編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Chilton R, Tikkanen I, Cannon CP, Crowe S, Woerle HJ, Broedl UC, Johansen OE: Effects of empagliflozin on blood pressure and markers of arterial stiffness and vascular resistance in patients with type 2 diabetes. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 1180-93. [PubMed]

選択的SGLT2阻害薬であるempagliflozinを用いた血糖コントロールが,心血管イベントに関して,他剤での治療に比べて非劣性であるどころか有意な抑制効果があることを示したEMPA-REG OUTCOME試験は,糖尿病の臨床に大きなインパクトを与えた。そのような画期的な効果がなぜ得られたのか,様々な議論がなされている。
本論文は,empagliflozinによる心血管イベント抑制効果の説明の一部として重要である。SGLT2阻害薬は利尿効果をもつことから,降圧効果が期待される。本研究においても,脈拍増加を伴わずに,収縮期血圧で3~4mmHgの有意な降圧が認められ,double productの有意な減少につながった。通常,循環血漿量の低下に伴う血圧低下では,反射的に交感神経を活性化して脈拍増加を伴うはずであるが,本検討ではそのような増加を認めていないことが非常に興味深い。SGLT2阻害薬の交感神経に対する作用は,今後注目されていくことになるであろう。【西尾善彦

●目的 2型糖尿病患者において,empagliflozinが血圧,動脈壁硬化指標,および血管抵抗性に与える影響について検討した。
コホート1のエンドポイント:ベースラインから12週後までのHbA1c,24時間収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP),心拍数,脈圧(PP),平均動脈圧(MAP),double product(心拍数×SBP),自由行動下動脈壁硬化指数(AASI)(24時間自由行動下血圧モニタリングに基づく)の変化。
コホート2のエンドポイント:ベースラインから24週後までのHbA1c,座位診察室SBPおよびDBP,心拍数,PP,MAP,double productの変化。
●デザイン 2つのコホートのpost hoc解析。full analysis set解析。
[コホート1]EMPA-REG BP (第III相試験)。
[コホート2]EMPA-REG MONO,EMPA-REG MET,EMPA-REG METSU,EMPA-REG PIO(いずれも第III相試験)。
●試験期間 [コホート1]試験期間は12週。
[コホート2]試験期間は24週。
●対象患者 [コホート1]823例:高血圧を有する2型糖尿病患者。empagliflozin群552例,プラセボ群271例。
登録基準:座位診察室SBP 130~159 mmHg,座位診察室DBP 80~99 mmHG,HbA1c≧7%および≦10%,BMI≦45 kg/m2,ランダム化前に経口血糖降下薬/GLP-1アナログ/インスリンによる12週以上(ピオグリタゾンは16週間以上)の治療歴なし,血糖降下療法(経口薬またはGLP-1アナログを固定用量で12週以上[pilglitazoneは16週以上])の治療歴なし,インスリンの用量変更が12週間以上で10%以内,スクリーニング時に4週以上の安定用量での1~2種類の降圧薬の使用歴なし。
[コホート2]2,477例:2型糖尿病患者。empagliflozin群1,652例,プラセボ群825例。
登録基準:HbA1c≧7%および≦10%,BMI≦45 kg/m2。EMPA-REG MONO:ランダム化前に12週以上の血糖降下薬の使用歴なし,EMPA-REG METおよびEMPA-REG METSU:ランダム化前に短時間作用型metformin(≧1,500mg/日,最大耐用量/ローカルラベルに準じた最大用量まで)を固定用量で12週以上使用,EMPA-REG PIO:pioglitazone(≧30mg/日,最大耐容量/ローカルラベルに準じた最大用量まで)を固定用量で12週以上使用。
●方法 [コホート1]empagliflozin 10mg群,empagliflozin 25mg群,またはプラセボ群にランダム化。いずれも1日1回,12週間投与。
[コホート2]empagliflozin 10mg,empagliflozin 25mg,プラセボ群にランダム化。EMPA-REG MONOでは単独療法として実施し,他の3試験では基礎療法に追加する併用療法として実施。
いずれのコホートも,empagliflozin 10mgとempagliflozin 25mgのデータを統合し(empagliflozin群),エンドポイント発生について,プラセボ群と比較した。
●結果 両コホートともに,empagliflozin群はプラセボ群にくらべ,ベースラインからのHbA1cを有意に低下させた(コホート1の12週後までの平均変化-0.61±0.02% vs. 0.03±0.04%,群間差-0.64%[95%CI -0.72 to -0.55],コホート2の24週後までの平均変化 -0.73±0.02% vs. -0.08±0.03%,群間差-0.65%[-0.71 to -0.59])。
両コホートともに,empagliflozin群はプラセボ群にくらべ,ベースラインからの24時間SBP(コホート1の12週後までの平均変化の群間差-3.9mmHg[-5.0 to -2.7],p<0.001,コホート2の24週後までの平均変化の群間差-3.6mmHg[-4.5 to -2.7],p<0.001)および24時間DBP(コホート1の平均変化の群間差-1.5mmHg[-2.2 to -0.8],p<0.001,コホート2の24週後までの平均変化の群間差-1.3 mmHg[95%CI -1.9 to -0.8],p<0.001)を有意に低下させ,心拍数も増加させなかった。
両コホートともに,empagliflozin群はプラセボ群にくらべ,PP(コホート1の12週後までの平均変化の群間差-2.3 mmHg[-3.0 to -1.6],p<0.001,コホート2の24週後までの平均変化の群間差-2.3 mmHg[-3.0 to -1.5],p<0.001),MAP(-2.3 mmHg[-3.1 to -1.5],p<0.001,-2.1mmHg[-2.7 to -1.5],p<0.001),およびdouble product(-385 mmHg×bpm[-537 - -234],p<0.001,-369 mmHg×bpm[-472 to -267],p<0.001)をそれぞれ有意に低下させた。
AASIはコホート1ではempagliflozin群でプラセボ群に比して減少する傾向がみられたが(p=0.059),コホート2では評価されなかった。
サブグループ解析も実施され,ベースラインのSBPが高いほど,コホート1では PPの減少が大きい傾向がみられ(p=0.092),コホート2ではMAPの減少が有意に大きかった(p=0.027)。また高齢者ではPPの低下が有意に大きかった(p=0.011)。
●結論 2型糖尿病患者において,empagliflozinは血圧を低下させ,動脈壁硬化指標および血管抵抗性に対して望ましい作用を有した。