編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Zinman B, Wanner C, Lachin JM, Fitchett D, Bluhmki E, Hantel S, Mattheus M, Devins T, Johansen OE, Woerle HJ, et al.; EMPA-REG OUTCOME Investigators: Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015; [PubMed]

近年,欧米で上市した糖尿病新薬は心血管リスクを増やさないというエビデンス構築を要求される。SGLT2阻害薬に関する,初めての同エビデンスが,empagliflozinを用いたEMPA-REG OUTCOME試験である。
対象は,心血管疾患の既往のある2型糖尿病患者約7000名であり,その結果は驚くべきものであった。まず,心血管複合エンドポイント(心血管死,心筋梗塞,脳卒中)を主要エンドポイントとする2型糖尿病を対象にした試験の中で,はじめて主要エンドポイントを有意に減少させ,その中でも特に心血管死が約4割も減少していた。心筋梗塞は減少傾向,脳卒中は増加傾向にあったが,脳卒中も実薬を内服している間には増加傾向はなく,実薬内服中止後に増加傾向があったことが示されている。
また,心血管死が,内服開始数ヶ月後から実薬群で明らかに減少しており,SGLT2阻害薬が持つ利尿作用が,心血管死の予防に有利に働いたのではないかとされている。
いずれにせよ,本研究から,SGLT2阻害薬が,なぜこれほどの心血管複合エンドポイントを抑制する効果があるのか,今後さまざまな基礎実験が行われ,その詳細な機序が明らかになることを切に望む。また,SGLT2阻害薬を用いた同様の臨床試験が現在行われており,その結果が本試験と同様であれば,SGLT2阻害薬が2型糖尿病治療におけるfirst choiceになる可能性もあり,今後の動向から目が離せない。【西村理明

●目的 心血管イベントのリスクが高く,かつ標準治療を受けている2型糖尿病患者において,empagliflozinとプラセボの心血管疾患の発症率および死亡率に対する影響を比較した。
一次エンドポイントは心血管疾患死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中。二次エンドポイントは一次エンドポイント+不安定狭心症による入院。
●デザイン 無作為,プラセボ対象,多施設(42ヵ国,590施設),ITT解析。
●試験期間 登録期間は2010年9月~2013年4月。治療期間中央値は2.6年,追跡期間中央値は3.1年。
●対象患者 心血管疾患のある2型糖尿病患者7,028例。
登録基準:18歳以上,BMI≦45,推算糸球体濾過量(eGFR)≧30 mL/分/1.73m2,HbA1c 7.0%以上9.0%未満(登録前12週間に血糖降下薬を使用していない場合)または7.0%以上10.0%未満(登録前12週間に血糖降下治療を受けている場合)。
●方法 2週間のrun-in期間後,患者をempagliflozin 10mg群(2,345例),empagliflozin群25mg群(2,342例),プラセボ群(2,333例)に1:1:1に割り付け,Cox回帰ハザードモデルを用いて一次エンドポイントおよび二次エンドポイントのハザード比を算出した。
各群への患者の割り付けは,スクリーニング時のHbA1cレベル,無作為化時のBMI,腎機能,地域により層別化して行った。
●結果 追跡期間中の一次エンドポイントの発症率は,プラセボ群(282/2333例[12.1%])よりもempagliflozin群(490/4687例[10.5%])のほうが有意に低かった(ハザード比[HR] 0.86,95%信頼区間[CI] 0.74-0.99,非劣性のP<0.001,優越性のP=0.04)。
プラセボ群に比べ,empagliflozin群では心血管疾患による死亡率が低く(プラセボ群5.9%,empagliflozin群3.7%,HR 0.62,95%CI 0.49-0.77,P<0.001),全死亡率が低く(それぞれ8.3%,5.7%,HR 0.68,95%CI 0.57-0.82,P<0.001),心不全による入院率も低かった(4.1%,2.7%,HR 0.65,95%CI 0.50-0.85,P=0.002)。心筋梗塞または脳卒中の発症率には群間差がみられなかった。
二次エンドポイントの発症には群間差が認められなかった(優越性のP=0.08)。
empagliflozin群では性器感染症が増加したが,他の有害事象の増加はみられなかった。
●結論 心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者において,標準治療へのempagliflozinの追加は心血管疾患による死亡,心血管イベント,および全死亡の発症率を低下させた。