編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Eliasson B, et al. Cardiovascular disease and mortality in patients with type 2 diabetes after bariatric surgery in Sweden: a nationwide, matched, observational cohort study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015; 3: 847-54. [PubMed]

日本でも保険適応になり今後症例が増加すると考えられるものの,まだそれほど普及していない肥満に対する手術治療であるが,欧米ではすでにメジャーな外科治療のひとつになっている。肥満患者の長期予後に関しては手術治療の有用性が示されてきたが,今回の報告では糖尿病を伴う肥満患者の中央値3.5年の追跡研究の結果が示された。手術治療の1年後にはHbA1c,LDL-コレステロール,HDL-コレステロール,血圧の有意な改善を認め,追跡期間中の心血管死率が59%,総死亡率が58%低下した。これは5年間で4%の総死亡絶対リスクの低下に相当する(NNT=25)驚異的な効果である。体重減少や糖尿病寛解だけでなく,生命予後に関するこの効果を見る限り,日本でも高度肥満を伴う糖尿病患者では積極的に外科治療を進めていくことを考慮すべきであろう。【西尾善彦

●目的 肥満の糖尿病患者において,肥満外科手術(Roux-en-Y胃バイパス術[RYGB])実施後の心血管リスクおよび全死亡リスクを検討した。
一次エンドポイントは全死亡,心血管死,致死性/非致死性心筋梗塞。
●デザイン 観察,コホート研究。
●試験期間 登録期間は2007年1月1日~2014年12月31日,追跡期間中央値は3.5年。
●対象患者 スウェーデンの病院でRYGBを施行した6,132例。対照は,肥満外科手術を施行していない6,132例。
平均年齢はRYGB群48.5歳,対照群50.5歳,男性は両群ともに39%,BMIは42.0 kg/m2,41.4 kg/m2,HbA1cは両群ともに7.6%,
●方法 スウェーデンの2つの大規模レジストリ,Scandinavian Obesity Surgery Registry(SOReg)およびNational Diabetes Registry(NDR)のデータを使用。
RYGB施行例はSORegより特定。対照は性別,年齢(0~41歳,41~49歳,50~55歳,56歳以上),BMI(<28kg/m2,28~<35kg/m2,35~<38kg/m2,38~<43kg/m2,43kg/m2以上),暦時間(2007~2008年,2009~2010年,2011~2012年,2013~2014年)で1:1にマッチングさせた非RYGB施行例をNDRより抽出。
RYGBの心血管疾患リスクおよび死亡リスクに対する効果を検討するため,Cox比例ハザード回帰モデルを用いて,RYGB例と対照(非RYGB例)を比較した。
●結果 ベースラインから1年後までのBMIの変化は,RYGB群(-11.0kg/m2)で対照群(-1.1kg/m2)にくらべて有意に大きく減少した(群間差-10.1,p<0.0001)。HbA1c,LDL-C,血圧,血糖降下薬使用のいずれについても,RYGB群で対照群にくらべて有意に減少し,HL-Cは有意に増加した(いずれもp<0.0001)。
一次エンドポイントである追跡期間における全死亡はRYGB群82例,対照群288例,心血管死は13例,67例,致死性/非致死性心筋梗塞は24例,67例であった。
ベースライン,危険因子,治療,および社会経済変数で調整後,RYGB群では対照群にくらべ,全死亡リスクが58%低く(ハザード比[HR]0.42,95%信頼区間0.30-0.57,p<0.0001),心血管死亡リスクが59%低く(HR 0.41,0.19-0.90,p=0.026),致死性/非致死性心筋梗塞リスクが49%低かった(HR 0.51,0.29-0.91,p=0.021)。
Kaplan-Meier解析による5年後の全死亡絶対リスクは,RYGB群で1.8%(95%信頼区間1.5-2.2),対照群で5.8%(5.0-6.8)であった。
●結論 本検討の結果,肥満の2型糖尿病患者において,RYGBのベネフィットが示された。これらの効果は,減量そのものの影響,生理機能や代謝作用の変化,ケアや治療の改善,ライフスタイルや危険因子の改善,あるいはこれらの因子の複合によるものであろう。