編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Elleri D, Biagioni M, Allen JM, Kumareswaran K, Leelarathna L, Caldwell K, Nodale M, Wilinska ME, Haidar A, Calhoun P, et al.: Safety, efficacy and glucose turnover of reduced prandial boluses during closed-loop therapy in adolescents with type 1 diabetes: a randomized clinical trial. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 1173-9. [PubMed]

1型糖尿病患者において究極の血糖コントロールをもたらすとされているクローズドループ(インスリンポンプとCGMを連動させ,インスリン量を自動調整する)機器における,大きな課題の一つは,食事の際のインスリン量の調整である。
本研究は,ベーサルインスリンをクローズドループ機器が自動的に調節してくれる環境において,食事時のボーラスインスリンは患者自身がカーボカウントを用いたボーラスカリュキュレーターが算出した単位を打った場合,もしくは,その量を意図的に25%減量した場合と比較して,血糖コントロール,ならびに糖代謝に差が見られないか検討した報告である。
その結果,ボーラスインスリンを25%減量しても,血糖コントロールは同等で,血漿インスリン濃度は低く,インスリン動態も同等であることが示された。
このような研究(本研究は基礎インスリンが自動調整されるなら,ボーラス投与量を25%減らしてもデメリットがないことを示した)の積み重ねが,究極のクローズドループ機器の完成につながるという意味で,重要な知見の一つであると考える。【西村理明

●目的 10代の1型糖尿病患者において,食事時のボーラスインスリンは患者自身がカーボカウントに従い注射するクローズドループ制御システム使用時のインスリンボーラス減量の安全性,有効性および糖代謝への影響を検討した。
一次エンドポイントは,血糖値の目標範囲(3.9~10 mmol/L[70~180 mg/dL])内の時間。
●デザイン 無作為,オープンラベル,複数施設(小児糖尿病クリニック3施設),クロスオーバー。
●試験期間 追跡期間は,32時間(24:00[day 1]~08:00[day 3])。
●対象患者 8例:インスリンポンプ療法中の1型糖尿病患者。男性3例,平均年齢15.9歳,BMI 24 kg/m2,HbA1c 8.9%,糖尿病罹病期間7年,インスリンポンプ療法の期間4年,1日の総インスリン量59 IU/日。
採用基準:12~18歳,糖尿病罹病期間1年以上,インスリンポンプ療法の3ヵ月以上の実施。
除外基準:血糖コントロール不良(HbA1c>12%),インスリン抵抗性(1日の総インスリン量>2 IU/kg/日),臨床的に進行した腎症/網膜症。
●方法 標準群,減量群にランダム化し,1~6週間あけてクロスオーバー。
標準群では,標準的なインスリンボーラス投与を実施し,減量群では25%減量したインスリンのボーラス投与を実施した。
●結果 一次エンドポイントである,血糖値の目標範囲(3.9~10 mmol/L[70~180 mg/dL])内の時間(中央値[四分位範囲])は,両群同様であった(減量群74%[66~84] vs. 標準群80%[65~96],p=0.87)。
10 mmol/L(180 mg/dL)超の高血糖(中央値[四分位範囲])(21.8%[16.3~33.5] vs. 18.0%[4.1~34.2],p=0.87)および3.9 mmol/L(70 mg/dL)未満の低血糖(0%[0.0~1.5] vs. 0%[0.0~1.8],p=0.88)にも,群間差を認めなかった。
平均血糖値は両群同様であった(ともに8.4 mmol/L,p=0.98)。低血糖イベントは,標準群で食後1.5時間に1件発生した。インスリン投与量は減量群のほうが少なく(61.9 IU[55.2~75.0] vs. 72.5[63.6~80.3],p=0.01),平均血漿インスリン濃度も減量群のほうが低かった(186 pmol/L[171~260] vs. 252 pmol/L[198~336],p=0.002)。夜間の血漿インスリン濃度も減量群で低かった(160 pmol/L[136~192] vs. 191 pmol/L[133~252],p=0.01)。glucose tracerを用いて測定したtotal glucose appearance(26.3 μmol/kg/分[21.9~28.0]vs. 25.4μmol/kg/分[21.0~29.2],p=0.19)およびglucose disposal(25.8μmol/kg/分[21.0~26.9]vs. 25.2μmol/kg/分[21.2~28.8],p=0.46)は両群同様であった。
●結論 10代の1型糖尿病患者において,クローズドループ制御システム使用時にインスリンボーラス投与量を25%減量しても,標準量インスリンと同様の血糖コントロールが維持されたが,血漿インスリン濃度は低下した。クローズドループ制御システム使用時にインスリンボーラス投与量を25%減量することが,食後の低血糖を予防するかについては不明である。