編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Franc S, Daoudi A, Pochat A, Petit MH, Randazzo C, Petit C, Duclos M, Penfornis A, Pussard E, Not D, et al.: Insulin-based strategies to prevent hypoglycaemia during and after exercise in adult patients with type 1 diabetes on pump therapy: the DIABRASPORT randomized study. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 1150-7. [PubMed]

インスリンポンプを使用中の1型糖尿病患者において,運動時のインスリン量の調整をどのように行えばよいか,的確に示した研究はほとんどなかった。
本研究は,運動時のインスリン量の調整をどのように行えばよいか,食事のタイミングを2通りに分けてプロトコールに組み込んだ点,さらには運動量を最大酸素摂取量で規定して行った点において,極めて先進的かつ実践的である。
その結果,昼食後3時間に30分の中等度の運動を行う場合は基礎インスリンを80%減量すること,強度の運動を行う場合には,基礎インスリンの停止が望ましく,低血糖を有意に減らせることを明らかにした。
昼食後90分に中等度の運動を行う場合は,基礎インスリンよりも,昼食前のボーラスインスリンを減らしたほうが低血糖は少ない傾向がみられることも示している。
1型糖尿病患者において究極の血糖コントロールをもたらすとされているクローズドループ(インスリンポンプとCGMを連動させ,インスリン量を自動調整する)機器における,大きな課題の一つは,食事の際ならびに運動時のインスリン量の調整である。本研究は,クローズドループ機器の開発に重要な知見をもたらす報告であり,このようなデータの蓄積が理想的なクローズドループ機器の完成に必須である。【西村理明

●目的 インスリンポンプ療法下の成人1型糖尿病患者において,運動誘発性低血糖を予防するためにインスリン用量調節による治療法が有効かを検証した。
一次エンドポイントは低血糖イベント発生数。
●デザイン 無作為,単盲検,単施設,クロスオーバー。
●試験期間 試験期間は2010年3月~2012年11月。
●対象患者 20例:成人の1型糖尿病患者。平均年齢45±11.9歳,糖尿病罹病期間18±10年,HbA1c 7.9±0.9%,1日の総インスリン量49±19 IU,BMI 24.5±2.8 kg/m2,最大酸素摂取量(VO2max)33±10 mL/kg/分,インスリンポンプ療法による治療期間5±3.8年。
採用基準:18歳以上,インスリンポンプ療法の3ヵ月以上の実施,カーボカウンティングの使用,無自覚性低血糖/重症の糖尿病性合併症なし,HbA1c<9.0%,仕事/家事/余暇における定期的な運動の実施,基礎インスリン注入速度の1週間以上の安定。
●方法 対象患者に2つのパートからなる運動セッションを実施し,低血糖イベントの発生を評価した。
<パート1>
昼食から3時間後に実施する以下の5つの30分間の運動セッションにランダム化し,48時間以上の間隔をあけてクロスオーバーした。基礎インスリンは,ポンプ停止のプロトコルを除き,運動中および運動後2時間の間に減量した。
・休憩セッション
・中等度(50% VO2max)の運動+基礎インスリンを80%減量
・中等度(50% VO2max)の運動+基礎インスリンを50%減量
・強度(75% VO2max)の運動+基礎インスリンを80%減量
・強度(75% VO2max)の運動+ポンプ停止
<パート2>
昼食開始から90分後に実施する以下の2つの運動セッションに再度ランダム化し,ボーラスインスリンおよび基礎インスリンの減量割合については,パート1での結果(低血糖イベントリスクなど)を考慮して選択した。
・中等度(50% VO2max)の運動+ボーラスインスリンを30%または50%減量
・中等度(50% VO2max)の運動+基礎インスリンを50%または80%減量

低血糖イベントは,持続的血糖モニタリング[CGM]<3.3 mmol(60 mg/dL)と定義し,運動開始から翌朝7時までを全試験期間にわたり評価した。
全例で,試験日の10:30から翌朝までCGMを装着し,低血糖イベントをモニタリングした。
パート1については,全20例における全100回の昼食後のセッションのデータを解析し,パート2については,37回のセッション(ボーラス減量19セッション,基礎インスリン減量18セッション)のデータを解析した。
●結果 一次エンドポイントである全期間における低血糖イベントについては,いずれの運動セッションにおいても,運動の強度および基礎インスリン量に関わらず,休憩セッションとの有意な差を認めなかった(p=0.56[全運動セッション vs. 休憩セッション])。
追加の糖質補給について,いずれの運動セッションにおいても,回数(p=0.40),量(p=0.68)ともに,休憩セッションとの有意な差を認めなかった。
パート1での低血糖イベントは,休憩セッションにくらべ,中等度の運動+基礎インスリン80%減量のセッションでは同程度であったが(p=0.58),中等度の運動+基礎インスリン50%減量のセッションでは有意に多く発生した(p=0.03)。強度の運動+ポンプ停止では,低血糖イベントは休憩セッションと同程度であったが(p=0.14),強度の運動+基礎インスリン80%減量のセッションでは,有意に多く発生した(p=0.028)。
パート2の低血糖イベントは,基礎インスリン減量セッションよりもボーラスインスリン減量セッションで少ない傾向がみられたが(p=0.07),追加の糖質補給は有意に多かった(p=0.02)。
平均血糖値は,30分の運動後に投与量の減量率にかかわらず約3.3mmol/L(60 mg/dL)低下していた。また,低血糖症のリバウンドによる高血糖なしに翌朝まで安定していた。
●結論 成人の1型糖尿病患者において,昼食後3時間の30分間の運動で誘発される低血糖症イベントを糖質補給なしで予防するためには,中等度または強度の運動の場合,基礎インスリンを80%減量するか,あるいはポンプを停止させるのが治療選択肢として優れていた。昼食開始から90分後の中等度の運動の場合には,基礎インスリンを減量するよりも,昼食時のボーラスインスリンを減量するほうが良いことが示唆された。