編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Carlsson LM, Sjöholm K, Karlsson C, Jacobson P, Andersson-Assarsson JC, Svensson PA, Larsson I, Hjorth S, Neovius M, Taube M, Carlsson B, Peltonen M. Long-term incidence of microvascular disease after bariatric surgery or usual care in patients with obesity, stratified by baseline glycaemic status: a post-hoc analysis of participants from the Swedish Obese Subjects study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017; 5: 271-279. [PubMed]

抄録にはないが,満者に減量手術を施行した場合,耐糖能に関わらず細小血管障害(主に網膜症と糖腎症)の発症リスクが約40%減少することが示された。10年間での細小血管障害の発症を1例減らすためのNNTは22であり,このベネフィットは観察開始時に糖尿病前症であった例で最も大きかった。また,15年後に手術時に糖尿病であった129例のうち39例(30%)で空腹時血糖値が109.8mg/dL以下になり,寛解したと判断された。これらの寛解した患者では,寛解しなかった例に比べ細小血管障害の発症のHRが0.21に有意に低下していた。逆に,糖尿病前症から糖尿病の発症については,対照群の55%に比べて手術群では16%と著減していた。そして,肥満外科手術群と対照群の比較では,糖尿病発症例での細小血管障害の発症のHRは0.27であり,糖尿病を発症しなかった例でのHRは0.22であった。
このように,本SOS試験のpost-hoc解析から,耐糖能に関わらない減量手術の糖尿病細小血管障害の発症防止効果が明確に示され,その効果は糖尿病前症で大きかった。特に糖尿病を発症しなかった例でのベネフィットは最も大であり,横断的検討では差が見いだせないようなわずかな血糖値の上昇が血管を障害することが明らかといえる。このことより,糖尿病前症は糖尿病と診断されるまで待つことなく,より早期から積極的に治療する必要があるといえる。【片山茂裕

●目的 肥満患者において,肥満外科手術による細小血管合併症の抑制効果を,ベースライン時の血糖値レベル別に検討した。
●デザイン SOS試験(非ランダム化比較試験)のpost hoc解析,intention-to-treat解析。
●試験期間 SOSの登録期間は1987年9月1日~2001年1月31日。
追跡期間中央値は19年(四分位範囲16~21年,最長26年)。
●対象患者 4,032例:肥満患者。
SOS試験の採用基準:37~60歳,BMI≧34 kg/m2(男性),≧38 kg/m2(女性)。
●方法 SOS試験では,手術を選択した患者群を肥満外科手術群(2,010例:胃バイパス術265例,バンディング術376例,垂直帯胃形成術 1,369例)とし,18の変数によりマッチングさせた患者を対照群(2,031例:肥満・糖尿病に対する通常のケア)として比較。
本post-hoc解析では,対象をベースラインの血糖値により4つのカテゴリーに分け(正常血糖[空腹時血糖<90 mg/dL:2,383例,糖尿病前症[90~108 mg/dL:591例],検査時に発見された2型糖尿病[≧109.8 mg/dL:246例],既知の2型糖尿病>109.8 mg/dL:357例],肥満外科手術と細小血管合併症(網膜症,糖尿病性腎症,神経障害),細小血管合併症との関連を検討するため,ハザード比(HR)を算出し,年齢,性別,BMI,血圧,尿中アルブミン排泄量,喫煙状況による調整も行った。
●結果 平均観察期間19年で,細小血管合併症は対照群(357例)に比べ肥満外科手術群(224例)で有意に少なかった(ハザード比[HR] 0.56,95%信頼区間0.48-0.66,p<0.0001)。
ベースライン時の血糖値と手術による細小血管合併症抑制効果との間に,有意な関連が認められた(p for interaction=0.0003)。細小血管合併症の調整HRがもっとも低かったのは糖尿病前症(HR 0.19,0.11-0.32)で,次が検査時に発見された2型糖尿病(HR 0.37,0.22-0.61),既知の糖尿病(HR 0.53,0.39-0.72),正常血糖(HR 0.59,0.45-0.78)の順であった。
糖尿病前症の患者では,追跡期間の糖尿病への進展の有無に関わらず,肥満外科手術と細小血管イベント減少との有意な関連が認められた。
●結論 肥満外科手術は,すべての血糖カテゴリーにおいて,細小血管合併症のリスク減少と関連し,もっともリスクが減少したのは糖尿病前症の患者であった。