編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Lipska KJ, Ross JS, Miao Y, Shah ND, Lee SJ, Steinman MA: Potential overtreatment of diabetes mellitus in older adults with tight glycemic control. JAMA Intern Med. 2015; 175: 356-62. [PubMed]

本研究結果から「高齢の糖尿病患者のかなりの割合が過剰治療を受けていた可能性が示唆された」としているが,そこまで推定することは無理があろう。SU薬やインスリン療法を受けている患者で“低血糖が多発していた可能性”は,本研究では調査されていないことから,単なる推測にすぎない。さらに,本結果に基づいて,高齢者においてHbA1cを7%以上にすることが推奨されると,認知症など他の合併症が増えることが懸念される。したがって,深夜や食間の潜在性低血糖を惹起せず良好な血糖応答を維持するよう,医師が努力することが望まれる。【河盛隆造

●目的 高齢の糖尿病患者において,血糖管理レベルの値を健康状態別に調査し,糖尿病の潜在的過剰治療率を評価した。
●デザイン 横断研究(国民健康栄養調査[NHANES]データ)。
●試験期間 試験期間は10年(2001~2010年)。
●対象患者 1,288例:NHANES登録例のうち,65歳以上の糖尿病患者でHbA1c測定データを有する者。平均73.2歳,男性45.0%,BMI 30.9。
●方法 全例を3つの健康状態(重症合併症/機能障害[透析,または日常生活動作能力での障害が2つ以上]を有する例,複合医療歴/中等度の健康状態[慢性疾患が3つ以上,または手段的日常生活動作能力の障害が2つ以上]の例,比較的健康[上記障害なし]な例)に分けて,血糖管理の状況(HbA1c<7%,7~8.9%,≧9%)および治療状況を調査した。
●結果 重症合併症/機能障害を有する例は21.2%(95%信頼区間18.3-24.4),複合医療歴/中等度の健康状態の例は28.1%(24.8-31.5),比較的健康な例は50.7%(46.6-54.8)であった。
HbA1c<7.0%の割合は,比較的健康な者では62.8%(95%信頼区間56.9-68.3),複合医療歴/中等度の健康状態の例では63.0%(57.0-68.6),重症合併症/機能障害を有する例では56.4%(49.7-62.9)であり,3つの健康状態カテゴリーによる差は認められなかった(p=0.26)。また,HbA1c<7.0%でインスリン/スルホニル尿素薬の治療を受けていた例のうち,比較的健康な例は50.8%(95%信頼区間45.1-56.5),複合医療歴/中等度の健康状態の者は58.7%(49.4-67.5),重症合併症/機能障害を有する例は60.0%(51.4-68.1)であり,3つの健康状態カテゴリーによる差は認められなかった(p=0.14)。
試験期間10年にわたり,HbA1c<7%の例の割合(p=0.34),HbA1c<7%で複合医療歴/中等度の健康状態または重症合併症/機能障害を有する例の割合(p=0.27),HbA1c<7%で複合医療歴/中等度の健康状態または重症合併症/機能障害かつインスリン/スルホニル尿素薬の治療を受けた者の割合(p=0.65)のいずれも,有意な変化は認められなかった。
●結論 複合医療歴/中等度の健康状態または重症合併症/機能障害を有する高齢患者においては,強化血糖治療による害はベネフィットを上回るにも関わらず,2001~2010年にはこれらの患者のほとんどが厳格な血糖目標値に到達していた。これらの患者のほとんどがインスリンまたはスルホニル尿素薬による治療を受けており,重症低血糖症を導いた可能性がある。本結果より,高齢の糖尿病患者のかなりの割合が過剰治療を受けていた可能性が示唆された。