編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Stewart ZA, Wilinska ME, Hartnell S, Temple RC, Rayman G, Stanley KP, Simmons D, Law GR, Scott EM, Hovorka R, Murphy HR. Closed-Loop Insulin Delivery during Pregnancy in Women with Type 1 Diabetes. N Engl J Med. 2016; 375: 644-54. [PubMed]

1型糖尿病の妊婦16例において,センサー付きポンプ療法と,クローズドループ療法による血糖コントロールをクロスオーバーにより比較した研究である。クローズドループ療法を24時間行うことはできず夜間のみ行ったため,当然と言えば当然だが,夜間の血糖パラーメータはすべて,クローズドループ療法下において改善していた。
しかし1型糖尿病の妊婦において,クローズドループ療法の有用性を示した論文は極めて少ないため,本研究の結果はトップジャーナルに掲載されたと思われる。
24時間にわたりクローズドループ療法を行えるほど機器の精度が向上し,なおかつ小型化が実現した暁には,母体,胎児両者のアウトカムが改善するか否かを検討する研究が行われることを期待したい。【西村理明

●目的 1型糖尿病の妊婦において,クローズドループインスリン注入システム(クローズドループ療法)とセンサー付きポンプ療法の有効性と安全性を比較した。また,妊婦における24時間クローズドループ療法の実現可能性を検討した。
一次エンドポイントは,夜間血糖値が目標範囲内(63~140 mg/dL)であった時間の割合。
●デザイン 無作為,オープン,多施設(英国NHSの3地域),クロスオーバー,実現可能性評価試験,intention-to-treat解析。
●試験期間 クロスオーバー試験のrun-in期間は2~4週,治療期間は各4週,wash-out期間は2週。実行可能性評価試験(継続期間)は中央値11.6週(最大14.6週)。
●対象患者 16例:1型糖尿病の妊婦。平均年齢34.1歳,BMI 29.7 kg/m2,HbA1c 6.8%,糖尿病罹病期間23.6年,インスリンポンプ療法歴63%,持続的血糖モニタリング使用歴13%,1日の総インスリン量52.8 U。
登録基準:18~45歳,糖尿病罹病期間12ヵ月以上,妊娠8~24週,HbA1c 6.5~10.0%,強化インスリン療法中の者。
除外基準:生殖補助医療による妊娠,血糖コントロールに影響する可能性のある併用療法を実施中,多胎妊娠,臨床的に重篤な腎症/神経障害/増殖性網膜症の存在。
●方法 デバイスのトレーニングおよびインスリン用量最適化のためのrun-in後,夜間クローズドループ療法群(食後に開始し,翌日の朝食前に中止),センサー付きポンプ療法群(対照群)にランダム化した。2週間のwashout後,クロスオーバーを実施した。
クロスオーバー試験終了後,出産前の入院,陣痛および分娩を含む妊娠期間における昼夜(24時間)クローズドループ療法の実行可能性を検討した(継続期間)。全例に対してセンサー付きポンプ療法または昼夜クローズドループ療法のどちらかを選択させ,分娩まで実施した(昼夜クローズドループ療法の実施は14例)。
全例に対し,血糖自己測定(SMBG)を1日7回以上行うように推奨(目標血糖値:食前63~99 mg/dL,食後1時間<140mg/dL)。血糖値は持続的血糖モニタリングの記録により評価した。
クローズドループ療法中は,持続的血糖モニタリングにより至適インスリン用量を決定。インスリンは12分ごとにインスリンポンプにより注入し,食前15~30分に行うボーラス投与は手動とした。
●結果 一次エンドポイントである夜間血糖値が目標範囲内であった時間の割合は,夜間クローズドループ療法群のほうが対照群にくらべて有意に多かった(74.7% vs. 59.5%,絶対値差15.2%ポイント,95%信頼区間6.1-24.2,p=0.002)。
クローズドループ療法群のほうが対照群にくらべ,夜間の平均血糖値(119 mg/dL vs. 133 mg/dL,p=0.009),24時間平均血糖値(128 mg/dL vs. 137 mg/dL,p<0.001)ともに有意に低かった。
夜間血糖値が目標範囲を下回った(<63 mg/dL)時間の割合(1.3% vs. 1.9%,p=0.28),1日の総インスリン投与量(59.8 U/日 vs. 58.2 U/日,p=0.67)ともに群間差はみられなかった
継続期間に昼夜クローズドループ療法を実施した14例では,血糖値が目標範囲内であった時間の割合は68.7%,平均血糖値は126 mg/dLであった。
有害イベントの発生に有意な群間差はみられず,また第三者による介助を必要とする重症低血糖症は全試験期間を通してみられなかった。
●結論 1型糖尿病の妊婦において,夜間クローズドループ療法はセンサー付きポンプ療法にくらべ,血糖コントロールが良好であることが示された。昼夜クローズドループ療法を継続した妊婦では,出産前の入院,陣痛,分娩までの期間中,高い割合で血糖コントロールが維持された。