編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2017年9月現在,1114報収載!
全トライアルリスト
[HOMEに戻る]
Hamada S, Gulliford MC: Mortality in Individuals Aged 80 and Older with Type 2 Diabetes Mellitus in Relation to Glycosylated Hemoglobin, Blood Pressure, and Total Cholesterol. J Am Geriatr Soc. 2016;64:1425-31. [PubMed]

社会の高齢化が進むなか,2型糖尿病患者も高齢化している。英国でも2型糖尿病患者の3分の2は60歳以上であり,80歳以上が13%に達している。併存疾患が多く,身体能力や認知機能が低下しており,平均余命が少なくなった高齢者での糖尿病治療は若年者とは当然異なるはずである。折しも2016年の日本糖尿病学会年次学術集会で,高齢者の血糖の管理目標が示されたばかりであり,今回の80歳以上での検討は貴重な成績であり,わが国の糖尿病治療にも大きな参考となる。
今回の検討は,HbA1c,血圧,および総コレステロールの低値は,全死亡リスクを低下させるとする仮説の基に行われたが,結果は逆に全死亡のリスクが増加していた。高齢者や超高齢者の解析では,まず,全身状態が悪い患者層でHbA1c,血圧,および総コレステロールが低値であり,このことが全死亡のリスクを増加させるとする「逆の因果関係(reverse causality)」を考慮する必要があるが,観察開始6ヵ月以内の死亡者を除いて解析しても同様の結果が得られており,逆の因果関係だけではないといえる。今回の対象者の約80%は血糖,血圧,および総コレステロールの治療薬を処方されており,過剰な治療の可能性も除外はできないが,超高齢者において治療薬を開始するかあるいは中止するかについて,さらなる検討が必要である。【片山茂裕

●目的 超高齢の2型糖尿病患者において,HbA1c低値,血圧低値,および総コレステロール低値は,全死亡リスクの低下と関連するか検討した。
●デザイン コホート(英国)。
●試験期間 追跡期間中央値は2年(2013年12月31日まで)。ベースラインデータは2011年1月1日~12月31日で,2012年1月1日に開始。
●対象患者 25,966例:80歳以上の2型糖尿病(HbA1c≧6.5%)患者。女性は53%,80~89歳は90%,糖尿病罹病期間≧10年は48%,冠動脈性心疾患は35%,脳卒中は11%の患者に認められた。糖尿病治療薬は84%,降圧薬は86%(RA系阻害薬は70%),脂質低下薬(おもにスタチン)は77%,抗血小板薬は55%,抗凝固薬は12%の患者に処方されていた。
●方法 英国のClinical Practice research Datalink(CPRD)のデータを使用した。
全死亡とベースライン時のHbA1c値,血圧値,および総コレステロール値との関連を評価するため,Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を求めた(性別,年齢,糖尿病罹病期間,生活習慣の変数,HbA1c,血圧,総コレステロール,併存疾患,糖尿病治療薬および心臓血管薬,および対象者が受けている一般診療により調整)。
●結果 追跡期間における全死亡は4,490例(17.3%)であった。
HbA1c値と全死亡との間に,U字型の関連が認められた。全死亡リスクは,HbA1c低値(<6.0%)および高値(≧8.5%)の患者で,対照値(8.0~8.4%)の患者と同程度であり,もっともリスクが低いのはHbA1c 7.0~7.4%であった(80.9/1000人・年,調整HR 0.80,95%信頼区間0.70-0.91,p=0.001)。
血圧値と全死亡との間には,逆J字型の関連が認められた。全死亡リスクは,対照値(145/85~<150/90 mmHg)の患者にくらべ,血圧最低値(<130/70 mmHg)の患者でもっとも高く(151.7/1000人・年,調整HR 1.52,1.34-1.72,p<0.001),二番目に低値(130/70~<135/75 mmHg)の患者で次に高かった(112.3/1000人・年,調整HR 1.30,1.14-1.48,p<0.001)。
総コレステロール値が高いほど全死亡リスクが低い傾向がみられた。全死亡リスクは,対照値(4.5~4.9mmol/L)の患者にくらべ,総コレステロール値がもっとも低い患者(<3.0mmol/L)でもっとも高かった(138.7/1000人・年,調整HR 1.42,1.24-1.64,p<0.001)。感度解析の結果,総コレステロール値と全死亡との関連には,性別(相互作用のp=0.006)および脂質低下薬の処方(相互作用のp=0.001)によるバラツキが認められた。
●結論 超高齢の2型糖尿病患者において,HbA1c低値,血圧低値,および総コレステロール低値は全死亡リスクの増加と関連する可能性が示唆された。