編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Schievink B, Kröpelin T, Mulder S, Parving HH, Remuzzi G, Dwyer J, Vemer P, de Zeeuw D, Lambers Heerspink HJ: Early renin-angiotensin system intervention is more beneficial than late intervention in delaying end-stage renal disease in patients with type 2 diabetes. Diabetes Obes Metab. 2016; 18: 64-71. [PubMed]

BENEDICT試験,IRMA-2試験,RENAAL試験,IDNT試験のデータを使用して,DKDの早期・中期・進行期の多数例のESRD発症までの経過をシミュレーションするモデルを作成し,RAS阻害薬のESRD遅延効果を評価した重要な検討といえる。
今回のシミュレーションでは,正常アルブミン尿で高血圧の患者の半分が21年の経過でESRDを発症し,RAS阻害薬で治療するとESRD発症が26年と,約5年間遅延することが明確に示された。そしてRAS阻害薬で最も治療効果が大きいのは,早期に若年での治療を始めた群で,特に治療初期にアルブミン尿の減少が認められた場合であることも明らかになった。このことから,RAS阻害薬開始時にアルブミン尿が軽減されているかを確認することが極めて重要であるといえる。また,この統合解析でRAS阻害薬の有効性に性差はないことも確認されたことを付記する。【片山茂裕

●目的 糖尿病腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)*の進展を発症早期から末期腎疾患(ESRD)までシミュレーションするモデルを作成して検証し,ESRDに対するレニン・アンジオテンシン系(RAS)介入の効果を介入の時期別に検討した。

*糖尿病腎臓病:糖尿病に伴う腎臓病を包括的に捉えようとする考え方で,慢性腎臓病のうち病理診断は確定していないが糖尿病がその発症に関与しているものを指す。その多くは従来の糖尿病腎症(diabetic nephropathy)であるが,アルブミン尿の増加を来さず腎機能が著しく低下する症例なども存在する。したがって,高齢化により増加しつつある糖尿病合併腎硬化症や,IgA腎症が糖尿病に合併した症例も糖尿病腎臓病に含まれる。ただし,日本においてはアルブミン尿と推算糸球体濾過量(eGFR)に基づく糖尿病腎症の病期分類が普及しており,当面は糖尿病腎症を用いることが適当と考えられる。その他,糖尿病腎臓病を,尿アルブミン 30mg/gCr以上あるいはeGFR 60mL/分/1.73m2未満とする定義もあり,その場合は腎症前期を除くすべての糖尿病腎症が含まれる。
●デザイン 無作為化試験の統合解析。
●試験期間 -
●対象患者 5,027例:2型糖尿病患者。
●方法 BENEDICT試験,IRMA-2試験,RENAAL試験,IDNT試験のデータを使用して,アルブミン・クレアチニン比(ACR)と推算糸球体濾過量(eGFR)に基づいて病期を分けたモデルを作成した。
DKD病期が早期(eGFR>60mL/分/1.73m2かつACR<30mg/g),中期(eGFR 30~60mL/分/1.73m2またはACR 30~300mg/g),進行期(eGFR<30mL/分/1.73m2またはACR>300mg/g)の場合のRAS介入のESRD遅延効果を評価した。
●結果 プラセボが投与された平均60歳の2型糖尿病患者におけるESRDまでの期間中央値は,早期DKDで21.4年,中期DKDで10.8年,進行期DKDで4.7年であったが,RAS介入によりそれぞれ4.2年,3.6年,1.4年遅延した。
早期RAS介入のベネフィットは若年患者で大きく,平均45歳の2型糖尿病患者におけるRAS介入によるESRDまでの期間の遅延は,早期DKDで5.9年,中期DKDで4.0年,進行期DKDで1.1年であった。
●結論 蛋白尿性DKDの経過における早期RAS介入は,進行期RAS介入よりもESRDまでの期間を遅延させることが示された。