編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Green JB, Bethel MA, Armstrong PW, Buse JB, Engel SS, Garg J, Josse R, Kaufman KD, Koglin J, Korn S, et al.; TECOS Study Group : Effect of Sitagliptin on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015; 373: 232-42. [PubMed]

2型糖尿病患者を対象としDPP4阻害薬の心血管疾患発症リスクを評価した大規模無作為割り付け臨床試験において,最も重要な試験の1つである。
本試験は,DPP-4阻害薬として,世界で最初に登場し,なおかつDPP-4阻害薬の全世界のシェアにおいて常に1位であるsitagliptinもしくはプラセボを,心血管疾患の既往がある14,671名に無作為に投与し,心血管疾患の発症を比較検討した。
本研究のプロトコールは,sitagliptinもしくはプラセボに加え,可能な限り良好なコントロールを達成すべく,血糖降下薬の追加投与が許可されていたため,両群のHbA1c値の差は0.29%であった。これは,DPP-4阻害薬自体に,心血管疾患の発症抑制作用があるか否かを検証することを目的としたためである。
しかしながら,sitagliptin群とプラセボ群の間でエンドポイントに差は見られず,sitagliptinは,従来療法と比較し心血管疾患を増やすリスクはないことが確認された。また,特筆すべきこととして,DPP-4阻害薬のsaxagliptinを使用した大規模臨床試験であるSAVOR-TIMI 53では実薬群で心不全の発症が増加したが,本試験では,心不全の増加傾向は全く見られなかった。さらに,膵炎,膵腫瘍の増加も見られなかったことより,sitagliptinの安全性を検証した結果となった。
本試験の結果を受けて,欧米ならびにわが国のガイドラインがどのように変遷していくのか,見守っていく必要がある。【西村理明

●目的 心血管疾患を有する2型糖尿病患者において,通常治療のみの場合と通常治療にsitagliptinを追加した場合の長期の心血管安全性を比較検討した。
複合一次エンドポイントは心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+不安定狭心症による入院。
複合二次エンドポイントは心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中。
●デザイン 無作為,二重盲検,多施設(673施設,38ヵ国),非劣性,per-protocol解析(主要解析),intention-to-treat解析(補助解析)。
●試験期間 ランダム化期間は2008年12月~2012年7月,追跡期間は中央値3.0年(四分位範囲2.3~3.8年)。
●対象患者 14,671例:50歳以上で心血管疾患を有する2型糖尿病患者。平均HbA1c 7.2±0.5%,糖尿病罹患期間11.6±8.1年。
採用基準:1~2剤の経口血糖降下薬(metformin,pioglitazone,またはSU薬)/インスリン投与下でHbA1c 6.5~8.0%。
除外基準:過去3ヵ月以内にDPP-4阻害薬/GLP-1受容体作動薬/チアゾリジン誘導体(pioglitazoneは除く)を使用,過去12ヵ月以内に2回以上の重症低血糖エピソード歴(第三者の援助が必要な場合と定義),eGFR<30 mL/分/1.73m2。
●方法 sitagliptin群(7,332例)(sitagliptin 100mg/日[eGFR ≧30,<50 mL/分/1.73m2の場合は50mg/日]),プラセボ群(7,339例)にランダム化。
sitagliptinのプラセボに対する非劣性の評価は,複合心血管一次エンドポイントのハザード比(HR)の両側95%信頼区間が1.30を超えない場合とした(主要解析はper-protocol解析,補助解析はintention-to-treat解析とした)。
per-protocol解析の対象は,sitagliptin群7,257例,プラセボ群7,266例。
●結果 全追跡期間におけるHbA1cの群間差はわずかであり,sitagliptin群でプラセボ群に比し,最小二乗平均差-0.29(95%信頼区間-0.32 to -0.27)であった。
複合一次エンドポイントについては,intention-to-treat解析による全発生数はsitagliptin群839例(11.4%,4.06/100人年),プラセボ群851例(11.6%,4.17/100人年)であり,sitagliptin群のプラセボ群に対する非劣性が認められた(per-protocol解析:HR 0.98,95%信頼区間0.88-1.09,非劣性のp<0.001,intention-to-treat解析:HR 0.98,0.89-1.08,優越性のp=0.65)。
複合二次エンドポイントについても,sitagliptin群のプラセボ群に比した非劣性が認められた(per-protocol解析:HR 0.99,0.89-1.11,非劣性のp<0.001,intention-to-treat解析:HR 0.99,0.89-1.10,優越性のp=0.84)。
その他,心不全による入院は有意な群間差を認めなかった(intention-to-treat解析:HR 1.00,0.83-1.20,p=0.98)。急性膵炎(p=0.07),膵がん(p=0.32)についても有意な群間差を認めなかった。
●結論 心血管疾患を有する2型糖尿病患者において,通常治療にsitagliptinを追加しても,主要有害心血管イベント,心不全による入院,およびその他の有害イベント発生リスクは増加しなかった。