編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2017年10月現在,1124報収載!
全トライアルリスト
[HOMEに戻る]
Saito Y, Okada S, Ogawa H, Soejima H, Sakuma M, Nakayama M, Doi N, Jinnouchi H, Waki M, Masuda I, et al.; JPAD Trial Investigators: Low-Dose Aspirin for Primary Prevention of Cardiovascular Events in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus: 10-Year Follow-Up of a Randomized Controlled Trial. Circulation. 2017; 135: 659-670. [PubMed]

血小板の機能異常や凝集能の亢進が,2型糖尿病での心血管イベントリスクを高める原因となっている。健康な成人,高血圧患者,心筋梗塞既往例での心血管イベント発症リスクを軽減したとの臨床成績から,これまで2型糖尿病患者への低用量aspirin投与が推奨されてきた。今回の成績から,心血管イベントを発症していない日本人2型糖尿病患者へのaspirin投与は,むしろ推奨されないことが判明したといえよう。【河盛隆造

●目的 日本人2型糖尿病患者を対象に,低用量aspirinの心血管疾患一次予防における長期の有効性および安全性を検討した。JPADの延長試験。
一次エンドポイントは心血管疾患(突然死+冠動脈・脳血管・大動脈疾患による死亡+非致死性急性心筋梗塞+不安定狭心症+新規の労作性狭心症+非致死性虚血性脳梗塞・脳出血+一過性虚血性発作+非致死性大動脈疾患・末梢血管疾患)。
●デザイン 無作為,オープン,多施設(日本163施設)。
●試験期間 登録期間は2002年12月~2005年5月。追跡期間は中央値10.3年(2015年7月まで)。
●対象患者 JPADに参加した30~85歳の循環器疾患のない日本人2型糖尿病患者2,539例。平均年齢aspiring群65/非aspirin群64歳,男性57/54%,BMI 24/24 kg/m2,糖尿病罹病期間7.6/6.7年,収縮期血圧136/134 mmHg,高血圧59/57%,脂質異常症55/52%,喫煙23/19%,HbA1c 7.5/7.4%,推算糸球体濾過量(eGFR)73.3/74.8mL/分/1.73m2
除外基準:ST低下・ST上昇・異常Q派などの心電図の虚血性変化,冠動脈造影により確認された冠動脈疾患の既往,脳梗塞・脳出血・くも膜下出血・一過性脳虚血発作などの脳血管疾患の既往,治療を要する末梢動脈アテローム性動脈硬化症,重度の胃・十二指腸潰瘍,重度の肝障害,重度の腎障害,aspirinアレルギー。
●方法 対象患者をaspirin群(1,262例)または非aspirin群(1,277例)に1:1にランダム化。
多変量Cox比例ハザードモデルにより一次エンドポイントの発症率を解析した。
出血イベントおよび統計的感度の解析にはintention-to-treat解析が行われた。
●結果 一次エンドポイント発症時または追跡期間終了時まで追跡されたのは1,621例(64%)であった。追跡期間中にaspirin群の270例が服薬を中止し,非aspirin群の109例がaspirinの服薬を開始したため,これらの379例(15%)はPPT解析からは除外されたがITT解析には含まれた。
PPTコホートでは,低用量aspirinは心血管イベントを減少させなかった(ハザード比1.14,95%CI 0.91-1.42)。年齢,性別,ベースライン時のHbA1c,eGFR,喫煙歴,高血圧,脂質異常症を調整した後の多変量Cox比例ハザードモデルでも同様の結果であり(ハザード比1.04,95%CI 0.83-1.30),各因子で層別化したサブグループ解析では有効性の不均一性は認められなかった(相互作用のp>0.05)。ITTコホートでの感度解析の結果も同様であった(ハザード比1.01,95%CI 0.82-1.25)。
消化管出血はaspirin群25例(2%),非aspirin群12例(0.9%)であり,脳出血の発症率は両群で差はなかった。
●結論 一次予防の2型糖尿病患者において,低用量aspirinは心血管イベントのリスクに影響しないが,消化管出血のリスクを増大させた。