編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Bhattacharya R, Zhou S, Wei W, Ajmera M, Sambamoorthi U: A real-world study of the effect of timing of insulin initiation on outcomes in older medicare beneficiaries with type 2 diabetes mellitus. J Am Geriatr Soc. 2015; 63: 893-901. [PubMed]

本研究では,ベースラインとインスリン治療開始1年後のHbA1cのデータが得られたのは全登録症例の27.5%のみであること,また,糖尿病治療において重要な非薬物療法等の療養態度は統計学的手法によっても調整が難しいという弱点がある。しかしながら,「インスリン早期開始例」においてHbA1cの低下度が大きく,また,低血糖や総医療費に群間差がなかったということは,高齢者のインスリン療法への切り替えに過度の躊躇は必ずしも必要ではなく,メリットもあることが示された。【景山茂】

●目的 高齢の2型糖尿病患者において,インスリンを早期に投与開始した場合と,遅く開始した場合の臨床アウトカムおよび経済アウトカムを比較した。
●デザイン 後向きコホート研究。
●試験期間 追跡期間はインスリン治療開始から1年。
●対象患者 14,669例(HbA1c値の評価は4,028例): 65歳以上のメディケア受益者である2型糖尿病患者。平均74歳,白人78%,女性49%,アメリカ合衆国南部住民63%,健康維持機構の保険プラン42%。
採用基準:基礎インスリン治療を2007年7月~2010年12月の期間中に開始,30日以上の間隔で1回以上の入院診察または2回以上の外来診察,primary/secondary 2型糖尿病診断,18ヵ月以上の医療/薬剤給付(インスリン治療開始の6ヵ月前[ベースライン]~追跡1年後),1種類以上の経口抗糖尿病薬(OAD)の処方,ベースライン期間にpramlintide/GLP-1拮抗薬/インスリンの処方を受けていない,ベースラインから1年後までのHbA1cのデータを有する。
●方法 米国糖尿病協会(ADA)ガイドラインの推奨を参考として,糖尿病患者の重症度を,インスリン治療開始前のOADの使用数により判した。メディケア受益者からの請求データ(Humana Medicare Advantage Prescription Drug)(2007年1月1日~2012年3月31日)より,患者がインスリン治療開始前に使用していたOAD(metformin,SU薬,チアゾリジンジオン,DPP-4阻害薬,αグルコシダーセ阻害薬,meglitinides)の種類の数を特定し,対象を3つにグループ分けして(インスリン治療前にOAD 1種類を使用→「インスリン早期開始例」,インスリン治療前にOAD 2種類を使用,インスリン治療前にOAD 3種類以上を使用→「インスリン晩期開始例」),HbA1c値の変化,HbA1c値<8.0%達成率,低血糖症イベント,総医療費を比較検討した。
●結果 インスリン早期開始例は4,702例(32.1%),インスリン2種類使用例は6,980例(47.6%),インスリン晩期甲斐指令は2,987例(20.4%)であった。
ベースラインから1年後までのHbA1cの変化(未調整)は,「インスリン早期開始例」で0.9±3.7%減少,「OAD 2種類使用例」で0.7±2.4%減少,「インスリン晩期開始例」で0.5±3.6%減少となり,「インスリン早期開始例」で「晩期開始例」にくらべてHbA1c値が有意に大きく低下した(群間差-0.40%,調整p<0.001)。

1年後のHbA1c<8.0%達成率は,「早期開始例」64.2%,「OAD 2種類使用例」62.2%,「晩期開始例」59.4%であり,「早期開始例」のほうが「晩期開始例」よりも30%高く(調整オッズ比1.30,95%信頼区間1.18-1.43,p≦0.001),「OAD 2種類使用例」のほうが「晩期開始例」よりも20%高かった(1.20,1.09-1.32,p≦0.001)。
追跡1年における低血糖症イベント発症率は,「早期開始例」11.5%,「晩期開始例」10.2%と,有意な差を認めなかった(p=0.32)。また,総医療費についても,交絡因子で調整後は,3群間で有意な差を認めなかった。
●結論 血糖コントロール不良の高齢2型糖尿病患者において,インスリン治療の早期開始は有効であり,低血糖症リスクや直接総医療費は増加しないことが示唆された。