編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2017年8月現在,1106報収載!
全トライアルリスト
[HOMEに戻る]
Kashiwagi A, Takahashi H, Ishikawa H, Yoshida S, Kazuta K, Utsuno A, Ueyama E. A randomized, double-blind, placebo-controlled study on long-term efficacy and safety of ipragliflozin treatment in patients with type 2 diabetes mellitus and renal impairment: results of the long-term ASP1941 safety evaluation in patients with type 2 diabetes with renal impairment (LANTERN) study. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 152-60. [PubMed]

SGLT2阻害薬は,近位尿細管に存在するSGLT2受容体を阻害して,ブドウ糖の再吸収を阻害し血糖を低下させる。したがって,腎機能障害が中等度以上になるとその薬効が十分に得られなくなる。添付文書にも,「効能・効果に関連する使用上の注意」の項に,「(2)重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の効果が期待できないため,投与しないこと。(3)中等度の腎機能障害のある患者では本剤の効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断すること」と記されている。
本試験は,腎機能障害が軽度~中等度の2型糖尿病患者において,ipragliflozinの血糖降下作用を検討したわが国での検討である。プラセボ群にくらべ腎機能障害が軽度の患者ではipragliflozin投与群で血糖コントロールが有意に改善したが,腎機能障害が中等度の患者ではipragliflozin投与群でプラセボ群にくらべ体重がそれなりに減少しているものの血糖コントロールは改善しなかった。
有害事象の発生率は腎機能障害が中等度の患者でもipragliflozin投与群で増加せず,ipragliflozinの安全性は示されたといえる。ただ,最近のEMPA-REG OUTCOME試験の腎臓に関する解析では,むしろ腎機能障害が中等度までの患者でempagliflozinを投与することにより腎複合エンドポイントが改善することが報告されている。どのような糖尿病患者にSGLT2阻害薬を使えば糖尿病腎症の改善や発症予防が認められるのか,今後わが国でもそのような観点でのトライアルが待たれる。【片山茂裕

●目的 腎機能障害を伴う2型糖尿病患者において,ipragliflozinの有効性と安全性を検討した。
有効性のエンドポイントはベースラインからのHbA1c,空腹時血糖,空腹時血清インスリン,レプチン,アディポネクチン,体重,腹囲の変化。
●デザイン 無作為,二重盲検(period 1),オープンラベル(period 2),プラセボ対照,多施設(67施設,日本),last observation carried forward法。
●試験期間 試験期間は2011年1月~2012年11月。治療期間は24週(period 1)+28週(period 2),追跡期間は4週間。
●対象患者 165例:2型糖尿病患者。平均年齢はipragliflozin群63.9歳,プラセボ群65.7歳,男性はそれぞれ78.0%,78.3%,HbA1cは7.53%,7.55%,糖尿病罹病期間は114.3ヵ月,113.0ヵ月。
採用基準:20~74歳,2型糖尿病罹病期間≧12週。食事/運動療法のみ実施中,または一定用量のα-グルコシダーゼ阻害薬,SU薬,またはピオグリタゾンによる治療中の者。治療にもかかわらず,血糖コントロール不良(HbA1c 6.9~8.9%,visit 1から2までのHbA1cの変化≦1.0%,またはSU薬投与下で空腹時血糖≧126mg/dL)の者。BMI 20.0~45.0 kg/m2,軽度(eGFR 60~<90mL/分/1.73m2)または中等度(eGFR 30~<60mL/分/1.73m2)の腎機能障害。
●方法 2週間のプラセボrun-in後,対象患者を腎機能障害の重症度(軽度,中等度)で層別化し,ipragliflozin群(119例,50mg錠を朝食前1日1回),プラセボ群(46例)に2:1にランダム化。24週間実施(period 1)後,治療継続に同意し,安全性に問題がない対象を,オープンラベルにて28週間治療継続した(period 2)。α-グルコシダーゼ阻害薬,SU薬,ピオグリタゾン以外の血糖降下薬は禁止とした。
24週(period 1終了)の時点で,治療開始時にHbA1c≧7.4%の例が20週後もHbA1c≧7.4%であった場合,開始時にHbA1c<7.4%の例が20週後もHbA1c≧6.9%であった場合,および患者が増量を希望した場合は,period 2での用量を100mgに増量可とした。
●結果 ベースラインから24週後のHbA1c値は,ipragliflozin群のほうがプラセボ群にくらべ,有意に大きく低下した(-0.42% vs. -0.17%,p=0.004)。24週後にHbA1c<7.0%となった患者の割合も,ipragliflozin群のほうが多かった(46.6% vs. 28.3%)。
空腹時血糖値はipragliflozin群でプラセボ群にくらべて有意に大きく低下し,体重減少度もipragliflozin群のほうが有意に大きかった(-1.87 kg vs. -0.66 kg,p<0.001)。レプチンの変化に有意な群間差を認めたが,インスリンおよびアディポネクチンの変化は群間差を認めなかった。
腎機能障害が軽度の患者では,ipragliflozin群でプラセボ群にくらべ,HbA1c(-0.56% vs. -0.26%,p<0.001)および空腹時血糖(-16.7 mg/dL vs. -1.8 mg/dL,p<0.001)が有意に大きく低下したが,腎機能障害が中等度の患者では群間差を認めなかった。体重については,腎機能障害の程度にかかわらず,ipragliflozin群のほうが有意に大きく低下した。血糖コントロールは,延長28週(period 2)でも維持された。
治療関連の有害事象発生率は,腎機能障害が軽度の患者(80.3% vs. 78.3%,p=1.000),中等度の患者(82.8% vs. 69.6%,p=0.230)ともに有意な群間差を認めなかった。
●結論 腎機能障害が軽度の2型糖尿病患者において,ipragliflozinは血糖コントロールを有意に改善したが,腎機能障害が中等度の患者では改善しなかった。ipragliflozinは腎機能障害が軽度の患者に対しては有効な治療選択肢であるが,腎機能障害が中等度の患者に対しては有効ではない。