編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Sörensen BM, Houben AJ, Berendschot TT, Schouten JS, Kroon AA, van der Kallen CJ, Henry RM, Koster A, Sep SJ, Dagnelie PC, Schaper NC, Schram MT, Stehouwer CD. Prediabetes and Type 2 Diabetes Are Associated With Generalized Microvascular Dysfunction: The Maastricht Study. Circulation. 2016; 134: 1339-1352. [PubMed]

糖尿病患者の大血管障害は,大血管の血管内皮細胞の障害や動脈硬化によって惹起され,これらの異常は前糖尿病の段階から認められることはよく知られている。糖尿病網膜症や腎症および神経障害に加え,心不全や脳血管障害,認知機能の低下なども細小血管障害によって引き起こされるとされるが,これらの異常が前糖尿病で認められるかどうかは必ずしも明らかではない。本検討では,細小血管機能を反映する網膜の血管拡張反応と皮膚の充血反応を用いて,この点を明らかにしている。すなわち,空腹時血糖異常+耐糖能異常(前糖尿病)の状態で,細小血管障害が認められた。また,高血糖の指標である空腹時血糖値やHbA1cが高値となるほど,細小血管機能は低下した。
高血糖は血管内皮機能をAGEの生成や酸化ストレスの亢進などを介して障害すると想定される。逆に,血管内皮細胞の障害は標的臓器へのブドウ糖やインスリンの取り込みを低下させ,高血糖の増悪に働き,前糖尿病状態から糖尿病への進展の一つの成因となると考えられる。前糖尿病状態からの介入が必要であろう。【片山茂裕

●目的 前糖尿病および2型糖尿病の患者において,細小血管機能(flicker light誘導による網膜細動脈の拡張反応,熱誘導による皮膚血流値)を評価し,前糖尿病患者ではすでに細小血管機能障害がみられ,2型糖尿病患者ではさらにそれが重症化しているという仮説を検証した。
●デザイン 横断研究。
●試験期間 ベースライン調査は2010年11月~2013年9月。
●対象患者 Maastricht研究に参加した40~75歳のオランダ南部の住民3,451例のうち,網膜細動脈の反応性についての共変量データが得られた2,213例(網膜研究),皮膚血流の反応性についての共変量データが得られた1,595例(皮膚研究)。平均年齢は59.7歳,男性51.1%。
●方法 Maastricht研究のデータを使用した。
WHO基準(2006年)に基づいた一晩絶食後の75g OGTT 2時間値により,対象を正常糖代謝(NGM)(1,269例),空腹時血糖異常+耐糖能異常(前糖尿病)(335例),2型糖尿病(609例)にカテゴリー分けし,flicker light-induced網膜細動脈の拡張(%)および熱誘導皮膚血流の増加(%)を,多変量回帰分析による回帰係数(B)により比較した(年齢,性別,BMI,喫煙,身体活動,収縮期血圧,脂質プロファイル,網膜症により調整)。
さらにHbA1c,空腹時血糖,および食後2時間血糖値が,それぞれ1SD増加するごとのflicker light-induced網膜細動脈の拡張(%)と熱誘導皮膚血流の増加(%)の標準化回帰係数(stB)を検討した(年齢,性別,BMI,トリグリセリド,total-to-HDL-C比,喫煙状況,収縮期血圧,降圧薬・脂質修飾薬の使用,心血管疾患既往,網膜症,eGFR,尿中アルブミン排泄率により調整)。
●結果 網膜細動脈の拡張平均値は,NGM例3.4±2.8%,前糖尿病例3.0±2.7%,2型糖尿病例2.3±2.6%であった。多変量調整解析では,NGM例にくらべ,前糖尿病では細動脈拡張値が低く(B=-0.20,95%信頼区間-0.56 to 0.15),2型糖尿病ではさらに低かった(B=-0.61,-0.97 to -0.25)(p for trend 0.001)。
皮膚血流平均値はNGM例1,235±810%,前糖尿病例1,109±748%,2型糖尿病937±683%であった。多変量調整解析では,NGM例にくらべ,前糖尿病では皮膚血流値が低く(B=-46,-163 to 72),2型糖尿病ではさらに低かった(B=-184,-297 to -71)(p for trend 0.001)。
HbA1c,空腹時血糖がそれぞれ1SD増加するごとに,多変量調整後の網膜細動脈の平均拡張(%)(HbA1c:stB=-0.10,-0.15 to -0.05,p<0.001,空腹時血糖:stB=-0.09,-0.15 to -0.04,p<0.001),皮膚血流値(%)(stB=-0.13,-0.19 to -0.07,p<0.001,stB=-0.10,-0.15 to -0.04,p=0.002)が低下した。食後2時間血糖は,皮膚血流のみ関連した(stB=-0.09,-0.15 to -0.02,p=0.007)。
●結論 前糖尿病,2型糖尿病,および血糖高値は,網膜および皮膚の細小血管機能障害と独立した関連を認めた。本研究結果は,細小血管機能障害は2型糖尿病の前段階より発症するという仮説を支持するものであり,またそれによって,2型糖尿病関連の心血管疾患およびその他の合併症がもたらされ,さらには認知障害,心不全などの最小血管疾患の引き金となる可能性が示唆された。