編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Wanner C, Inzucchi SE, Lachin JM, Fitchett D, von Eynatten M, Mattheus M, Johansen OE, Woerle HJ, Broedl UC, Zinman B; EMPA-REG OUTCOME Investigators : Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016; 375: 323-334. [PubMed]

古くより糸球体の過剰濾過が糖尿病腎症の成因であるとする考え(糸球体過剰濾過説)がある。これまでに,ACE阻害薬やARBなどのRA系阻害薬は糸球体輸出細動脈を拡張して糸球体高血圧を改善することで,糖尿病腎症の進展を抑制することが多くのエビデンスで証明されてきた。一方,SGLT2阻害薬は遠位尿細管へ到達するNa量を増加させ,マクラデンサ(緻密斑)を介したtubuloglomerular feedback機構を改善,すなわち糸球体輸入細動脈を収縮させて糸球体内圧を低下させ,糸球体過剰濾過を正常化させるのではないかと推測されている。
本試験は,多数例の2型糖尿病患者でSGLT2阻害薬がおそらくは過剰濾過を改善して腎ハードアウトカムを減少させることを示した初めての結果であり,その臨床的意義は大きい。empagliflozinの投与中に低下したeGFRは,投与終了後に改善しており,長期治療後でも糸球体血行動態が元に復することが示されたことも意義深い。また,本試験では約80%の患者がRA系阻害薬を使用しており,RA系阻害薬の投与下でもempagliflozinの腎保護作用が明らかである。今後,SGLT2阻害薬が糖尿病腎症の新たな治療手段となることが期待される。【片山茂裕

●目的 心血管イベント高リスクの2型糖尿病患者において,empagliflozinの腎臓に対する長期的作用を検討した。本研究では,EMPA-REG OUTCOMEの事前設定二次アウトカムである,腎細小血管アウトカムを検討。
腎細小血管アウトカムは,腎症の発症/悪化(顕性アルブミン尿への進展[アルブミン・クレアチニン比>300 mg/gCr],血清クレアチニン値の2倍化[eGFR≦45mL/分/1.73m2を伴う],腎代替療法の開始,腎疾患死),アルブミン尿の発症など。
●デザイン 無作為,多施設(42ヵ国,590施設),modified intention-to-treat解析。
●試験期間 治療期間中央値は2.6年,追跡期間中央値は3.1年。
●対象患者 7,020例:心血管疾患があり,推算糸球体濾過量(eGFR)≧30 mL/分/1.73m2の2型糖尿病患者。
●方法 通常治療への追加投与として,対象をempagliflozin 10mg群,empagliflozin群25mg群,プラセボ群にランダム化。いずれも1日2回投与とした。
本論文では,empagliflozin 10mg群と25mg群を統合し,empagliflozin群として,プラセボ群と比較した。
●結果 腎症の発症/悪化が見られたのはempagliflozin群525/4,124例(12.7%),プラセボ群388/2,061例(18.8%)であった(ハザード比[HR] 0.61,95%信頼区間0.53-0.70,p<0.001)。
血清クレアチニン値の2倍化はそれぞれ70/4,645例(1.5%),60/2,323例(2.6%)であり(HR 0.56,0.39-0.79),empagliflozin群で44%のリスク低下が認められた。腎代替療法を導入したのはそれぞれ13/4,687例(0.3%),14/2,333例(0.6%)で(HR 0.45,0.21-0.97),empagliflozin群でリスクが55%低下した。アルブミン尿発症率については,有意な群間差はみられなかった。
ベースラインで腎機能障害を伴った患者(eGFR≦59 mL/分/1.73m2),eGFR≧60 mL/分/1.73m2の患者のいずれにおいても,有害イベントに有意な群間差を認めず,同様なリスクプロファイルであった。
●結論 心血管イベント高リスクの2型糖尿病患者において,通常治療にempagliflozinを追加すると,腎疾患の悪化が抑制され,臨床関連の腎イベント発生率が低下した。