編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Rosenstock J, Franco D, Korpachev V, Shumel B, Ma Y, Baughman R, Amin N, McGill JB; Affinity 2 Study Group : Inhaled Technosphere Insulin Versus Inhaled Technosphere Placebo in Insulin-Naïve Subjects With Type 2 Diabetes Inadequately Controlled on Oral Antidiabetes Agents. Diabetes Care. 2015; 38: 2274-81. [PubMed]

吸入インスリン製剤については,イーライリリー社は開発を中止し,ファイザー社のExubera(R)は2006年に米国において承認されたが処方は極めて少なく,2008年には販売中止に至った。
本論文のTechnosphereという微粒子を用いた吸入インスリン製剤(Afrezza(R))は2015年米国でMannkind社より発売された。
吸入インスリンはインスリン注射の負担を取り除く一つの方法であり,血糖コントロールに関する有効性が示された。しかし,FEV1の低下や咳という呼吸器系の副作用については,吸入インスリンを中止することにより改善したとあるが,インスリン療法は長く継続するものであり,中止により改善したということは十分な安心材料にはならない。吸入インスリン長期使用の安全性の検討は今後の課題である。【景山茂】

●目的 インスリン投与歴がなく,経口糖尿病治療薬でコントロール不良の2型糖尿病患者において,速効型吸入インスリンTechnosphereの有効性と安全性を検討した。
有効性の一次エンドポイントはベースラインから24週後までのHbA1cの平均変化。
●デザイン 無作為,二重盲検,多施設(ブラジル,ロシア,ウクライナ,米国),有効性はfull-analysis-set解析,安全性はper-protocol解析。
●試験期間 登録期間は2011年11月~2013年6月,試験期間は28週(治療24週+観察4週)。
●対象患者 353例:インスリン投与歴がなく,至適または最大忍容量でのmetformin単独または2剤以上の経口糖尿病治療薬投与下でコントロール不良(HbA1c 7.5~10.0%)の2型糖尿病(罹病期間≧12ヵ月)患者。平均年齢56.7歳,BMI 32kg/m2。女性は吸入インスリン群54%,プラセボ群58%,糖尿病罹病期間はそれぞれ9.7年,9.2年,HbA1cは8.26%,8.35%。
採用基準:非喫煙(6ヵ月以上),FEV1およびFVCの予測値≧70%。
除外基準:GLP-1受容体作動薬/チアゾリジンジオン系製剤/減量薬の過去3ヵ月以内の使用,3ヵ月以内の原因不明の重症低血糖症エピソード≧2回,6ヵ月以内の糖尿病コントロール不良による入院/救急外来受診,重度の糖尿病合併症,重篤な肺疾患(慢性閉塞性肺疾患,喘息,肺線維症),インスリン/Technosphereインスリン吸入に対する既知の過敏性,妊娠,授乳中。
●方法 6週間のrun-in期間後,HbA1c≧7.5%およびFPG≦270mg/dLの対象患者を,地域,経口糖尿病治療薬レジメにより層別化し,吸入インスリン群(177例),プラセボ群(176例)に1:1にランダム化し,従来の治療に上乗せした。
吸入インスリン群では,Technosphere吸入インスリン10 unit/食事より開始し,最初の12週間は自己測定血糖値に基づいて食後90分の血糖値110~160mg/dLを目標として週ごとに漸増。プラセボ群では,同様にしてプラセボを吸入。
●結果 ベースラインから24週後のHbA1cは,吸入インスリン群でプラセボ群にくらべ有意に大きく低下した(吸入インスリン群-0.82% vs. プラセボ群-0.42%,群間差-0.40%[95%信頼区間-0.57 to -0.23],p<0.0001)。24週後にHbA1c<7.0%に達成した患者は,インスリン吸入群のほうが多かったが(38% vs. 19%,p=0.0005),FPGは,有意な群間差を認めなかった(-11mg/dL vs. -4mg/dL,p=0.1698)。7ポイント血糖プロファイルによる食後高血糖は,インスリン吸入群で効果的にコントロールされた。体重変化は,プラセボ群のほうが良好であった(+0.5kg vs. -1.1kg,群間差1.6kg,p<0.0001)。
全有害事象(61.0%,51.1%)のうち,低血糖症(67.8% vs. 30.7%)以外でもっとも多くみられたのは,軽度の一過性の咳であった(23.7% vs. 19.9%)。FEV1の減少度は,インスリン吸入群のほうが大きかったが(-0.13 L vs. -0.04 L),治療中止から4週後にはその差は消失した。
●結論 コントロール不良の2型糖尿病患者において,1剤以上の経口糖尿病治療薬へのTechnosphere吸入インスリン追加は,有効な治療選択肢であった。もっとも多くみられた有害事象は,軽度の一過性乾性咳であった。