編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Cahn A, Raz I, Mosenzon O, Leibowitz G, Yanuv I, Rozenberg A, Iqbal N, Hirshberg B, Sjostrand M, Stahre C, et al.: Predisposing Factors for Any and Major Hypoglycemia With Saxagliptin Versus Placebo and Overall: Analysis From the SAVOR-TIMI 53 Trial. Diabetes Care. 2016; 39: 1329-37. [PubMed]

DPP-4阻害薬のsaxagliptinを用い心血管疾患の発症を見た,プラセボ対象無作為割り付け試験であるSAVOR-TIMI53のサブ解析の報告である。本試験では,saxagliptinによる心血管疾患の発症予防効果は残念ながら見られなかった。
本報告では,本研究における低血糖の予測因子を検討している。その結果,すべての低血糖,ならびに重症低血糖の予測因子にsaxagliptin使用が含まれていた。また,SU薬使用も低血糖の予測因子であった。
本試験でsaxagliptin使用により心血管疾患の発症予防効果が見られなかった理由として,実薬群で低血糖が増加したことが寄与していた可能性が考えられる。本来,DPP-4阻害薬投与は,低血糖のリスク軽減に寄与する可能性が高い。なぜ,このような結果になったのかを詳細に検討することが(SU薬の併用が寄与したか否かについても),糖尿病治療における心血管疾患の発症予防につながると考えられる。【西村理明

●目的 2型糖尿病患者において,従来治療へのDPP-4阻害薬saxagliptin追加による低血糖リスクを検討した。
●デザイン プラセボ対照無作為化試験のサブ解析。
●試験期間 追跡期間は2.1年(中央値)。
●対象患者 16,492例:心血管疾患(CVD)またはCVDリスク因子を有する2型糖尿病患者。
●方法 SAVOR-TIMI 53では,saxagliptin群,プラセボ群にランダム化。
本解析では,すべての低血糖(血糖値<54mg/dL)または他者の介助を要する重症な低血糖と患者特性および治療群の関連を評価した。
●結果 追跡期間のすべての低血糖イベントは2,739例(16.6%),重症な低血糖は317例(1.9%)であった。
saxagliptin群はプラセボ群に比し,すべての低血糖リスクが高く(17.7 vs 15.6%:ハザード比1.16,95%CI 1.08-1.25,p<0.001),重症な低血糖リスクも高かった(2.1 vs 1.7%:ハザード比1.26,95%CI 1.01-1.58,p=0.038)。
ベースラインのHbA1c≦7.0%の患者において,saxagliptin群はプラセボ群より,すべての低血糖と重症な低血糖のリスクが上昇したが(ハザード比1.50,1.99),ベースラインのHbA1c>7.0%の患者ではリスク上昇を認めなかった(ハザード比1.06,1.05)。
ベースラインのスルホニル尿素(SU)薬使用患者において,saxagliptin群はプラセボ群よりすべての低血糖リスクが上昇したが(ハザード比1.42,1.73),ベースラインのインスリン使用患者ではリスク上昇を認めなかった(ハザード比1.03,1.07)。
多変量解析におけるすべての低血糖の独立した予測因子は,saxagliptin群,糖尿病の罹病期間,最新のHbA1c上昇,顕性アルブミン尿,中等度腎不全,SU薬使用,インスリン使用で,重症な低血糖の独立した予測因子は,saxagliptin群,>75歳,黒人,BMI≦30kg/m2,糖尿病の罹病期間,腎機能低下,微量アルブミン尿,短時間作用型インスリン使用であった。
SU薬のうち,glibenclamideは重症な低血糖リスクを上昇させたが,全体の低血糖リスクは他のSU薬でも上昇していた。
●結論 低血糖リスクの高い2型糖尿病患者を特定することで,より良好な個別化治療を行うことが可能になる。