編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Weber MA, Mansfield TA, Cain VA, Iqbal N, Parikh S, Ptaszynska A: Blood pressure and glycaemic effects of dapagliflozin versus placebo in patients with type 2 diabetes on combination antihypertensive therapy: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016; 4: 211-20. [PubMed]

本研究は経口血糖降下薬であるSGLT2阻害薬dapagliflozinの降圧効果を主要評価項目とした最初の臨床試験で,dapagliflozin 10 mgの収縮期血圧の降下作用は,β遮断薬との併用では5.8 mm Hg,カルシウム拮抗薬との併用では5.1mm Hgと,サイアザイド系利尿薬との併用の場合の2.4 mm Hgより大きかったと報告している。また,この降圧効果はRA系阻害薬とカルシウム拮抗薬の併用にhydrochlorothiazide 25 mgを上乗せした時の効果である収縮期血圧6.2 mm Hg,拡張期血圧3.3 mm Hgの血圧降下に近いことを指摘している。
2型糖尿病合併高血圧では第一選択薬はRA系阻害薬であり,これに上乗せする降圧薬はカルシウム拮抗薬あるいは利尿薬とされている。水・ナトリウム利尿作用を有するSGLT2阻害薬では,利尿薬以外の降圧薬との併用効果が期待される。また,最近報告されたEMPA-REG OUTCOME試験におけるempagliflozinの心血管イベント,とりわけ心不全や死亡の抑制効果は水・ナトリウム利尿作用によることが想定されており,本研究成績は高血圧を合併した2型糖尿病の治療薬選択の考え方の参考になる。
しかしながら,SGLT2阻害薬の2型糖尿病における治療学的位置づけもまだ定まっておらず,本研究成績は興味深いが,高血圧を合併した2型糖尿病におけるSGLT2阻害薬の位置づけについては今後さらなる研究が必要である。また,本研究ではdapagliflozin 5 mgが用いられたが,わが国におけるdapagliflozin(フォシーガ)の通常用量は5 mgである。【景山茂】

●目的 コントロール不十分な2型糖尿病合併高血圧患者において,SGLT2阻害薬dapagliflozinの血圧作用および血糖作用をプラセボと比較した。
一次エンドポイントはベースラインから12週後までの座位SBPおよびHbA1cの変化。
●デザイン 無作為,二重盲検,プラセボ対照,複数施設(311施設,16ヵ国),full analysis set,第III相。
●試験期間 登録期間は2010年10月29日~2012年10月4日。
●対象患者 449例:コントロール不十分な2型糖尿病合併高血圧患者。平均年齢はdapagliflozin群56.0歳,プラセボ群57.0歳,男性はそれぞれ52%,58%,体重は88.0 kg,89.9 kg,2型糖尿病罹病期間は7.7年,7.3年,HbA1cは8.1%,8.0%,空腹時血糖値は9.0 mmol/L(162 mg/dL),8.9 mmol/L(160.2 mg/dL),インスリン使用は8.0%,7.1%,高血圧罹病期間は9.4年,9.3年,SBPは151.0 mmHg,151.3 mmHg,DBPは91.2 mmHg,91.4 mmHg。追加の降圧薬の内訳は,サイアザイド系利尿薬が92例, 77例,Ca拮抗薬が60例,61例,β遮断薬が57例,59例。
採用基準:血糖コントロール不十分(HbA1c 7.0~10.5%),血圧コントロール不十分(登録および割付時のSBP 140~165 mmHg,DBP 85~105 mmHg,ランダム化前1週間の24時間自由行動下血圧≧130/80 mmHg)。糖尿病治療は,1種類以上の経口血糖降下薬を安定用量で6週間以上服用(チアゾリジンジオンは12週間以上)あるいはインスリン(単独または一種類の経口血糖降下薬と併用)を安定用量で8週間以上使用。降圧療法は,安定・有効・治療量にてRA系阻害薬(ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体阻害薬)に加えて1種類の降圧薬を4週間以上服用。試験期間中の追加の降圧薬は,サイアザイド系利尿薬,サイアザイド類似の利尿薬,カルシウム拮抗薬,β遮断薬,α遮断薬,あるいは中枢性α作動薬とした。
除外基準:血清クレアチニン≦177μmol/L(metforminを使用しない場合に限り,男性では≧133μmol/L,女性では≧124μmol/L),推算クレアチニン・クリアランス<60mL/分,重篤な肝疾患。
●方法 対象患者を,併用の降圧薬の種類およびインスリン使用の有無により層別化し,dapagliflozin群(225例)(10mg 1日1回,朝投与),プラセボ群(224例)にランダム化し,12週間追跡した。
登録前からの血糖降下薬および降圧薬はすべて同用量にて継続したが,新たな薬剤は不可とした。
●結果 座位SBPは,dapagliflozin群でプラセボ群に比べ有意に低下した(ベースラインからの調整平均変化-11.90 mmHg[95%信頼区間-13.97 to -9.82] vs. -7.62 mmHg[-9.72 to -5.51],プラセボ調整による群間差-4.28 mmHg[-6.54 to -2.02],p=0.0002)。
HbA1cは,dapagliflozin群でプラセボ群にくらべ,有意に低下した(ベースラインからの調整平均変化-0.63%[-0.76 to -0.50] vs. -0.02%[-0.15 to 0.12],プラセボ調整による群間差-0.61%[-0.76 to -0.46],p<0.0001)。
併用した降圧薬の種類によるdapagliflozin群のプラセボ群に対する有効性をpost-hoc解析で検討した。dapagliflozin群における座位SBPのプラセボ群との差は,β遮断薬併用群(-5.76 mmHg,-10.28 to -1.23)およびCa拮抗薬併用群(-5.13 mmHg,-9.47 to -0.79)において,サイアザイド系利尿薬併用群(-2.38 mmHg,-6.16 to 1.40)よりも,大きかった。
有害事象を1回以上経験した患者は44%,42%と両群同程度であり,低血糖症は6%,3%であった。腎機能関連の有害事象(1% vs. <1%)と体液量減少(<1% vs. 0%)はわずかであった。
●結論 dapagliflozin 10mgは血圧およびHbA1cを有意に改善し,忍容性はプラセボと同様であった。血圧低下作用は,すでにβ遮断薬またはCa拮抗薬を投与していた患者で特に顕著であった。dapagliflozinは血圧コントロールのために利尿作用を必要とする2型糖尿病患者に対して有用となる可能性が示唆された。