編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2017年12月現在,1134報収載!
全トライアルリスト
[HOMEに戻る]
Cherney DZI, Zinman B, Inzucchi SE, Koitka-Weber A, Mattheus M, von Eynatten M, Wanner C. Effects of empagliflozin on the urinary albumin-to-creatinine ratio in patients with type 2 diabetes and established cardiovascular disease: an exploratory analysis from the EMPA-REG OUTCOME randomised, placebo-controlled trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017; 5: 610-21. [PubMed]

EMPA-REG OUTCOME trialの腎臓に関する全体での解析はすでに報告されている。empagliflozin群ではプラセボ群に比べて,糖尿病腎症の新規発症や悪化のHRが0.61に,事後に決定された腎複合エンドポイント(血清クレアチニンの倍化,腎代替療法の開始,腎死)のHRが0.54に有意に低下した。
今回の事後解析では,試験開始時の尿中アルブミン-クレアチニン比(UACR)で正常アルブミン尿,微量アルブミン尿,顕性アルブミン尿の3群に分けて解析している。開始時のアルブミン尿の多寡にかかわらず,empagliflozinによるアルブミン尿の減少効果が,12週の投与開始直後から164週にわたって明らかであった。また,微量アルブミン尿から正常アルブミン尿への改善と顕性アルブミン尿から微量アルブミン尿または正常アルブミン尿への改善の頻度も高かった。各群でのeGFRの推移については抄録中に触れられていないが,empagliflozin投与後に低下するものの,それ以降は横ばいで推移し,プラセボ群で経時的に徐々に低下,約1年後に交叉して,試験終了時には3群ともempagliflozin群のほうがプラセボ群より高値を保っていた。
empagliflozin群の腎保護作用の詳細は明らかではないが,SGLT2を阻害することにより近位尿細管においてブドウ糖の再吸収が阻害されるばかりでなくNaの再吸収も阻害するので,遠位尿細管に到達するNaイオン濃度が増加することで緻密斑(macula densa)を通過するNaClが増加し,このことがATP分解とadenosine monophosphateおよびadenosineの産生につながる。adenosineはadenosineの1型受容体を介して輸入細動脈を収縮させ,糸球体内圧を低下させ,糸球体高血圧が改善し,GFRが低下するという。すなわち,empagliflozinは,高血糖状態で障害されていた尿細管糸球体フィードバック(TG Feedback)を改善する。
今回の検討は,SGLT2阻害薬が心血管疾患を減少させるだけでなく,あらゆる病期で腎保護作用を示すことを示しており,RA系阻害薬などの現在の標準治療に加えてSGLT2阻害薬の臨床的意義に期待を膨らませるものである。【片山茂裕

●目的 心血管リスクの高い2型糖尿病患者において,アルブミン尿に対するempagliflozinの短期的および長期的効果をベースラインのアルブミン尿レベル別に検討した。
●デザイン 無作為化試験の事後探索的解析,多施設(42ヵ国,590施設)。
●試験期間 登録期間は2010年9月1日~2013年4月22日。治療期間は2.6年(中央値)。観察期間は3.1年(中央値)。
●対象患者 EMPA-REG OUTCOMEでベースラインの尿中アルブミン-クレアチニン比(UACR)データが得られた2型糖尿病患者6,953例。
登録基準:≧18歳,BMI≦45kg/m2,推算糸球体濾過量≧30mL/分/1.73m2,心血管疾患, HbA1c 7.0~9.0%(未治療下)または7.0~10.0%(12週以上の血糖降下療法下)。
●方法 EMPA-REG OUTCOMEでは,empagliflozin 10mg群,25mg群,プラセボ群に二重盲検で1:1:1にランダム化し,標準治療に追加して1日1回経口投与した。
本解析では,両empagliflozin群のUACRデータを統合。ベースラインの正常アルブミン尿(UACR<30mg/g:empagliflozin群2,789例,プラセボ群1,382例),微量アルブミン尿(UACR≧30~≦300mg/g:empagliflozin群1,338例,プラセボ群675例),顕性アルブミン尿(UACR>300mg/g:empagliflozin群509例,プラセボ群260例)に分類。反復測定混合モデルを用いてUACRの変化を解析した。
●結果 12週後のempagliflozin群におけるUACR変化のプラセボ調整幾何平均比は,正常アルブミン尿例-7%(95%CI:-12 to -2,p=0.013),微量アルブミン尿例-25%(-31 to -19,p<0.0001),顕性アルブミン尿例-32%(-41 to -23,p<0.0001)であった。164週後のUACR低下度も,アルブミン尿レベルにかかわらずempagliflozin群でプラセボ群より有意に大きかった。
治療終了後34~35日目のempagliflozin群におけるUACR変化のプラセボ調整平均比は,微量アルブミン尿例で-22%(-32 to -11,p=0.0003),顕性アルブミン尿例で-29%(-44 to -10,p=0.0048)と有意差を認めたが,正常アルブミン尿例では1%(-8 to 10,p=0.8911)とプラセボ群と有意差を認めなかった。
empagliflozin群では,微量アルブミン尿から正常アルブミン尿への改善(ハザード比[HR]1.43,95%CI:1.22 to 1.67)と顕性アルブミン尿から微量アルブミン尿または正常アルブミン尿への改善(HR 1.82,1.40 to 2.37)が多く(いずれもp<0.001),正常アルブミン尿から微量アルブミン尿または顕性アルブミン尿への悪化が少なかった(HR 0.84,p=0.0077)。
有害事象,重篤な有害事象,投与中止に至った有害事象はベースラインのUACR状況の悪化により増加したが,empagliflozin群とプラセボ群で同等であった。生殖器感染症は,UACR状況にかかわらず,プラセボ群よりもempagliflozin群で多かった。
●結論 2型糖尿病患者において,ベースラインのUACRにかかわらずempagliflozinは短期的および長期的にアルブミン尿を改善した。