編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Seferovic JP, Claggett B, Seidelmann SB, Seely EW, Packer M, Zile MR, Rouleau JL, Swedberg K, Lefkowitz M, Shi VC, Desai AS, McMurray JJV, Solomon SD. Effect of sacubitril/valsartan versus enalapril on glycaemic control in patients with heart failure and diabetes: a post-hoc analysis from the PARADIGM-HF trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017; 5: 333-340. [PubMed]

心不全患者の35~40%に糖尿病が合併していることが知られている。そして,糖尿病は心不全の悪化を来す重要なリスクである。オリジナルのPARADIGM-HF[PubMed]では,駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者において,アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)であるsacubitril/valsartanがACE阻害薬enalaprilに比べ,心血管死・入院を要する心不全の複合一次エンドポイントのハザード比(HR)を0.80に,心血管死のHRを0.80に,心不全による入院のHRを0.79に有意に低下させた。本試験では糖尿病の新規発症数が極めて低かったため,糖尿病の新規発症率の低下に対するARNIの効果は検出できなかった。
本報告は糖尿病患者におけるサブ解析であり,ARNI群ではACE阻害薬群に比べ,3年間にわたりHbA1cが有意に低値で推移し,インスリンやOADの新規開始率も有意に低かった。動物実験ではARNIがインスリン感受性を改善するとの報告があるが,ヒトでのインスリン感受性改善作用を示唆する初めての報告といえるだろう。
その機序としては,ネプリライシンを阻害することにより,bradykininやangiotensinⅠ,angiotensin II,GLP-1,natriuretic peptidesなどの分解も阻害され,これら生理活性ペプチドの作用が長時間にわたり維持されることが示唆されている。今後の展開が期待される。【片山茂裕

●目的 駆出率の低下した心不全(HFrEF)を有する糖尿病患者において,sacubitril/valsartanとenalaprilのHbA1c低下作用,インスリンまたは経口糖尿病治療薬(OAD)開始までの期間を比較した。
●デザイン 無作為化比較試験の事後解析。PARADIGM-HFは無作為,二重盲検,多施設。
●試験期間 観察期間は3年。
●対象患者 3,778例:PARADIGM-HFに参加した左室駆出率≦40%のHFrEF患者8,399例のうち,糖尿病を有するまたはHbA1c≧6.5%の患者。2型糖尿病98%。
●方法 PARADIGM-HFでは,sacubitril 97mg/valsartan 103mg群またはenalapril 10mg群にランダム化して1日2回投与。
本解析では,HbA1cの変化,OADまたはインスリン開始までの期間を評価。
●結果 sacubitril/valsartan群とenalapril群で,スクリーニング時のHbA1cに有意差はなかったが,1年目のHbA1cはsacubitril/valsartan群で0.26±1.25%低下,enalapril群で0.16±1.40%低下した(群間差0.13%,95%CI 0.05-0.22,p=0.0023)。3年間のHbA1c低下はsacubitril/valsartan群のほうが有意に大きかった(群間差0.14%,95%CI 0.06-0.23,p=0.0055)。
ランダム化時にインスリン投与歴のなかった糖尿病患者において,sacubitril/valsartan群はenalapril群に比し,新規インスリン使用が29%少なく(114例[7%] vs. 153例[10%];ハザード比0.71,95%CI 0.56-0.90,p=0.0052),新規OAD開始も少なかった(ハザード比0.77,95%CI 0.58-1.02,p=0.073)。
●結論 HFrEFを有する糖尿病患者において,sacubitril/valsartan群はenalapril群に比し,長期のHbA1c低下度が大きかった。