編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2017年9月現在,1114報収載!
全トライアルリスト
[HOMEに戻る]
Udell JA, Cavender MA, Bhatt DL, Chatterjee S, Farkouh ME, Scirica BM: Glucose-lowering drugs or strategies and cardiovascular outcomes in patients with or at risk for type 2 diabetes: a meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015; 3: 356-66. [PubMed]

本研究は2型糖尿病患者もしくはそのハイリスク例において,さまざまな糖尿病治療薬の心不全発症リスクを,メタ解析にて検討した報告である。とくに,昨今DPP-4阻害薬の心不全発症リスクに注目が集まっていることもあり,タイムリーな視点からの報告である。
その結果,最も心不全発症リスクを上昇させるのはチアゾリジン薬,その次がDPP-4阻害薬であることが示された。一方,インスリン,SU薬ではリスク上昇を認めなかった。このような視点からのメタ解析はいまだ少なく,SGLT2阻害薬などを含めた追加解析が待たれる。
チアゾリジン薬により心不全が増加する機序についてはほぼ明らかにされているが,DPP-4阻害薬については現在のところ不明であり,そのリスク上昇の程度もDPP-4阻害薬により異なり一定ではない。2015年の米国糖尿病学会で報告されたTECOS試験では,心不全とDPP-4阻害薬の関連は全くみられなかったことが報告された。DPP-4阻害薬と心不全の関連については,さらなるエビデンスの蓄積を待ちつつ,その詳細な機序についても検討を重ねていく必要があるだろう。【西村理明

●目的 2型糖尿病患者,または2型糖尿病発症リスクを有する患者において,さまざまな薬剤/治療戦略による血糖降下療法は心不全発症リスクを増加させるか検討し,さらにそのリスクは血糖/体重コントロールと関連するかを検討した。
一次エンドポイントは心不全。
二次エンドポイントは主要有害心血管イベント(心血管死+心筋梗塞+脳卒中の複合,心血管死+心筋梗塞+脳梗塞の複合,全死亡+心筋梗塞+脳卒中の複合,または致死性/非致死性心筋梗塞など)。
●デザイン システマティックレビュー,メタアナリシス。
●試験期間
●対象患者 2型糖尿病患者を対象に,さまざまな血糖降下薬/治療戦略とプラセボ/標準治療による心血管アウトカムを比較したランダム化試験14件(チアゾリジン薬6件,DDP-4阻害薬2件,インスリングラルギン1件,強化血糖コントロール4件,強化減量介入1件)。全対象患者は95,502例。
試験の採用基準:成人(19歳以上)を対象としたランダム化比較試験,2型糖尿病/前糖尿病患者1,000例以上を登録,1つの危険因子(血糖,体重など)に関して血糖降下薬/治療戦略またはプラセボ/標準治療にランダム割付けしている試験,治療群間で血糖コントロールの改善が得られている試験。
試験の除外基準:1,000例未満を対象としている試験,急性心血管イベント(急性心筋梗塞,脳卒中,心不全による入院)の患者を対象としている試験,複数の危険因子を考慮した介入または血糖降下薬以外の効果を検討,治療群間のHbA1cの平均差が0.1%以内の試験。
●方法 Ovid MedlineおよびCochrane Libraryより検索した(2015年2月20日まで)。
各試験で報告されたエンドポイントのハザード比またはリスク比(RR)を統合し,報告されていない場合は各治療群のイベント数から統合RRおよび95%信頼区間を算出した。
●結果 血糖降下薬/治療戦略により,HbA1cが0.5%低下し,体重が1.7 kg増加した。
一次エンドポイントである心不全発症リスクは(14試験),標準治療(1,827件)にくらべ,血糖降下薬/治療戦略(2,080件)で有意に増加したが(RR 1.14,95%信頼区間1.01-1.30,p=0.041),この効果には血糖降下薬/治療の種類によりバラツキがみられた(I2=71%,相互作用のp=0.00021)。
血糖降下薬の種類で比較すると,心不全発症リスクがもっとも高いのはチアゾリジン薬(6試験)(RR 1.42,95%信頼区間1.15-1.76,p=0.001),その次に高いのはDPP-4阻害薬(2試験)(RR 1.25,1.08-1.45,p=0.0033)であり,インスリングラルギンは中立であった(1試験)(0.90,0.77-1.05,p=0.18)。血糖降下を目標とした強化血糖コントロール(4試験)(RR 1.00,0.88-1.13,p=0.99)および強化減量介入(1試験)(RR 0.80,0.62-1.04,p=0.10)では,心不全発症リスクとの関連を認めなかった。
主要有害心血管イベント発生リスクは,標準治療にくらべ,血糖降下薬/治療戦略で有意に減少したが(RR 0.95,0.91-0.99,p=0.014),この効果は,心筋梗塞のリスク減少が著しいことが一因となっていた(RR 0.92,0.86-0.99,p=0.017)。
メタ回帰モデルによる解析では,心不全発症リスクは体重増加と関連し,血糖降下薬/治療戦略で標準治療にくらべて体重が1kg増加するごとに,心不全リスクが7.1%増加した(95%信頼区間1.0-13.6,p=0.022)。
●結論 標準治療にくらべ,さまざまな薬剤/治療戦略による血糖降下療法は心不全発症リスクを増加させ,そのリスクの大きさは血糖降下療法の種類により異なり,また体重増加に依存する可能性が示唆された。