編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Palmer SC, Mavridis D, Navarese E, Craig JC, Tonelli M, Salanti G, Wiebe N, Ruospo M, Wheeler DC, Strippoli GF: Comparative efficacy and safety of blood pressure-lowering agents in adults with diabetes and kidney disease: a network meta-analysis. Lancet. 2015; 385: 2047-56. [PubMed]

しばらく前までは,ACE阻害薬とARBの併用投与は心疾患の低減作用,およびその強力な蛋白尿減少作用と腎保護作用から大いに期待された治療法であった。しかしながら,ONTARGETなど高カリウム血症やかえって腎機能悪化例が増えるなどの結果から,ACE阻害薬とARBの併用投与はすべきでないとされ,最近のガイドラインでは推奨されなくなった。
本ネットワークメタ解析は,多くの降圧薬の全死亡および末期腎臓病への影響を検討した点で重要である。特に,末期腎臓病への影響については,ACE阻害薬あるいはARBの単独治療での有効性に加えて,ACE阻害薬とARBの併用投与の有効性が再確認されたのは意義深いといえる。ただし,Discussionでもふれられているが,この併用の効果が大きいのは蛋白尿を有する2型糖尿病患者であり,微量アルブミン尿の2型糖尿病患者や1型糖尿病患者にはあてはまらない。また,有意ではないものの,併用により急性腎障害や高カリウム血症のリスクが増大することにも注意が必要である。1,000人を1年間治療すると,ARB単独に比べてACE阻害薬とARBの併用投与では,急性腎障害を38例,高カリウム血症を65例増加させるが,末期腎臓病を3例減らし,アルブミン尿の退縮をさらに90例に惹起すると推計される。
ただ今回の検討では,降圧薬による全死亡の低減効果がかならずしも大きくない。このことは,CKDを伴う2型糖尿病患者を対象としたことから,正常血圧の患者も含まれたためとも考えられる。またALTITUDEのような中途で試験が中止されたようなトライアルも含まれるため,心血管イベントをアウトカムとして十分に捉えられていない懸念が残る。高血圧例だけでの層別解析などがなされていないことは残念である。【片山茂裕

●目的 18歳以上の糖尿病を合併した慢性腎臓病(CKD)患者において,さまざまな降圧薬の相対的効果を検討した。
一次エンドポイントは全死亡,末期腎臓病(透析または腎移植の必要性)。
●デザイン ネットワークメタ解析。
●試験期間
●対象患者 43,256例(157研究):18歳以上の糖尿病を合併したCKD患者で,降圧薬に関するランダム化試験参加者。平均52.5歳。
試験の除外基準:腎臓移植,透析。
降圧薬の種類はACE阻害薬,ARB,Ca拮抗薬,β遮断薬,α遮断薬,利尿薬,レニン阻害薬,アルドステロン拮抗薬,エンドセリン拮抗薬。
●方法 電子データベース(Cochrane Collaboration,Medline,Embase)より,糖尿病合併CKD患者における降圧薬を比較したランダム化試験を検索した(2014年1月まで)。
ランダム効果pairwiseおよびネットワークメタ解析を実施し,各エンドポイントのオッズ比(OR)を算出し,異質性を検討した(T値)。また,各エンドポイントに対する効果について,surface under the cumulative ranking(SUCRA)確率法を用いて,降圧治療をランク付けした。
●結果 全死亡の抑制において(33研究,29,782例),プラセボを上回る降圧薬はなかった。降圧薬のうち,全死亡に対する抑制効果のランクがもっとも高かったのはACE阻害薬+Ca拮抗薬(OR 0.36,95%信頼区間0.12-1.05),もっともランクが低かったのはβ遮断薬であった(OR 5.13,0.81-32.4)。
末期腎臓病リスクについては(13研究,24,477例),プラセボにくらべて有意なリスク減少を認めたのはACE阻害薬+ARB併用(OR 0.62,0.43-0.90),およびARB単独(0.77,0.65-0.92)であり,ARB単独またはACE阻害薬+ARB併用はCa拮抗薬またはレニン阻害薬よりも優れていた。
しかしながら,高カリウム血症(18研究,16,450例)および急性腎障害(11研究,26,960例)に対する治療効果のランクがもっとも低かったのは,ACE阻害薬+ARB併用であった(OR 2.69,0.97-7.47,OR 2.69,0.98-7.38)。また,高カリウム血症および急性腎障害の抑制において,プラセボとの有意な差を認める降圧薬はなかった。
●結論 糖尿病を合併したCKD患者において,生存期間を延長させる降圧治療はなかった。ACE阻害薬およびARBは,単独または併用により,末期腎臓病に対してもっとも効果的な治療法であったが,その治療効果を得るには,高カリウム血症および急性腎障害を抑制するための治療が必要であることが示唆された。