往がある場合は,1型糖尿病患者1.95(1.14-3.35),2型糖尿病患者1.94(1.52-2.47)で,CVD既往がない場合は,1型糖尿病患者2.05(1.69-2.49),2型糖尿病患者2.39(2.13-2.67)であった。
初回低血糖エピソードから初回CVDイベントまでの期間(中央値)は,1型糖尿病患者1.5年,2型糖尿病患者1.5年で,初回低血糖エピソードから死亡までの期間(中央値)は,1型糖尿病患者1.1年,2型糖尿病患者0.8年であった。
●結論 インスリン治療を行っている糖尿病患者において,低血糖はCVイベントと全死亡のリスクを上昇させた。